小森(1995)による〔『太陽系と惑星』(158-160pから)〕


小惑星と隕石の関係
 上の述べた各タイプの分類にみるように、反射スペクトル曲線の解析から、小惑星と隕石は密接な関係をもっていることがわかる。図5-24(略)は、小惑星と隕石の反射スペクトル曲線が最もよく一致するものの例である。この事実から、隕石は(少なくともその一部は)、小惑星そのものか、あるいは小惑星を母天体としている、との類推が成り立つ。
 小惑星と隕石との関係は、両者の軌道の類似性からもさぐることができる。小惑星のなかには、アポロ−アモール群(近日点距離が1.3AUよりもちいさなもの)とよばれる、離心率の大きな一群がある(図5-25:略)。これらの軌道はいちじるしく扁平な楕円で、地球や金星の軌道の内側にまで入りこむことが多く、特異小惑星とか近地球小惑星とよばれている。
 一方、隕石の軌道にもこれと似たものがある。落下の状況が目撃されたり、カメラにとらえられた隕石には、地球突入前の軌道を復元できるものがある。図5-26(略)はこのような隕石の例で、その軌道は特異小惑星の軌道と本質的に同一といってよいほどよく似ている。こうしたことから、かつてメインベルトのカークウッド空隙の位置にあった小惑星が、軌道進化の末いちじるしく離心率の大きな軌道に変化して、特異小惑星の仲間が生まれ、これらの一部が隕石として地球に落下してくる、というシナリオがえがけることになる。
 しかし、話はそれほど簡単には運ばないのが世の常である。地球に落下してくる隕石は石質隕石(Oコンドライト)が圧倒的に多い。ところがその故郷とされたメインベルトには、反射スペクトルから判断する限り、石質隕石にあたる小惑星はきわめて少ないのである。この不一致は小惑星研究上の大問題とされてきた。そこで1つの考えとして、メインベルトには実際は石質隕石組成の小惑星がたくさんあるが、その表面が変質してレゴリス(細粉物質)などでおおわれているので、本来の組成を示すスペクトルが得られないのだ(G.Wetherillほか、1988)という仮説が提唱された。ところがまた、最近になって、メインベルトにある3628番ボズネムコワのスペクトルが、確かにOコンドライトに合致するという観測結果が、アメリカのビンゼルら(R.B.Binzelら、1993)によって報告されているので、これが本当に石質隕石的な小惑星だとすれば、表面が変質しているとは必ずしもいえないことになる。いずれにしてもこの問題の解明には、今後の精度の高い観測が必要である。』



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