金武(2004)による〔『新聞と現代日本語』(22-26p)から〕


戦後の主な国語施策年表
1946年(昭和21) 当用漢字表
(内閣訓令・告示)
国語をやさしくするため日常使う漢字として決めた1850字の漢字表。義務教育教科書や公用文は当用漢字の範囲内で書くことが求められた。
1946年(昭和21) 現代かなづかい
(内閣訓令・告示)
従来の「歴史的仮名遣い」は発音とずれているため、むずかしいとして、発音に近い仮名遣いに改めたもの。「思ふ」が「思う」、「てふ」が「ちょう」になった。
1948年(昭和23) 当用漢字音訓表
(内閣訓令・告示)
当用漢字の一字ごとの読み方を定めたもの。たとえば「観」は「カン」の音だけで「みる」の訓は認めない。「認」は「ニン、みとめる」だけで「したためる」は認めないなど。こうした音訓制限には当時から批判があった。
1949年(昭和24) 当用漢字字体表
(内閣訓令・告示)
新字体500字余が公式に定められ、「區」は「区」、「國」は「国」になった。
1951年(昭和26) 人名用漢字別表
(内閣訓令・告示)
47年の戸籍法施行規則で、子供の名前に使える漢字は当用漢字に限られていたが、これでは名前によく使われる「奈、宏、浩、弘、彦、弥、玲、祐」などがつけられないため強い不満が出て、これらを含む92字を人名用漢字として選び、使えるようにした。
1954年(昭和29) 当用漢字補正案
(国語審議会報告)
新聞界が国語審に要望した当用漢字改定案。当用漢字だけでは新聞が必要な漢字が足りないとして「渦 涯 殻 矯 渓 洪 桟 酌 汁 尚 宵 壌 据 杉 斉 挑 釣 亭 偵 泥 披 俸 朴 僕 堀 戻 厄 竜」の28字を加え、あまり使わない「謁 虞 箇 且 遵 但 脹 朕 附 又 濫 丹 劾 唐 嚇 堪 奴 寡 悦 煩 爵 罷 迅 逓 錬 隷 頒 璽」の28字を削った案。新聞はこの案を直ちに実施したが、公用文や教科書は国語審の正式答申でないとして実施を見送った。81年の常用漢字表には補正案で追加された28字が取り入れられたが、削除案の28字もそのまま残された。
1959年(昭和34) 送りがなのつけ方
(内閣訓令・告示)
それまで統一されていなかった送り仮名の付け方を示したもの。「終る、変る」は「終わる、変わる」を本則とした。
1973年(昭和48) 当用漢字改定音訓表
(内閣訓令・告示)
各漢字の音訓を増やすとともに「田舎」「為替」などの熟語としての読み方(熟字訓)を「付表」として追加した。
1973年(昭和48) 改定送り仮名の付け方
(内閣訓令・告示)
59年の「送りがなのつけ方」では「現われる」「表わす」「行なう」「断わる」が本則であったが、今回の改定で「現れる」「表す」「行う」「断る」となった。
1976年(昭和51) 人名用漢字追加表(28字追加)(内閣訓令・告示) 人名用漢字別表の92字ではまだ足りないとして「冴、怜、杏、梓、梨、渚、瑠、沙、芙」など28字を追加した。
1981年(昭和56) 常用漢字表
(内閣訓令・告示)
当用漢字だけでは不十分だという声が強くなり、新聞が使っていた補正案の漢字を含め95字を加えた1945字の漢字表。字体は当用漢字字体表に準じて新字体が採用されている。法令、公用文、新聞、雑誌、放送などで国語を書き表す場合の目安とされた。
1981年(昭和56) 人名用漢字別表(54字追加)(法務省令施行) 「峻、槙、璃、翔、茉、莉」など54字を追加。名前につけられる字も常用漢字および人名用漢字となり、だいぶ増えた。
1986年(昭和61) 改定現代仮名遣い
(内閣訓令・告示)
46年の「現代かなづかい」では助詞の「は、へ」を「わ、え」と書くことも許容されていたが、実際には使われていないとして、この許容を外した以外に大きな変更はない。
1990年(平成2) 人名用漢字別表改定(118字追加)(法務省令施行) 今回は「伽、凛、凱、昴、曙、啄、朔、栞、耀、熙、燦」など一挙に118字を追加、かなりむずかしい字も入った。
1991年(平成3) 外来語の表記
(内閣訓令・告示)
それまで公式には認めていなかった「ヴ」の表記を原音や原つづりになるべく近く書き直す場合に使うことを認めた。
1997年(平成9) 人名用漢字別表改定(1字追加)(法務省令施行) 沖縄の人から「琉球」の「琉」が使えないとの声が出て追加。
2000年(平成12) 表外漢字字体(印刷標準字体)表(国語審議会答申) 常用漢字表、人名用漢字別表にない漢字(表外漢字)1022字を選び、印刷する場合の標準字体を示したもの。表外字には略字を増やさない原則で、いわゆる正字体を基準としたが、「鴎、麹、曽、祷」など22字は「簡易慣用字体」として許容した。また、しんにゅう、しめすへん、しょくへんの三部首は常用漢字で使っている略体を使った表外字も許容することにしている〔例=辻、祇、餅などを許容。印刷標準字体は辻(しんにゅうはテンが二つ)、祗、餅(しょくへんは餠の形)〕。
★簡易慣用字体22字(〔 〕内は印刷標準字体)
唖〔亜は亞〕 頴〔穎〕 鴎〔区は區〕 撹〔攪〕 麹〔麦は麥〕 鹸〔右側は僉〕 噛〔右側は齒〕 繍〔右側は肅〕 蒋〔将は將〕 醤〔将は將〕 曽〔曾〕 掻〔右側は蚤〕 痩〔内側は叟〕 祷〔示+壽〕 屏〔内側は餠の字の右側〕 并〔前の語と同様〕 桝〔枡〕 麺〔麦は麥〕 (さんずいに戸)〔濾〕 芦〔蘆〕 蝋〔右側は、巛+口の中にメ+鼠の字の下側〕


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