はじめに ――――――――――――――――――――――――――――
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T 我が国の目標
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1 公平、公正な実効性ある次期枠組みの合意づくり 2
2 国別総量目標の設定 2
3 世界各国の取組に対する支援 3
(1)セクター別アプローチによる技術の普及、コベネフィットによる支援 3
(2)クールアース・パートナーシップ 3
(3)多国間基金の創設 4
U 革新的技術開発と既存先進技術の普及 ―――――――――――――
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1 革新的技術開発 5
(1)革新的技術開発のロードマップの着実な実行 5
(2)石炭利用の高度化 6
(3)「環境エネルギー国際協力パートナーシップ構想」の実現 6
2 既存先進技術の普及 7
(1)太陽光発電の導入量の大幅拡大 7
(2)「ゼロ・エミッション電源」の比率の50%以上への引上げ 7
(3)次世代自動車の導入 8
(4)白熱電球の省エネランプへの切替え 9
(5)省エネ型テレビ、給湯器、エアコン、冷蔵庫の導入の加速 10
(6)省エネ住宅・ビル、200 年住宅の普及 10
(7)原子力の推進 11
(8)原子力発電の優れた安全技術や知見の世界への提供 12
(9)国自らの率先実施 12
V 国全体を低炭素化へ動かす仕組み ―――――――――――――――
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1 排出量取引 13
2 税制 13
(1)税制のグリーン化 13
(2)地球環境税 14
3 見える化 14
(1)カーボン・フットプリント制度等の普及 14
(2)カーボン・オフセットや炭素会計のルールづくり 14
4 環境ビジネス等に資金を流れやすくするための基準と仕組みの整備 15
W 地方、国民の取組の支援 ―――――――――――――――――――
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1 農林水産業の役割を活用した低炭素化 17
2 低炭素型の都市や地域づくり 17
(1)地方の特色をいかした低炭素型の都市・地域づくり 17
(2)二酸化炭素排出の少ない交通輸送網 18
3 低炭素社会や持続可能な社会について学ぶ仕組み 19
4 ビジネススタイル、ライフスタイルの変革への働きかけ 19
(1)こまめな省エネやITの活用、3Rの推進 19
(2)サマータイム制度の導入の検討 20
(3)クールアース・デー 21
(4)NGOや地域のグループによる取組の支援 21
我が国は、「世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して2050年までに半減」するという長期目標を、国際的に共有することを提案している。
その目標の達成には、主要経済国の参加はもちろん、世界のすべての国々が何らかの形で取り組むことが不可欠であるが、日本としても、先進国として途上国以上の貢献をすべきであり、2050年までの長期目標として現状から60〜80%の削減を掲げて、世界に誇れるような低炭素社会の実現を目指すことが必要である。
そのような低炭素社会の実現に向けては、福田内閣総理大臣スピーチ(2008年6月9日)及び地球温暖化問題に関する懇談会提言(2008年6月16日)において、基本的な方針が示されたところであり、本行動計画においては、総理スピーチ及び懇談会提言で示された政策項目ごとに、具体的な施策を明らかにすることとする。
今後は、本行動計画に盛り込まれた施策を着実に実施するとともに、定期的に取組状況のフォローアップを行うこととする。
低炭素社会を目指し、2050年までに世界全体で温室効果ガス排出量の半減を実現するためには、主要経済国はもちろん、世界のすべての国々がこの問題に取り組む必要があり、日本としても2050年までの長期目標として、現状から60〜80%の削減を行う。
また、2050年半減という長期目標を実現するため、世界全体の排出量を、今後10年から20年程度の間にピークアウトさせる。
さらに、次期枠組みについて公平かつ公正なルールに関する国際社会の合意形成を目指すとともに、来年のしかるべき時期に我が国の国別総量目標を発表する。
1 公平、公正な実効性ある次期枠組みの合意づくり
世界全体の排出量を今後10〜20年の間にピークアウトし、2050年に少なくとも半減するため、米・中・印等の主要経済国を始めとする「全員参加」型の公平で実効性のある次期枠組みについて、2009年のCOP15で合意を目指す。
そのため、COP13で合意されたバリ行動計画に従い、国連の下での特別作業部会における議論を進めるとともに、G8サミットを含む多数国間会合、各種二国間会合において、長期目標の共有、セクター別アプローチを用いた公平な国別総量目標設定や技術移転を通じた世界全体でのエネルギー効率改善の在り方等について議論を深め、成果を国連の下での議論へ適切に反映させる。
