『土壌有機物(どじょうゆうきぶつ) soil organic matter
土壌表面と土壌中に存在する有機物の総称。土壌に加わる落葉落枝その他の有機物および土壌生物の遺体は、土壌表面と土壌中で生物的・非生物的に分解されるが、この分解過程は一挙に進行するのではなく、分解の中間物が滞留する。分解に関与する生物の増殖もある。さらに、暗褐色ないし黒色の有機物が新しく合成される。この種の有機物の生成過程を腐植化(作用)という。
腐植という言葉が土壌有機物の同義語として用いられる。一方、腐植は、土壌有機物のうち、暗褐色ないし黒色を呈する部分の意味に限定して用いられることもある。最近では後者すなわち狭義の腐植を腐植物質(humic
substances)とよび、土壌有機物と腐植を同義に用いるのが、一般的傾向である。ただし、これらの用語の使い方は人によってさまざまであり、一致した見解は得られていない。
T 新鮮および分解不十分な動植物遺体 | |
U 腐植 | |
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腐植物質:腐植酸、フルボ酸、ヒューミン |
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生物遺体の強度の分解物と微生物による再合成産物:蛋白質、炭水化物とその誘導体、ろう、樹脂、脂肪、タンニン質、リグニン質とその分解生成物 |
(Kononova、1964) |
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土壌生物 | ||||
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形態的・ 生成的区分 |
腐植型: 自然界にみられる腐植の存在形態、形態的・生成的特徴による区分 | 陸成腐植 | ||
半陸成腐植 | |||||
水成腐植 | |||||
物質的区分 | 腐植構成分: 化学的・分析的または物質的特徴に基づく区分 | 非腐植物質 | 生物起原の有機物 | ||
腐植物質 | 土壌に固有の有機物 | ||||
機能的構分 | 腐植種: 機能に基づく区分。化学的、物理的、または生理的方法で識別される | 栄養腐植 | おもに化学的・生理的に活性な物質、例: 作用物質(酵素、ビタミン、ホルモン)錯体またはキレート形成物質、還元性物質、有機窒素化合物、リン化合物、硫黄化合物 | ||
耐久腐植 | 難分解性高分子物質、水分保持、イオン交換、構造単位としての活性を示す | ||||
(Scheffer and Ulrich、1960) |
腐植(%) |
腐植酸 (Ch)* |
フルボ酸 (Cf)* |
Ch/Cf比 | |
ポドゾル 灰色森林土 チェルノーゼム 栗色土 灰色砂漠土 赤色土 |
2.5〜3.0 4.0〜6.0 7.0〜8.0 1.5〜2.0 1.5〜2.0 4.0〜6.0 |
12〜15 25〜30 40 25〜29 15〜18 15〜20 |
25〜28 25〜27 16〜20 20〜25 20〜23 22〜28 |
0.6 1.0 2.0〜2.5 1.2〜1.5 0.5〜0.7 0.6〜0.8 |
* 全有機態炭素中の炭素パーセント(Kononova、1963; 菅野ら訳、1976) |