長沼(1995)による〔『地球の水圏−海洋と陸水』(2-4p)から〕


目次

(2) 地球上の水の総量
 原始の地球が誕生して以後、数億年をへて原始の大気と海水が生みだされ、さらに長い時間をかけて、現在われわれが地球上でみる陸地と海洋の姿がつくられてきた。地球表面に満々とたたえられている水の量は、原始の海水が地球上に存在するようになってから、どのような変遷をたどって現在の水量になったか、これまで多くの人々によって研究されてきた。海水の量の変遷については、いまもって定かなる見解は示されていないが、つぎに代表的な考えのいくつかを紹介しておく(図1-1:略)。
 (1) 原始の地球が誕生した初期から現在まで、海水量はまったく変わっていない。
 (2) 原始の海水が地球表面に誕生した初期に、すでに多量の海水は存在していたものの、その後も少しずつ水量を増した。
 (3) 原始の海水が地球表面に誕生した初期以降の比較的短時間に、現在の海水量の大部分が生まれた。
 (4) 原始の海水が地球表面に誕生した初期から現在まで、海水量は一定の割合でしだいに増加してきた。
 (5) 原始の海水が地球表面に誕生した初期には、少量の海水しかなく、新しい時代になるにつれて急速に水量を増してきた。
 現在、広く支持されているのは(3)の見解である(7巻『地球の歴史』参照)。
 現在の地球の水圏を構成する水量に関しては、いろいろな人によって試算されてきた。表1-1にはその代表的な試算結果を示してある。研究者によって多少の違いはあるものの、地球上の水の総量は14億km^3前後と見積もられている。このうちもっとも多いのは、水圏全体の97.5%を占める海水である。
表1-1 地球上の水の総量(単位:km^3)
試算者 カリーニン(1968) ネース(1969) 榧根 勇(1973)
海水 1,370,000,000 1,350,400,000 1,349,929,000(97.50
河川水
湖沼水(淡水・塩水)
土壌水
地下水

大気中の水
生物中の水
1,200
750,000
65,000
60,000,000
29,000,000*
14,000
1,700
230,000
150,000
7,000,000
26,000,000*
13,000
1,200(0.0001)
219,000(0.016)
25,000(0.002)
10,100,000(0.72
24,230,000*(1.75
12,600(0.001)
1,200(0.0001)

1,459,830,000 1,383,794,700 1,384,518,000(100%)
*:水の体積に換算した値
( )内の数字は水の総量(100%)に対する割合

 陸水は河川水、湖沼水、地下水、雪氷などに区分できる。陸水のうち約70%は雪氷で、おもに南極大陸やグリーンランドなどに平均2000m以上の厚さの大陸氷河(氷床)として存在する。残りの約29%は地下水で、河川や湖沼などの地表水および土壌水の量は陸水全体の0.7%程度と考えられている。大気中には水蒸気としての水がわずかに存在する。
 地球の水圏にあって、河川や湖沼の水はほんの微量にすぎないが、人類をはじめ、陸上に生息する生物にとっては、重要な資源であるとともに不可欠なものである。このように水の量からみると、海水は天然水の中でもっとも多く地球に存在するが、海水を含めたさまざまな天然水は互いに関連しあって、この地球上に存在しているのである。』