2 国別総量目標の設定
セクター別積み上げ方式について、公平な国別総量目標を設定するための共通の方法論として国際的に確立すべく各国の理解を得ることを目指す。また、基準年の見直し等の論点も含め、来年のしかるべき時期に我が国の国別総量目標を発表する。
そのため、セクター別積み上げ方式をベースに国別総量目標を設定する方法について、G8サミット、主要経済国会合(MEM)、二国間会合等の様々な場を通じて各国の理解を促進するとともに、我が国の適用事例である長期エネルギー需給見通し等を紹介しつつ、各国が削減可能量の分析作業を行い、その報告をCOP14で行うよう、各国に働きかける。
共通の方法論を確立する上で特に重要な機会となる、2008年8月のガーナでの国連特別作業部会で開催される「セクター別アプローチに関するワークショップ」や秋に主催するセクター別削減ポテンシャルの積み上げをテーマにした第2回国際ワークショップにおいて、一層の理解の進展を目指す。
その際には、基準年、森林等吸収源の取扱い等に係る論点も含め、セクター別積み上げ方式に対する各国の評価なども踏まえ、共通の方法論を確立すべく各国の理解を得ることを目指す。
我が国の国別総量目標の提示については、すべての主要経済国の参加や公平性の確保を図るという観点から、来年のしかるべき時期に交渉状況を踏まえて判断していく。
3 世界各国の取組に対する支援
(1)セクター別アプローチによる技術の普及、コベネフィットによる支援
セクター別アプローチを通じ、我が国が強みを持つ環境技術や省エネルギー技術を途上国など世界に積極的に普及させる。
そのため、IEA(国際エネルギー機関)、APP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)において、セクターごとのベストプラクティスの特定・共有等を行うとともに、多国間及び二国間の枠組みを活用し、中国、インド等に対して省エネルギー設備の実証事業や専門家派遣等の技術協力の実施や障壁の除去に取り組む。
また、交通セクターにおける温室効果ガスの削減・大気汚染の改善に係る国際連携の強化に向けて、「交通分野における地球環境・エネルギーに関する大臣会合」等を通じ、ベストプラクティスの共有、新技術・方策の推進、キャパシティビルディング(途上国の能力向上)に関する協力等を推進する。
さらに、途上国において、持続可能な開発、低炭素・低公害・循環型社会や、気候変動に適応し自然と共生する社会を実現する。
そのため、クリーンアジア・イニシアティブを推進し、中国、インドネシアでのコベネフィット事業の推進や、東アジアでの廃冷媒フロンの回収調査、途上国のインベントリ整備に向けた協力、アジア低炭素・循環型社会構築力強化プログラムなどを実施する。
(2) クールアース・パートナーシップ
温室効果ガスの排出削減と経済成長を両立させ、気候の安定化に貢献しようとする途上国に対し、緩和策、適応策、クリーンエネルギーアクセスの観点から支援を進めるため、5年間で累計おおむね100億ドル程度の資金供給を可能とする「クールアース・パートナーシップ」を推進する。
その一環として新たに制度設計された気候変動対策円借款(第一弾として、2008年7月、インドネシアに対し、総額約308億円を上限とする円借款の供与を決定)、環境プログラム無償、地球環境保険、日・国連開発計画(UNDP)共同枠組みを活用するとともに、既存の無償資金協力、技術協力等やアジア開発銀行(ADB)等の国際機関を通じた政府開発援助による支援を進め(既にマダガスカル、セネガル、ガイアナに対し無償資金協力を実施済)、また、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)等において政府開発援助以外の資金による支援も行う。具体的には気候変動対応のための森林保全・防災対策、コベネフィット対策、省エネルギー・新エネルギー対策等の支援を進める。
また、アフリカ諸国に対しては「日・アフリカ・クールアース・パートナーシップ」を呼びかけ政策協議を進めているほか、ツバル、ラオス等その他の途上国との間での取組も引き続き積極的に推進する。
以上を通じて、2013年以降の枠組みへの途上国の積極的な参加を促進する環境づくりを行う。
(3)多国間基金の創設
日米英のイニシアティブにより、2008年7月1日に世界銀行に多国間基金として設立された気候投資基金を通じて、途上国における太陽光・風力発電所の導入や火力発電所のエネルギー効率向上、排出の少ない公共交通手段の活用、ビルや産業界などにおける電力使用効率の改善等、温室効果ガス削減のための緩和策や、気候変動の悪影響に対応するための適応策などの途上国の気候変動問題への取組を支援する。その際、日米英以外のより多くのドナー国を確保すべく、二国間や多国間会合の機会を通じて関心国へ本基金への参加を働きかけていく。
また、早期に基金の運営を開始することを目指し、途上国への効果的・効率的な支援を行うために、基金の運営に積極的に参画していく。