下田(1985)による『粘土鉱物研究法』(47-117p)から


第4章 X線分析
4.1 X線ディフラクトメータ
4.2 測定試料の準備

 定方位試料
  1)沈降定方位法
  2)強制的に定方位させる方法
 不定方位試料
4.3 試料の測定
 粘土鉱物種の同定を行なう場合の測定
 粘土鉱物の各種処理による測定
  1)有機および無機溶液処理によるd(001)回折線の変化
   ★エチレングリコール(C2H6O2)、グリセロール(グリセリン、C3H5(OH)3 )、硝酸アンモン(硝酸アンモニウム、NH4NO3)、アルカリおよびアルカリ土類イオンを含んだ溶液、水、など
  2)加熱処理によるd(001)回折線の変化
   ★700℃程度までのさまざまな温度(高温では通常のスライドグラスの代わりに石英ガラス板が必要)
4.4 回折X線の位置と強度の精密測定
 回折線の位置の測定
 回折線の強度の測定
 フーリエ合成とフーリエ変換
 定量分析
 粘土鉱物の化学組成の決定
4.5 粘土鉱物のX線回折分析による同定法
4.6 主な粘土鉱物のX線回折図形の特徴

 1)カオリン−蛇紋石鉱物
 2)パイロフィライト−滑石鉱物
 3)雲母鉱物
 4)緑泥石鉱物
 5)ひる石鉱物
 6)スメクタイト
 7)混合層鉱物
 8)その他の粘土鉱物
引用文献

表4.4 X線分析による粘土鉱物の識別表(一部加筆。リンクはフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
d(001)
エチレングリコール処理 加熱処理 NH4NO3処理

d(060)
(Å)
Dioctahedral型
(2八面体型)
d(060)
(Å)
Trioctahedral型
(3八面体型)
7 注1) 注1) 注1)   1:1型 カオリン−蛇紋石鉱物 1.49 カオリナイト*
ハロイサイト**
1.53
1.60
クリソタイル
アンチゴライト
グリーナライト
9.3       2:1型 パイロフィライト−滑石鉱物 1.49 パイロフィライト 1.53 滑石
10 注2) 注2)   2:1型 雲母鉱物 1.49〜1.50

白雲母***
ソーダ雲母***
真珠雲母***
1.53 黒雲母***
金雲母***
Trioctahedralイライト
1.51 海緑石 注2)
14.2 注3) 注3)   2:1:1型 緑泥石 1.50 ドンバサイト
須藤石
1.53〜1.56 アメサイト
ペンニナイト
リピドライト
シャモサイト
14.3〜14.8   10Åに収縮 10Åに収縮 2:1型 ひる石鉱物 1.50 dioctahedralバーミキュライト 1.53 バーミキュライト
15 17Åに膨潤 9.5Åに収縮 12.5Åに収縮 2:1型 スメクタイト鉱物 1.49〜1.50 モンモリロナイト
バイデライト
1.52〜1.53 サポナイト
ヘクトライト
スチーブンサイト
1.52 ノントロナイト
24.5〜25.5 26〜27Åに膨潤 19.5Åに収縮 変化あり 2つの2:1型 規則型混合層鉱物 1.50 レクトライト
アレバルダイト
1.54 黒雲母とバーミキュライトの規則混合層鉱物
29〜30 30〜32Åに膨潤 23.5〜24Åに収縮 変化あり 2:1型と2:1:1型   1.49〜1.50 アルッシュタイト
トス石
1.52〜1.53 コーレンサイト
緑泥石とスメクタイトの規則型混合層鉱物
10〜15 変化あり 注4) 変化あり 注4) 変化あり 2:1型と2:1:1型と1:1型 不規則混合層鉱物 1.49〜1.51 イライトとモンモリロナイトの不規則混合層鉱物
カオリンとモンモリロナイトの不規則混合層鉱物
1.50〜1.54 緑泥石とスメクタイトの不規則混合層鉱物
黒雲母とバーミキュライトの不規則混合層鉱物
  • 注1) 加水ハロイサイトのd(001)は10Åで、エチレングリコール処理で11Åに、加熱処理で7Åになる。
  • 注2) d(001)が10〜10.2Åであって、絹雲母、イライトと呼ばれているものには、エチレングリコール処理、加熱処理でd(001)の値を変えるものもある。これは、雲母と膨潤層の混合層鉱物である。海緑石の多くのものは、この性質を示す。
  • 注3) 膨潤性緑泥石はエチレングリコール処理でd(001)のpeakを15.5〜17Åに移動する。また、unusual chlorite(Kimbara et al., 1973)は700℃の熱処理で、普通の緑泥石とは異なり、d(001)の値を12Å付近に移動する。
  • 注4) イライトとモンモリロナイトの不規則混合層鉱物では、エチレングリコール処理で001の回折線は二つに分れる。加熱処理では、10Åに移動する。緑泥石とスメクタイトの不規則混合層鉱物、カオリンとモンモリロナイトの不規則混合層鉱物では、それぞれのデータを参照のこと。
  • * カオリナイトには、カオリナイト-Dと呼ばれるものがあるが、一つの種として認められるものかどうかは問題がある。
  • ** d(001)の値が10Åのものをハロイサイトと呼び、7Åのものをメタハロイサイトと呼ぶこともある。この加水ハロイサイト−ハロイサイト鉱物は、普通、パイプ状の形態を示す。加水ハロイサイト−ハロイサイトの名称は、かならずしも成因の方向を示すものではない。
  • *** これらの雲母鉱物の種は、フィロ珪酸塩鉱物の分類の名称であって、粘土鉱物で、この分類に合致するものが存在するかどうかは議論がある。特に、層間の陽イオン数については、粘土鉱物としての雲母鉱物は一般に1以下である。
     Trioctahedralイライトの名称は、フィロ珪酸塩鉱物の分類には存在しないものである。
     真珠雲母は、フィロ珪酸塩の分類ではBrittle Mica(x〜2)であるが、X線回折では他のMicaと同じであるのでここに入れた。

※1オングストローム(Å)=10-10メートル=0.1ナノメートル(nm)。
※1:1型や2:1型などは、『粘土と粘土鉱物』のページを参照。


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