萩原(監修)(1983)による〔『地震の事典』(165-166p)から〕


地震予知
 地震が発生する前に、その地震の発生時期・発生場所・大きさを予知すること。地震予知を行うためには、前兆現象を観測して判定しなければならない。前兆現象が現れる時期は、地震の直前(数分ないし数日)のものもあり、数年前のものもある。どの時期の前兆現象を用いるかによって、長期予知・中期予知・短期予知・直前予知などに分けられる。中国遼寧省の海城地震(1975年)は、長期から直前までの予知がほぼ成功し、多くの人命が救われた最初の大地震であった。しかし、地震の前兆と同様な異常現象がみとめられても地震がおこらないことも多く、予知は容易でなく、まだ研究段階の域を脱してはいない。
 予知が当たる確率(適中率)が高いことがのぞましいのは当然であるが、ただ適中率を高めようとすると、はっきりした前兆現象がみとめられるときだけ予報を出すことになり、予知されずに地震がおこる率が高くなるので予知率は低くなる。つまり、予知率を高めようとするなら、多少不確実な前兆現象でも予報を出したほうがよいわけである。しかし、そうすれば適中率は低下する。このように、適中率と予知率は相反する関係にあるから、予知が当たることによって得られる利益と、はずれること、あるいは予知されずに大地震がおこることによってこうむる損失とのかねあいで判断する必要がある。』



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