都城・久城(1975)による〔『岩石学U』〕(54-63p)から〕


18.1 火成岩の組織、火山岩と深成岩
 野外あるいは大きい標本で見られるような岩石の構造的性質を構造(structure)とよび、顕微鏡下でみられるような構造的性質を組織(texture)とよぶ。たとえば、火成岩の構成鉱物の大きさ、形、並び方などに関係した性質は組織である。ある一定の組織をもった火成岩が切れて柱状節理を生じたり、重なって層理をつくったりする。こういう柱状節理や層理は、構造に入れられる。しかし、これら二つの語は、場合によって、もっとちがった意味に用いられることもあり、二つを厳密に区別することは大した意味があるわけではない。
 岩石をつくっている鉱物の粒の大きさを表わすのに、粗粒(coarse-grained)、中粒(medium-grained)、細粒(fine-grained)というような語がよく使われる。粗粒と細粒の境界を、平均直径1mmくらいのところに置くことが多い。
 岩石がほぼ同じような大きさの鉱物粒からできている組織を、等粒状(equigranular)とよぶ。連続的にちがったさまざまな大きさの鉱物粒の集合からできている組織を、シリイット(seriate)とよぶ。大きい鉱物と小さい鉱物とが、はっきりした二群に分かれているときには、その岩石が火成岩であれば、斑状組織(porphyritic texture)をもっているという。その大きいほうの鉱物を斑晶(phenocryst)、小さいほうの鉱物(および非結晶質ガラス)の集合を石基(groundmass)とよぶ。
 斑状組織は火山岩の大部分にみられるが、この場合に一般に、斑晶は石基よりも早い時期に、ゆるやかに結晶作用が起って、できたと考えられる。そこで、斑状組織の定義のなかに、斑晶と石基は二つの異なった時期と条件の下で結晶したものであって、前者のほうがより早い時期の生成物であるということを含めることもある。この条件を含めるかどうかで、斑状組織という語の適用範囲が、少しちがってくる。たとえば、カコウ岩のなかのアルカリ長石の大きい結晶は、他のより小さい鉱物より必ずしも早い時期に結晶したとは限らない。そこで、定義しだいで、そういう岩石の組織は、斑状組織にいれられることと、そうでないこととが起る。
 斑状でない火山岩の組織の場合に、それがとくに、斑晶のない、石基だけに対応する性質をもっていることを強調したいときはそれをアフィリック(aphyric)な組織とよぶ。斑晶はマグマのなかで沈降集積しやすいので、斑状岩はかならずしもマグマの液体の組成を表わすとは限らないが、アフィリックな岩石はある時期の液体を表わすと考えられる。
 近年の記載的岩石学で実際に深成岩(plutonic rocks)に入れられているものは、カコウ岩やガブロのように、ふつう粗粒の等粒状組織をもっている火成岩であって、それは一般にはゆるやかに結晶した火成岩であろうが、かならずしも地下の深所でできるとは限らない。実際に火山岩(volcanic rocks)あるいは噴出岩(effusive rocks)に入れられているのは、玄武岩や安山岩や流紋岩のように、細粒でときにはガラスをも含む火成岩や、そういう石基のなかに斑晶のはいった火成岩である。それは、火山に多いけれど、火山のすべての岩石がそうでもなく、火山でないところにでもできうる。したがって、深成岩と火山岩は、記載的岩石学の立場からは、火成岩の組織による分類と考えねばならない。そうしないで、たとえば、地下の深いところでできたガブロは深成岩に入れ、火山体のなかで地表に近いところでできたガブロは火山岩に入れるというようなことに規約すると、分類できない岩石がたくさんできてきて、岩石の分類法として使いにくくなる。粗粒火成岩ができたほんとうの深さは、容易にわからないことが多いからである。
 記載的岩石学の書よりほかでは、深成岩とか火山岩という名前は今日もあまりにも広く使われているので、本書でもそれらを使うことを避けないことにする。ただ、その意味は、いつも上述のごとくである。

