吉永(1985)による〔『粘土の事典』(1985)から、288p〕


『〔生成と定義〕 土壌という語はいくつかの意味に用いられている。地質学的見地からは、土壌は岩石風化物に多少の有機物が混入したもので、岩石のサイクルにおける固結岩(堆積岩)の材料である。農林業においては、土壌は植物(作物)の根圏であり、養・水分の貯蔵庫および供給庫である。土木建築においては、地表の岩石風化砕屑物で構築の材料や土台になるものは起源を問わずすべて土壌であり、この場合は広く「土」とよばれる。これらの見方は土壌の性格と機能の一面を表しているが、いずれも土壌を静的に、単なる岩石風化物または利用上の資材として捉えたものである。これらの見方に立って公約数的な定義をすれば、「土壌は地表の膨軟な物質で、通常岩石風化物からなり、有機物と可溶性塩類を含み、植物が生育する所」(Webster's Third New Int'l Dictionary、1971)とすることができるだろう。
 しかし、土壌学で今日最も広く受け入れられている定義は、次のように、土壌を自然史的産物とし、動物や植物と同様の独立した自然体と見なしたものである。すなわち、土壌は岩石風化物が地表のさまざまの環境因子の組合せ(自然地理的条件)の下で物理的、化学的および生物学的作用を受け、有機物が加わり、時間を経て生成したもので、生成過程と経過時間を反映したいくつかの層位(horizon)からなる一定の形態的特徴を備えるに至ったものである。そして、生成した土壌は生成環境に対応した一定の地理的広がり(分布)をもつ。このような土壌の生成は、あたかも植物が時間とともに成長し、気候や立地条件ごとに特徴的な森林や群落を形成するのに似ている。土壌を独立の自然体と見なすゆえんである。
 岩石風化物は土壌の原料となるもので、これを母材とよび、もとの岩石を母岩とよぶ。』



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