国立天文台(編纂)(2000)による〔『理科年表2001』(425-433p)から〕



『1組の基本単位と、それに関連する物理学の法則、あるいは定義にもとづく乗除のみで導かれる組立単位とからできている単位系を、一貫した(コヒーレントな)単位系という。

国際単位系(SI)

 1960年の国際度量衡総会は、あらゆる分野においてひろく世界的に使用される単位系として、メートル法単位系を拡張した国際単位系(Systeme〔最初のeの頭に`〕 International d'Unites〔eの頭に´〕)略称SIを採択した。日本の計量法もこれを基礎としている。
 SIは7種の基本量、すなわち長さ質量時間電流熱力学温度物質量および光度に対してそれぞれ、メートル(m)、キログラム(kg)、(s)、アンペア(A)、ケルビン(K)、モル(mol)およびカンデラ(cd)の7個を基本単位として構成されている単位系である1)。SI単位系はこれらの基本単位および、基本単位の乗除で表わせる組立単位によって構成される。この組立単位の一部には、固有の名称が与えられている。
 なお、従来は補助単位として定義されていた平面角ラジアン(rad)と立体角ステラジアン(sr)は、現在では固有の名称をもつ組立単位として組み込まれている。
1) MKS単位系は、3種の基本量の単位として、長さメートル質量キログラム時間を採用した単位系であり、これに電流アンペアを加えたものがMKSA単位系である。CGS単位系は、3種の基本量、すなわち長さ質量時間に対しそれぞれ、センチメートル(cm、=10-2m)、グラム(g、=10-3kg)、(s)を基本単位とする単位系である。
 なお、現在のSIの原典は、1998年にメートル条約に基づいて国際度量衡局から発行されたSI国際文書第7版である(Le Systeme
〔最初のeの頭に`〕 International d'Unites〔eの頭に´〕、7eedition、1998)。

基本単位

 SIの基本単位の大きさは、つぎのように定義されている2)
2) 古くは秒は平均太陽日の1/(24×60×60)とされていた。平均太陽日とは1年間の太陽の平均速度をもって赤道上を等速運動する仮想の太陽(平均太陽)が子午線を通過してからつぎに同じ子午線を通過するまでの時間である。しかしこの平均太陽日、したがって平均太陽秒はわずかながら時とともに変化するので、1956年に不変な時間の単位としての秒が1900年1月0日12時(暦表時)における回帰年の1/31 556 925.974 7と定義された(暦表時)。回帰年とは太陽が春分点を通過してからつぎに再び春分点を通過するまでの時間で、毎年約0.005秒ずつ短くなる。その後、1967年に原子的標準による現在の秒の定義が採用された。
時間 (second、s)は、133Cs原子の基底状態の2つの超微細準位(F=4、M=0およびF=3、M=0)の間の遷移に対応する放射の9 192 631 770周期の継続時間である2)
長さ メートル(metre、m)は、光が真空中で1/(299 792 458) s の間に進む距離である3)
質量 国際キログラム原器の質量をキログラム(kilogram、kg)とする3)
電流 アンペア(ampere、A)は、真空中に1mの間隔で平行に置かれた、無限に小さい円形断面積を有する、無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の長さ1mごとに2×10-7Nの力を及ぼし合う一定の電流である。
温度 熱力学温度の単位ケルビン(kelvin、K)は水の三重点の熱力学温度の1/273.16である。温度間隔にも同じ単位を使う。
物質量 モル(mole、mol)は0.012kgの12Cに含まれる原子と等しい数4)の構成要素を含む系の物質量である。モルを使用するときは、構成要素を指定しなければならない。構成要素は原子、分子、イオン、電子その他の粒子またはこの種の粒子の特定の系の集合体であってよい。
光度4) カンデラ(candela、cd)は周波数540×1012Hzの単色放射を放出し所定の方向の放射強度が1/683W・sr-1である光源の、その方向における光度である。
平面角 ラジアン(radian、rad)は円の周上で、その半径の長さに等しい長さの弧を切り取る2本の半径の間に含まれる平面角である。
立体角 ステラジアン(steradian、sr)は球の中心を頂点とし、その球の半径を1辺とする正方形に等しい面積を球の表面上で切取る立体角である。

3) 元来メートルは地球の子午線の北極から赤道までの長さの10-7、キログラムは1気圧、最大密度の温度における水 1 000 cm3の質量と規定され、後にこれらに基づいた2種の国際原器が作られたが、その後の精密な測定の結果、最初の規定と原器による定義とに差異のあることが判明し、それからはいずれも国際原器によって単位の大きさを定義することになった(1889)。その後長さについては原器と光の波長との比較が行われ、86Kr原子の橙色のスペクトル線(2p10−5d5)の真空中における波長の1 650 763.73倍を1メートルとすることになり(1960)、さらに光の速度の測定精度の向上により現在の定義におきかえられた(1983)。
4) アボガドロ数。
5) 点光源のある方向の光度とは、単位時間にその方向にむけて単位立体角中に放射される放射エネルギーを、国際的に定めた標準の比視感度分布で計った明るさの感覚を表す量である。有限の大きさの光源はその大きさを無視し得るほど大きい観測距離においてこれを点光源と見なして上の定義を用いる。

