経済産業省(2010):エネルギー基本計画.66p.
平成22年6月。


目 次

前文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第1章.基本的視点
1.総合的なエネルギー安全保障の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
2.地球温暖化対策の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
3.エネルギーを基軸とした経済成長の実現・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
4.安全の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
5.市場機能の活用による効率性の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
6.エネルギー産業構造の改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
7.国民の理解・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

第2章.2030 年に目指すべき姿と政策の方向性
第1 節.2030 年に向けた目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
第2節.エネルギー源のベストミックスの確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
第3節.政策手法のあり方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

第3章.目標実現のための取組
第1節.資源確保・安定供給強化への総合的取組・・・・・・・・・・・・・・・・・14
1.エネルギーの安定供給源確保
2.国内における石油製品サプライチェーンの維持
3.緊急時対応能力の充実
第2節.自立的かつ環境調和的なエネルギー供給構造の実現・・・・・・・・・・・・23
1.再生可能エネルギーの導入拡大
2.原子力発電の推進
3.化石燃料の高度利用
4.電力・ガスの供給システムの強化
第3節.低炭素型成長を可能とするエネルギー需要構造の実現・・・・・・・・・・・39
1.基本的視点
2.個別対策
第4節.新たなエネルギー社会の実現・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
1.次世代エネルギー・社会システムの構築
2.水素エネルギー社会の実現
第5節.革新的なエネルギー技術の開発・普及拡大・・・・・・・・・・・・・・・・52
第6節.エネルギー・環境分野における国際展開の推進・・・・・・・・・・・・・・54
第7節.エネルギー国際協力の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58
1.アジア太平洋地域に対する協力
2.先進諸国との協力
3.国際エネルギー枠組みの活用
第8節.エネルギー産業構造の改革に向けて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
1.エネルギー産業を取り巻く環境変化
2.エネルギー産業の構造改革の方向性
3.今後の取組
第9節.国民との相互理解の促進と人材の育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
1.国民との相互理解の促進
2.人材の育成
第10節.地方公共団体、事業者、非営利組織の役割分担、国民の努力等・・・・・・64


前文

 資源やエネルギーは国民生活や経済活動の根幹を支える財である。その大部分を海外に依存する我が国にとって、資源・エネルギーの安定供給は必要不可欠である。また近年、エネルギー利用に伴う環境問題、特に地球温暖化問題への強力な対応が世界的に求められている。さらに、エネルギーの価格は、国民生活や産業の競争力に大きな影響を及ぼすため、市場が適切に機能した効率的なエネルギー供給を実現することが重要である。
 こうした課題を踏まえ、国がエネルギー政策を進めるに当たり、「安定供給の確保」、「環境への適合」及びこれらを十分考慮した上での「市場原理の活用」を基本方針とすること等を内容とする「エネルギー政策基本法(以下「基本法」という。)が2002 年6月に制定された。
 基本法に基づき、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、「エネルギー基本計画」(以下「基本計画」という。)を2003年10 月に策定した。基本計画は、少なくとも3年ごとに検討を加え必要に応じ改定することが法定されていることから、2007 年3月には第一次改定を実施した。
 この度、さらなるエネルギーをめぐる情勢の変化や施策の進捗等を踏まえ、第二次改定を行うこととした。今次改定では以下の三点を重視している。
 第一に、我が国の資源エネルギーの安定供給に係る内外の制約が一層深刻化していることである。
 アジアを中心に世界のエネルギー需要は急増を続けており、資源権益確保をめぐる国際競争は熾烈化している。一方で、資源国等における地政学的リスクは高まり、資源ナショナリズムは高揚している。2008 年に原油価格が1バレル当たり140 ドルを突破するなど、資源エネルギー価格の乱高下も顕著となっており、今後も中長期的な価格上昇が見込まれる。
 我が国の国内エネルギー市場の縮小が見込まれる中、資源獲得力の相対的低下への懸念や国内の最終消費者にいたるエネルギーサプライチェーンをいかに維持するかという課題も生じつつある。
 テロや地震などのリスクは減じておらず、エネルギーの輸送・供給や原子力などについては一層の「安全」確保が求められていく。
 これらを踏まえ、今後とも「エネルギー安全保障」を総合的に確保していくことが不可欠である。
 第二に、地球温暖化問題の解決に向け、エネルギー政策に関するより強力かつ包括的な対応への内外からの要請の高まりである。
 2008 年から京都議定書に基づく第一約束期間が開始された。また、同年の北海道洞爺湖サミットで世界全体の温室効果ガス排出量を2050 年までに少なくとも50%削減するとの目標につき一致をみた。2009 年7月のラクイラ・サミットではこの目標を再確認し、その一部として、先進国全体で、1990 年比又はより最近の複数の年と比して、2050 年までに80%又はそれ以上削減するとの目標が支持された。
 さらに、2009 年9月の国連気候変動首脳会合において、我が国は、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築及び意欲的な目標の合意を前提として1990 年比で2020 年までに温室効果ガスを25%削減することを表明した。
 我が国の温室効果ガスの約9割はエネルギー利用から発生する。上記のような目標を達成し、地球温暖化を防止するためには、国民・事業者・地方公共団体等と緊密に連携し、エネルギーの需給構造を低炭素型のものに変革していく必要がある。
 第三に、エネルギー・環境分野に対し、経済成長の牽引役としての役割が強く求められようになったことである。
 2008 年のリーマンショックを契機に世界経済は歴史的な大不況に直面し、各国は産業構造・成長戦略の再構築を迫られている。多くの国が、エネルギー・環境関連の技術や製品の開発・普及により新たな市場や雇用を獲得することを国家戦略の基軸としつつある。原子力、スマートグリッド、省エネ技術などの分野では各国政府の積極的関与の下、世界規模での市場争奪戦が既に激烈なものとなっている。
 我が国では、2009 年12 月に閣議決定した新成長戦略(基本方針)においても、この分野の強みを活かして「環境・エネルギー大国」を目指すこととしている。今後、この分野への政策資源の集中投入が急務である。
 こうした基本認識の下、今次改定では、これまでの基本計画の政策体系や記述内容について全面的な見直しを行った。
 今後、中長期的に高まる資源・環境制約に適切に対処するため、エネルギーの需給構造、さらには社会システムやライフスタイルにまで踏み込んだ改革が必要である。「時間軸」を踏まえた政策手段の優先付けも不可欠となる。そこで、2030 年までの今後「20 年程度」を視野に入れた具体的施策を明らかにすることとした。
 また、エネルギー需給構造の変革や新たなエネルギー社会の実現のためには、官民が明確な目標を共有し、一丸となって取組を進めなければならない。より具体的に施策の効果検証をすることも重要である。このため、資源エネルギーの安定供給やエネルギー需給構造の改革について可能な限り具体的な数値目標を盛り込んだ。
 今後はこの基本計画に位置付けられた個々の政策について、国が責任を持って遂行していくとともに、不断の検証と評価を実施していく。
 また、エネルギー政策は環境政策・科学技術政策・外交政策のみならず、我が国の経済成長戦略とも密接に関連する。全体として整合的な取組を進めるため、一層緊密な相互連携を図っていくことが不可欠である。
 なお、基本計画は、今後とも、世界のエネルギー情勢、我が国の経済情勢、個々の施策の効果に対する評価も踏まえ、少なくとも3年ごとに、必要があると認めるときには変更することとする。エネルギー政策は国民生活や経済活動に大きな影響を及ぼすため、国民各層の理解の下に進めることが不可欠である。見直しの際は、この点に十分留意し、国民各層から広く意見を聴取するものとする。


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