 18.2 火成岩の組織をあらわす述語
 火成岩の組織を記載表現する述語は、きわめて多い。A.Johannsenの“A Descriptive Petrography of the Igneous Rocks”の第1巻(1931)には、組織をあらわす述語だけの述語集がついている。ここでは、そのなかで特に重要な、ごく普通に使われるものだけを解説する。
(a)結晶度(crystallinity)、すなわち固結するまでのマグマの結晶作用の進行程度を表わすのに、次のような語が使われる:
 完晶質(holocrystalline)とは、火成岩が全部結晶よりなり、ガラスを含まないことである。
 半晶質(hypocrystalline)とは、火成岩が結晶とガラスと両方からなることである。
 完全ガラス質(holohyaline)とは、火成岩が全くガラスよりなることであるが、厳密にこのような岩石はきわめてまれである。
(b)火成岩は、構成鉱物の大きさ(grain size)によって、次のように分けられる:
 顕晶質(phanerocrystalline)とは、火成岩の構成鉱物粒が肉眼またはルーペで見分けられる程度の大きさのことをいう。
 非顕晶質(aphanitic)とは、火成岩の構成鉱物粒が肉眼やルーペでは見分けられないことをいう。非顕晶質の火成岩のなかで、鉱物粒が顕微鏡下では見分けられみわる程度の大きさの場合にはマイクロ結晶質(microcrystalline)といい、鉱物粒が顕微鏡下でも見分けられないが、直交ニコルにしてみると結晶していることはわかるような場合にはクリプト結晶質(cryptocrystalline)という。非顕晶質という語は、ガラスに富む場合をも含む。
(c)火成岩の構成鉱物粒の形、またはそれに関係した組織上の性質を表わすのに、次のような語が使われる:
 自形(euhedral、idiomorphic、automorphic)とは、ある構成鉱物が完全に自分の固有の結晶面でとりかこまれている状態を表わす語である。あるいはまた、火成岩がほとんどそのような鉱物だけからできている組織を表わすにも使われる。火成岩が完全に自形の鉱物だけからできているという印象がとくに強いときには、panidiomorphicという語も使われることがある。(それは原理的には不可能なことであるが、そういう印象を与える組織がある。)
 半自形(subhedral、hypidiomorphic、hypautomorphic)とは、ある構成鉱物が一部分は自分の固有の結晶面でかこまれ、他の部分は固有の結晶面を欠いている状態を表わす語である。あるいはまた、火成岩の構成鉱物のなかのあるものは自形であるが、他のものは次にのべる他形であるような組織を表わすにも使われる。
 他形(anhedral、xenomorphic、allotriomorphic)とは、ある構成鉱物が自分の固有の結晶面を示さない状態を表わす語である。また、火成岩がそのような鉱物だけからできている組織を表わすにも使われる。
 鉱物がマグマのなかで自由にゆるやかに結晶する場合には、自形になりやすいであろう。マグマの大部分が結晶した後で、既存の鉱物の間隙に晶出する鉱物は、自形になることは困難で、その間隙に合った形になるのが普通であろう。したがって、火成岩の場合には、自形と他形は、鉱物の結晶作用の順序を推定する上の、一つの手がかりを与えてくれる。カコウ岩の組織は多くの場合、半自形等粒状で、ガブロやアプライトの組織は多くの場合、他形等粒状である。
 また、結晶の形自体の性質を表わすのに、次のような言葉が用いられる:
 柱状(prismatic)または針状(acicular)とは、結晶が一つの方向に長くのびていることをいう。
 板状(tabular)とは、結晶が二次元的に著しく生長していることをいう。
 等次元状(equidimensional)とは、結晶がどの方向にもほぼ同じように生長して、ころころした形をしていることをいう。
 不規則(irregular)とは、上記の、あるいはそれに類する簡単な言葉で表現できない場合のことである。
(d)そのほかに、組織の顕微鏡的記載にとくによく使われる言葉をいくつかあげておく:
 オフィティック(ophitic)とは、ドレライトあるいは輝緑岩によく見られる組織で、斜長石の細長い自形の結晶と結晶との間を、大きい他形のオージャイトがうずめているものをいう。ドレライト状(doleritic)または輝緑岩状(diabasic)とよぶこともある。
 インターグラニュラー(intergranular)とは、完晶質玄武岩によくみられる組織で、斜長石の細長い自形の結晶と結晶との間を、それよりずっと粒の細かいオージャイトの集合がうずめているものをいう。
 インターサータル(intersertal)とは、インターグラニュラーによく似ているが、斜長石の間をうずめている物質がオージャイトだけではなくて、カンラン石、不透明鉱物、ガラスなどさまざまのものである組織をさす言葉である。
 ポイキリティック(poikilitic、poecilitic)とは、勝手な方向にむかった小さい結晶が、それより大きい他の鉱物の結晶に含まれている組織をいう。
 トラキティック(trachytic)とは、細粒の短冊状の長石が互いにほぼ平行に配列しているような組織をいう。斑晶がある場合は、それをよけるようにうねって配列している。粗面岩、粗面安山岩に特徴的な組織である。
 流状(fluidal)とは、結晶が互いにほぼ平行に配列している組織で、マグマの流動によって生ずる。流紋岩やデイサイトなどにしばしば見られる。
 グラフィック(graphic)とは、石英とアルカリ長石のくさび形文字状の片が多数いりくんでいて、ある範囲にある石英片、ある範囲にある長石片が、それぞれ同時に消光するような組織をいう。これは石英と長石が同時に結晶してできるので、共融点における結晶作用の結果だとよく解せられる。(石英と長石よりほかの鉱物についても用いられることがある。)石英と長石のグラフィック組織はカコウ岩やペグマタイトによくみられる。ペグマタイトでは、石英片や長石片が大きく、肉眼でよく見えることがある。そこで顕微鏡下でだけ見えるように小さいスケールのグラフィック組織であることを強調するときには、マイクログラフィック(micrographic)という。
 スフェルリティック(spherulitic)。針状あるいは長柱状の石英や長石が一点から放射するように集まってつくる球のような形の塊まりをスフェルライト(spherulite)という。そういうスフェルライトを多数含む岩石は、スフェルリティックな組織をもつという。これは結晶度の悪い、ガラスの残っているような岩石によくみられる。顕微鏡下でだけ認められるような小さいスケールのスフェルリティック組織を、マイクロスフェルリティック(microspherulitic)という。
 グラノフィリック(granophyric)とは、グラフィックおよびスフェルリティックな組織の全体を表わす語である。