固有の名称をもつSI組立単位

 基本単位の乗除で表される組立単位のうち、固有の名称をもつSI組立単位。
単  位 単位記号 他のSI単位に
よる表し方
SI基本単位
による表し方
平面角 ラジアン rad    
立体角 ステラジアン sr    
周波数 ヘルツ(hertz) Hz   s-1
ニュートン(newton) N   m・kg・s-2
圧力、応力 パスカル(pascal) Pa N/m2 m-1・kg・s-2
エネルギー
仕事、熱量
ジュール(joule) J N・m m2・kg・s-2
仕事率、電力 ワット(watt) W J/s m2・kg・s-3
電気量、電荷 クーロン(coulomb) C   s・A
電圧、電位 ボルト(volt) V W/A m2・kg・s-3・A-1
静電容量 ファラド(farad) F C/V m-2・kg-1・s4・A2
電気抵抗 オーム(ohm) Ω V/A m2・kg・s-3・A-2
コンダクタンス ジーメンス(siemens) S A/V m-2・kg-1・s3・A2
磁束 ウェーバー(weber) Wb V・s m2・kg・s-2・A-1
磁束密度 テスラ(tesla) T Wb/m2 kg・s-2・A-1
インダクタンス ヘンリー(henry) H Wb/A m2・kg・s-2・A-2
セルシウス温度 セルシウス度*1)   K
光束 ルーメン(lumen)*2) lm cd・sr  
照度 ルクス(lux)*3) lx lm/m2  
放射能 ベクレル(becquerel)*4) Bq   s-1
吸収線量 グレイ(gray)*5) Gy J/kg m2・s-2
線量当量 シーベルト(sievert)*6) Sv J/kg m2・s-2
*1) セルシウス温度θは熱力学温度Tにより次の式で定義される。
     θ/℃=T/K−273.15
*2) 1lm=等方性の光度1cdの点光源から1srの立体角内に放射される光束。
*3) 1lx=1m2の面を、1lmの光束で一様に照らしたときの照度。
*4) 1Bq=1sの間に1個の原子崩壊を起す放射能。
*5) 1Gy=放射線のイオン化作用によって、1kgの物質に1Jのエネルギーを与える吸収線量。
*6) 1Sv=放射線の生物学的効果の強さを示す量。

SI組立単位の例
単 位 単位記号 SI基本単位
による表し方
面積 平方メートル m2  
体積 立方メートル m3  
密度 キログラム/立方メートル kg/m3  
速度、速さ メートル/秒 m/s  
加速度 メートル/(秒)2 m/s2  
角速度 ラジアン/秒 rad/s  
力のモーメント ニュートン・メートル N・m m2・kg・s-2
表面張力 ニュートン/メートル N/m kg・s-2
粘度*1) パスカル・秒 Pa・s m-1・kg・s-1
動粘度*1) 平方メートル/秒 m2/s  
熱流密度
放射照度
ワット/平方メートル W/m2 kg・s-3
熱容量
エントロピー
ジュール/ケルビン J/K m2・kg・s-2・K-1
比熱
質量エントロピー
ジュール/(キログラム・ケルビン) J・kg-1・K-1 m2・s-2・K-1
熱伝導率*2) ワット/(メートル・ケルビン) W・m-1・K-1 m・kg・s-3・K-1
電界の強さ ボルト/メートル V/m m・kg・s-3・A-1
電束密度
電気変位
クーロン/平方メートル C/m2 m-2・s・A
誘電率 ファラド/メートル F/m m-3・kg-1・s4・A2
電流密度 アンペア/平方メートル A/m2  
磁界の強さ アンペア/メートル A/m  
透磁率 ヘンリー/メートル H/m m・kg・s-2・A-2
起磁力、磁位差 アンペア A  
モル濃度 モル/立方メートル mol/m3  
輝度*3) カンデラ/平方メートル cd/m2  
波数 1/メートル m-1  
*1) 物27参照(略)。
*2) 物体中の等温面を通って、垂直方向に流れる熱流密度と、その方向の温度勾配の比。
*3) 物体を一定方向から見たとき、その方向に垂直な単位面積当りの光度。

