島(1998)による〔『隕石−宇宙からの贈りもの−』(8-11p)から〕


2 隕石はどこからくるのだろうか
 目撃情報を総合すると、図1(略)で見る限り、国分寺隕石は南東から、根上隕石は北西から来ていますが、他の二隕石は南西方向から飛来しています。一般に隕石は図3(略)に示すように西の方から地球の自転を追いかけるように、しかも午後に地球に入ってくるものが多いといわれています。実はこれが一番地球と隕石の衝突の際に発生するエネルギーが少ないために、隕石として回収される確率が高いのです。地球の自転と向きあう方向から入ってくると、その隕石ははじきとばされてしまうか、もし運良く入ってこられても木端みじんに砕けてしまって、隕石として残る確率が低くなってしまうのです。
 地球突入前の隕石の故郷は単なる目撃情報からだけでは、算出することはできません。隕石が地球に突入する速度を知ることが大切なのです。日本に落下した隕石の場合は、目撃情報をもとにそれぞれの隕石に適した1秒間に14〜16キロメートルという推定値を入れて計算しています。そうすると図4(略)につくば隕石の例で示したように、いずれも火星と木星の間にある小惑星帯から来たことになります。
 これは、1959年4月7日、チェコスロバキア(当時の国名で)に落下したプリブラム隕石、1970年、アメリカオクラホマ州に落下し、六日後に予想地点で回収されたロストシティ隕石、1977年2月5日、カナダアルバータ州に落下したイニスフリー隕石について、全天を自動カメラで探査して隕石の落下を捕らえ、隕石を回収するとともにその軌道を算出して、これらの隕石が小惑星帯から来たことを突き止めた結果に準拠しているのです。その時は、写真7(略)に示すように隕石の突入速度を自動カメラのシャッターの開閉により測定して正確に出しました。このことから、普通の、大部分の隕石はおそらく小惑星帯からきたものと考えて間違いないだろうということになりました。このカメラワークは、あまりにも費用がかかりすぎるので、この三例の後中止されてしまいました。
 太陽系では火星と木星との間が空きすぎています。ここに惑星になり損ねた物質があってそれが他の惑星同様に太陽に周りを一定の周期でまわっているのですが、その小惑星同士の衝突やあるいは他の惑星からの引力などにより、その軌道を外れるようなことが起こり、それがたまたま地球の引力圏に紛れ込んだ時に、隕石となって落下してくると考えられています。
 現在では、小惑星帯の中のいくつかの小惑星の赤外線分光スペクトルからも、これらの物質が隕石と似たような組成をもっていることが確かめられています。』 



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