 18.3 火成岩の岩型の分類表
 火成岩の岩型の分類と命名の詳細な解説にはいる前に、ここに表18.1として、火成岩の普通の岩型の簡単な分類表を示し、全体の関係をわかりやすくしよう。
 この表ではふつうの火成岩をまず、マフィックな鉱物に富むものと、それに乏しいものと、その二つの間の中間的なものとに、三分してある。すなわち、これは15.4節でのべた色指数(マフィックな鉱物のパーセント)による分類である。マフィック火成岩は、マフィック鉱物の量が40〜70%の範囲内のものであるが、その量がこれよりも多い火成岩もよくあって、それは超マフィック岩類(ultramafic rocks)とよばれる。この分け方の境として採用した色指数の値は、比較的近年出版されている記載的岩石学書の多くに採用されている値と、ほとんど同じである。
 鉱物の同定ができないような結晶度の低い火成岩やガラス質の部分を含む火成岩では、マフィック鉱物の量は求められない。その場合に、もし化学分析値があれば、C.I.P.W.ノルムを計算して、そのフェミック鉱物の重量パーセントをかわりに用いれば、ほぼ同じ結果が得られる。
 このようにマフィック鉱物の量によって3種に大別する分類は、シリカの量によって塩基性、中性、酸性と3種に大別する分類にやや似ている。しかしマフィック鉱物の量とシリカの重量パーセントとは必ずしも厳密には対応しないので、著しいくい違いを生ずる場合もいくらかある。たとえば粗面岩、フォノライト、閃長岩などはフェルシック火成岩であるが、シリカの量によると中性岩に属するし、それらの一部分には塩基性岩にはいるものさえある。ただしマフィック火成岩類はほぼすべて塩基性岩に相当する。

表18.1 火成岩の岩型の簡単な分類表
 

マフィック火成岩類

中間火成岩類

フェルシック火成岩類

マフィック鉱物の体積%
70 40 20

長      石
Caに富む斜長石 中性の斜長石

Naに富む斜長石、カリ長石
斜長石>カリ長石 斜長石<カリ長石
長石とシリカ鉱物を含む
(ソレアイト系列、カルクアルカリ系列)
細粒 玄武岩 安山岩 デイサイト 流紋岩
中粒 石英ドレライト 石英閃緑岩ポーフィリー カコウ閃緑岩ポーフィリー カコウ岩ポーフィリー
粗粒 石英ガブロ 石英閃緑岩 カコウ閃緑岩
石英モンゾニ岩
カコウ岩

長      石
Caに富む斜長石 中性〜Naに富む斜長石、カリ長石
(斜長石=カリ長石)
Naに富む斜長石、カリ長石
(斜長石<カリ長石)
長石に富むがシリカ鉱物も準長石も含まない
(ソレアイト系列の一部、アルカリ系列の一部)
細粒 カンラン石玄武岩 粗面安山岩
ミュゲアライト
粗面岩
中粒 カンラン石ドレライト モンゾニ岩ポーフィリー 閃長岩ポーフィリー
粗粒 カンラン石ガブロ モンゾニ岩 閃長岩
準長石を含む
(アルカリ岩系列)
細粒 ベイサナイト
カンラン石ネフェリナイト
テフライト フォノライト
中粒 テッシェナイト ネフェリンモゾニ岩ポーフィリー チングアイト
粗粒 エセクサイト、アイジョライト ネフェリン・モンゾニ岩 ネフェリン閃長岩
注.この表にあげた岩型のなかで、長石を含まないのはカンラン石ネフェリナイトとアイジョライトだけである。

