表4.1 機器分析法の比較
分析方法 |
紫外可視吸光分析 |
赤外吸収分析 |
蛍光分析 |
原子吸光分析 |
発光分光分析 |
ICP質量分析 |
質量分析 |
ガスクロマトグラフィー |
高速液体クロマトグラフィー |
X線回折分析 |
蛍光X線分析 |
放射化分析 |
ポーラログラフィー |
分析原理 |
試料に紫外(または可視)線を照射して生ずる分子の軌道電子の変化に起因する吸収を測定する。定量の他分子構造決定にも用いられる。 |
試料に赤外線を照射して、双極子能率の変化を起す分子振動に起因する吸収を測定する。分析のほか、分子構造決定にも多用される。 |
試料に強い励起光を照射し、分子軌道電子が励起した後、基底状態へ戻るとき発生する蛍光を測定する。 |
試料中の目的成分を炎や黒鉛炉内で原子化し、その原子密度と共鳴吸収との関係から濃度を求める。 |
試料をアーク、スパーク、プラズマなどで原子化したとき生ずるイオン線、中性原子線などの発光強度を測定する。 |
試料をICP中に導入して生ずるイオンを質量分析計で測定する。
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試料を電子衝撃法などで励起しイオン化したとき、生成するフラグメントを、電磁界などにより質量数に応じた各イオンに分離しそのイオン量を測定する。 |
試料をカラム内でガス化し吸着性や分配係数の差に応じて分離し、各種の検出器により、ピーク位置、ピーク高さ(または面積)を求め定性、定量分析する。 |
試料をカラム内で液体状態のまま、左記のように分離し、各種の検出器により定性、定量分析する。
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試料にX線を照射した際に生ずる回折像を解析する。むしろ結晶構造の解析に多用される。 |
試料にX線を照射したとき生ずる元素固有のX線を半導体検出器でそのエネルギーと強度を測定し定性、定量を行う。 |
試料を中性子や荷電粒子で衝撃して核反応を起させ、生成した放射性核種から定性、放射能強度から定量をする。 |
試料溶液を水銀滴下陰極などを用いて電解したとき、得られる電流-電圧曲線から、目的成分を定性、定量分析する。 |
試料の前処理 |
一般に、灰化処理や分離処理を行う。妨害成分共存下のときはマスキングなどの対策もする。 |
直接測定のほか錠剤成型法、ヌジョール法、薄膜法などの処理を行う。 |
目的物質が蛍光性物質でない場合は蛍光試薬と反応させて、蛍光性物質として測定する(誘導体化法)。 |
一般に、灰化処理や分離処理を行う。ただし、黒鉛炉法では直接測定することもある。 |
固体試料ではそのまま、液体試料では灰化、分離などの処理を行う。
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一般に灰化や酸分解処理、さらに分離処理を行う。
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気体または蒸気圧の高い液体試料では、コック切換、毛管ピペット法などによる。高沸点液体や固体では、加熱導入、直接導入法などによる。 |
気体または気化しやすい液体や固体試料ではそのまま、水溶液では抽出操作などの分離処理をする。 |
天然試料中の微量成分分析などでは、抽出などの分離処理をする。
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固体では膜状または棒状とし、粉末では毛細状ガラスなどに充てんして用いる。 |
固体・液体では平面研磨やマイラー容器で平面をとるようにし、粉末ではペレット成型する。 |
試料は通常そのままカプセルに入れるが、多量のNaやCoを含む試料や不安定試料はできるだけさける。 |
試料を溶液状態にして測定する。
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測
定
試
料 |
状
態 |
主として溶液(まれに気体、固体もある) |
気体、液体、固体 |
主として溶液(固体のときもある) |
主として溶液(黒鉛炉法では固体もある) |
固体(金属や粉末) |
溶液 |
主として溶液(レーザーアブレーション法などを用いると固体も測定可能) |
気体 |
液体 |
固体 |
気体、液体、固体 |
液体 |
結晶性固体 |
固体 |
液体 |
固体、液体 |
溶液 |
必
要
量 |
数 ml 以上 |
数 mg〜数十 mg |
数 ml 以上
(数 mg 以上) |
数 ml 以上
(数 mg) |
数 mg |
数 ml 〜数十 ml |
数 ml 以上 |
数 ml 以上 |
1ml 程度 |
数 mg |
数μl 〜数 ml |
数μl 〜数 ml |
数 mg 〜数百 mg |
数十〜数百 mg |
数 ml 以上 |
数 mg 〜数百 mg |
数 ml 以上 |
定量範囲 |
数ppm〜数% |
0.1%以上 |
数ppb〜数百ppm |
数ppb〜数百ppm |
数ppb〜数% |
サブppt〜ppb |
数ppm以上(ただし、通常の質量分析) |
検出器により異なる。質量分析計などを用いるときわめて高感度。 |
検出器により異なる。蛍光検出器などを用いるときわめて高感度。 |
5%以上 |
10 ppm以上 |
0.1 ppb〜ppm |
1ppm以上 |
適
用
範
囲 |
有
機 |
定性 |
○ |
◎ |
○ |
× |
× |
× |
◎ |
○ |
◎ |
◎ |
× |
× |
○ |
定量 |
○ |
◎ |
◎ |
× |
× |
× |
○ |
◎ |
◎ |
○ |
× |
× |
◎ |
無
機 |
定性 |
○ |
×
(ただし気体では○) |
○ |
○ |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
◎
(とくに陰イオンについては有効) |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
定量 |
◎ |
×
(ただし気体では◎) |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
○ |
○ |
◎
(とくに陰イオンについては有効) |
○ |
◎ |
◎ |
◎ |
特長、その他 |
発色反応を利用するときは、その安定性、モル吸光係数、選択性などを十分配慮せねばならない。
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一般に感度が低いが有機分析ではもっとも多用されているし、特殊高感度化対策もなされつつある。 |
超高感度という利点の反面、選択性、微量不純物によるブランク対策などとくに配慮が望ましい。 |
もっとも汎用的に用いられる微量金属元素分析法の一つ。黒鉛炉法はもっとも高感度な分析法の一つ。 |
スパーク法は固体金属試料の定性、定量に用いられる。ICP法は溶液試料中のほとんどすべての金属元素の定量に有効で汎用法の一つ。 |
超高感度の金属元素分析法として近年、急速に普及しつつある。
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主として有機化合物の定性分析、分子構造推定の道具となるが、ガスクロマトグラフの結合などにより分離同定を兼ねる用途も開けている。 |
主として有機化合物の定量分析用として多用される。
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主として有機化合物の分析に用いられるが、ガスクロマトグラフィーでは不可能な高分子量化合物や不安定化合物の分析に特長がある。またイオンクロマトグラフィーは陰イオンの分析に広く用いられる。 |
結晶性化合物の化学構造を推定し、また、定性用としても用いられるが、感度が低く、組成分析がせいぜいである。 |
試料中の元素の組成分析に有効で、ほかの方法では困難なS、Cなど非金属分析に有利であるが、マトリックスの影響を受ける欠点がある。 |
元素によってはきわめて超高感度の定量分析を精度よく行うことができる利点があるが、RIを用いるなどの煩雑さは欠点である。 |
感度の面で今一歩の感があるが、ストリッピングポーラログラフ法などの電解前濃縮法と併用することにより、再び見直されようとしている。 |