10の整数乗倍を表わすSI接頭語

名 称

記号

大きさ

名 称

記号

大きさ
ヨ タ(yotta) Y

1024
デ シ(deci)  d 10-1
ゼ タ(zetta) Z

1021
センチ(centi) c 10-2
エクサ(exa) E

1018
ミ リ(milli) m 10-3
ペ タ(peta) P

1015
マイクロ(micro) μ 10-6
テ ラ(tera) T

1012
ナ ノ(nano) n 10-9
ギ ガ(giga) G

109
ピ コ(pico) p 10-12
メ ガ(mega) M

106
フェムト(femto) f 10-15
キ ロ(kilo) k

103
ア ト(atto) a 10-18
ヘクト(hecto) h

102
ゼプト(zepto) z 10-21
デ カ(deca) da

10
ヨクト(yocto) y 10-24
注 合成した接頭語は用いない。

電気および磁気の単位

国際単位系(SI)
 従来のMKSA単位系に基づいたもので、四つの基本単位 m、kg、s、A を用いる。

CGS静電単位系(CGS-esu)
 三つの基本単位 cm、g、s を用い、真空の誘電率を値1の無次元の量とし、1esuの電気量=真空中で1cmの距離にある相等しい電気量の間に働く力が1dynである時の各電気量、と定義する。

CGS電磁単位系(CGS-emu)
 真空の透磁率を値1の無次元の量とし、1emuの磁極の強さ=真空中で1cmの距離にある相等しい強さの磁極に働く力が1dynである時の各磁極の強さ、と定義する。

CGSガウス単位系(CGS-Gauss系)
 CGS対称単位系ともよばれ、真空の誘電率、透磁率を値1の無次元の量とし、電気的な量にはesuを、磁気的な量にはemuを用いるもので、電気的量と磁気的量を含む関係式には速度の次元をもつ比例定数として真空中の光速度が現れる。

電圧標準・抵抗標準
 1988年国際度量衡委員会の勧告にもとづき、1990年以降、電圧標準と抵抗標準はそれぞれジョセフソン効果と量子ホール効果を用いて次のように実現されている。ジョセフソン素子に周波数 f[GHz]の電磁波を照射したときにとりだされる量子化電圧Vは V=nf/KJ-90[V]の値をもつものとする。ここでnは整数、KJ-90=483597.898GHz/Vはジョセフソン定数KJ(=2e/h)の協定値である。高磁場・極低温下で半導体の示す量子化ホール抵抗RHはRH=RK-90/i [Ω]の値をもつものとする。ここでiは整数、RK-90=25812.807Ωは、フォン・クリッツィング定数RK(=h/e2)の協定値である。

電磁気の単位系の比較(この表でcは c=2.99792458×108の数値とする。)
量と記号 S I C G S
esu emu
電気量 Q クーロン C =c・10 =10-1
電束密度 D クーロン/m2 C/m2 =4πc・10-3 =4π・10-5
分 極 P クーロン/m2 C/m2 =c・10-3 =10-5
電 流 I アンペア A =c・10 =10-1
電 位 V ボルト V =(1/c)・106 =108
電 界 E ボルト/m V/m =(1/c)・104 =106
電気抵抗 R オーム Ω =(1/c2)・105 =109
電気容量 C ファラド F =c2・10-5 =10-9
誘電率 ε ファラド/m F/m =4πc2・10-7 =4π・10-11
磁 極 Qm ウェーバー Wb =(1/4πc)・106 =(1/4π)・108
磁 束 Φ ウェーバー Wb =(1/c)・106 =108 *1)
磁束密度 B テスラ T =(1/c)・102 =104 *2)
磁 化 M アンペア/m A/m =(1/c)・10-5 =10-3 *2)
起磁力・磁位 Fm アンペア A =4πc・10 =4π・10-1 *3)
磁 界 H アンペア/m A/m =4πc・10-1 =4π・10-3 *4)
インダクタンス L ヘンリー H =(1/c2)・105 =109
透磁率 μ ヘンリー/m H/m =(1/4πc2)・103 =(1/4π)・107
SIではD=εoE+P、H=B/μo−Mとする。
ただしεo(真空の誘電率)=(4π)-1(光速[m/s])-2×107F/m
    μo(真空の透磁率)=4π×107H/m
=はCGS-Gauss単位系で使われるものを示す。
*1)〜*4)はCGS-emu単位系で固有の名称をもつもの;
*1) マクスウェル Mx、 *2) ガウス G、 *3) ギルバート Gi、 *4) エルステッド Oe。

SI以外の単位

 種々の分野で使われているSI以外の単位を示す。メートル系以外の単位については附10(略)参照。
  太字 SIと併用される単位。
  *   SIによる値が実験的に得られるものでSIと併用。
  **   暫定的に用いられる単位。
  †   固有の名称をもつCGS単位。

【長さ】

【面積】

【体積】

【平面角】 

【質量】

【時間】

【速度】

【加速度】

【力】

【圧力】

【仕事、エネルギー】

【熱量】

【仕事率】

【粘度】

【動粘度】

【磁気】

【光】

《放射能に関する量》

【放射能】

【吸収線量】

【線量当量】

【照射線量】

音響単位については物75(略)参照。
その他慣用の計量単位については附10(略)参照。』


戻る