 またこの表には、それぞれの火成岩類に含まれる長石の種類と、大体の組成をも示してある。(ただし、準長石を含むようなアルカリ岩系列の火成岩に対しては、それらを示してない。)同じマフィック鉱物の量をもっていても、異なる岩石系列では長石の組成は異なっている。たとえば、シリカ鉱物を含まない中間〜フェルシック火成岩類は一般にアルカリ岩系列に属するために、長石の組成もシリカ鉱物を含む場合より一般にアルカリに富んでいる。したがって長石の組成について、はっきりした共通の境は引けない。この表では、Caに富む斜長石とはアノーサイトからCaに富むラブラドライトぐらいまでをさし、中性とはラブラドライトとアンデシンをさし、またNaに富む斜長石とはNaに富むアンデシンからアルバイトまでを指している。フェルシック火成岩類は、Naに富む斜長石が多いものと、カリ長石が多いものとに区別した。その境を、ほぼ1:1としてある。
 フェルシック火成岩では、長石の含有量が多いので、それをアルカリ長石と斜長石の割合で細分することは、広く行なわれている。そのときに、アルバイトをアルカリ長石にいれる人と、斜長石にいれる人とがあるが、この表では斜長石にいれる方法を採用している。したがって、この細分は、大たい、岩石の化学組成上のK:Naの比による分類に似たものである。
 色指数で三つにわけられたおのおのの群は、次に、フェルシック鉱物の種類によって三つに細分される。一つはシリカ鉱物(シリカ鉱物と長石)を含むものであり、一つはシリカ鉱物も準長石も含まない(したがって長石を多量に含む)ものであり、もう一つは準長石を含む(大部分の場合には、準長石と長石を両方含む)ものである。
 こうして、ふつうの火成岩は九つの種類に分けられたわけである。そのおのおのの種類にはいる火成岩は、組織や産出状態や成因はいろいろにちがっているかもしれないが、ほぼ同じような鉱物組成と化学組成をもっている。このような一群の火成岩のことを、一つのクラン(clan)に属しているということがある。
 次に、おのおののクランに属する火成岩は、組織によって、細粒、中粒、粗粒の三つに分けられる。ここで細粒および中粒とよばれるものは、斑状岩でその石基が細粒(ガラス質を含む)または中粒である場合を含んでいて、その斑晶の大きさとは無関係である。換言すれば、細粒、中粒、および粗粒岩というのは、古い記載的岩石学でそれぞれ火山岩、半深成岩、および深成岩などとよばれていたもののことである。
 この表18.1は、火成岩のごく普通の岩型を鉱物組成と組織だけで分類したもので、その点では完全に伝統的な記載的岩石学の範囲内でつくられている。火成岩の成因や岩石系列は、考慮されていない。ところが、実際に火成岩の研究をする場合には、そういう伝統的な記載的岩石学的な知識だけでは、役に立つ記載をすることさえもできかねる場合が多い。そこで、本章の次節から後では、火成岩の主な種類をひとつずつ記述するのであるが、表18.1とはちがって、岩石系列をもっと重視した分類法を用いることにする。岩石系列、あるいはそのほかの成因的な立場をとりいれた分類法は、記載的岩石学的な分類法ほど簡単明瞭ではない点がある。読者は、いろいろな立場からの分類を比較することによって、岩石の性質をよりよく理解されるであろう。
 アルカリ岩類と非アルカリ岩類との区別は、岩石系列の区分のなかでも最も大きい二分法である。すでに、図17.2(略)に示したように、アルカリ岩類と非アルカリ岩類のなかの多くは、SiO2とNa2O+K2Oを座標軸にとった図表上でちがった範囲におちる。したがって、そういう図表を使うと、いろいろなアルカリ岩と非アルカリ岩の名前の関係を、ある程度直観的にわかりやすく表現することができる。図18.1(略)は、そういう試みの一つである。
 玄武岩と安山岩は地球上に最も多量にある火山岩であるが、その間の境界は従来さまざまに定義されてきた。色指数40、37.5、35、30などの値が使われた。斜長石の平均組成がAn50よりもCaまたはNaに富むものという定義もかなり多くの人に使われた。SiO2含有量で定義するときには、表15.1に示したように、一般に52%が塩基性岩と中性岩の境とされてきているので、この値(あるいは52.5%)を玄武岩と安山岩の境にするのが普通である。図18.1(略)では、SiO2=53.5%を境にしてあるが、これは、玄武岩および安山岩という名前のもとにこれまでに記載されて来た岩石の区別になるべく一致するように境界のSiO2の値を選んだために起ったのである。』