石森(1999)による〔『博物館概論』(15-16、18-19p)から〕


4.登録博物館、博物館相当施設、博物館類似施設

 博物館は、制度上、「登録博物館」、「博物館に相当する施設」、「博物館類似施設」に区分されている。そのうち、博物館法で運営が厳密に条件づけられているのは「登録博物館」のみである。
 博物館法の適用を受ける「登録博物館」になるためには、つぎのような手続きを経て、博物館登録原簿に記載されることが必要である。まずはじめに、博物館設置申請者は、申請書を都道府県の教育委員会に提出しなければならない。ただし、設置申請ができるのは、地方公共団体、民法第34条の法人、宗教法人、または制令で定めるその他の法人でなければならない。したがって、個人や任意団体は博物館の設置申請ができないしくみになっている。また、国立博物館は、博物館法の制定時(1951年)に文化財保護委員会の所管であったために、原則としてこの法の外に置かれることになって、今日に至っている。
 都道府県の教育委員会は、設置申請書を受けつけたのちに、認可要件の審査を行う。認可の要件は、博物館の目的を達するのに必要な、@資料の整備、A館長・学芸員及び職員の確保、B建物及び土地の確保、C開館日数(1年間に150日以上)の充足などである。都道府県の教育委員会は、審査の結果、認可を行う場合には、博物館登録原簿に記載するとともに、申請者に通知することが義務づけられている。それによって、「登録博物館」が誕生する。
 私立博物館の場合には、登録博物館として認可されたならば、所得税、相続税、固定資産税など税制上の優遇措置を受けられるようになる。また、公立博物館の場合には、国からの補助金の交付などを受けられるようになる。1997年現在、全国の登録博物館数は、公立・私立を含めて、740館に及んでいる。
 「博物館相当施設」は、博物館の事業に類する事業を行う施設であり、博物館法第29条に規定がある。設置に当たっては、下記の5項目の指定要件を満たし、国立施設は文部大臣、国立施設以外は都道府県教育委員会の指定を受ける必要がある。指定要件は、登録博物館の登録要件に準じており、@博物館の事業に類する事業を達成するために必要な資料を整備していること、A博物館の事業に類する事業を達成するために必要な専用の施設及び設備を有すること、B学芸員に相当する職員がいること、C一般公衆の利用のために当該施設及び設備を公開すること、D一年を通じて100日以上開館すること、などである。1997年現在、博物館相当施設の指定を受けているのは、全国で257館あり、そのうち国立6館、公立85館、私立118館、大学附属48館である。
 「博物館類似施設」は、博物館法第3条1項に定める博物館の事業と同種の事業を行う施設である。ただし、博物館法には、博物館類似施設に関する規定はない。文部省は、3年ごとに行う社会教育調査の際に、下記の3条件を満たした施設を調査に加えている。それらの3条件とは、@動物園と植物園にあっては、およそ1,300m2以上の土地があるもの、A水族館にあっては、展示用水槽が4個以上でかつ水槽面積の合計が360m2以上である施設、Bそれ以外の施設にあっては、建物がおよそ132m2以上の延面積を有する施設、などである。1997年現在、博物館類似施設として把握されているのは、全国で2,452館あり、そのうち国立34館、公立1,685館、私立707館、大学附属26館である。』

6.博物館の分類

(1)博物館法による分類

 博物館は、さまざまな基準にもとづいて分類が可能である。たとえば、すでにみてきたように、博物館法では、「登録博物館」と「博物館に相当する施設」に分けられる。さらに、博物館法の対象とならないものは、便宜上、「博物館類似施設」と分類されている。

(2)資料の種類による分類
 「公立博物館の設置及び運営に関する基準」の定義によると、博物館が扱う資料の種類による分類では、つぎの3つの博物館に大別されている。
 @総合博物館:人文科学および自然科学の両分野にわたる資料を、総合的な立場から扱う博物館。
 A自然系博物館:自然界を構成している事物もしくはその変遷に関する資料または科学技術の基本原理もしくはその歴史に関する最新の成果を示す資料を扱う博物館。これは、さらに科学博物館動物園・植物園・水族園に分けることができる。
 B人文系博物館:考古、歴史、民族、造形、美術などの人間の生活および文化に関する資料を扱う博物館。これはさらに歴史博物館美術博物館に大別できる。

(3)資料の展示場所による分類
 @屋内展示型博物館:収集した資料を室内で展示している博物館。
 A屋外展示型博物館:家屋、彫刻、船舶、機械類など、大型資料を屋外で展示している博物館。
 B現地保存型博物館(野外博物館):資料を現地で保存し、展示に供している博物館。

(4)設立主体による分類
 設立主体(管理者)を基準にして分類すると、文部省などの各省庁が所管する「国立博物館」、地方自治体が設立管理する「公立博物館」、財団法人や宗教法人や企業や任意団体や個人などが設立する「私立博物館」に大別できる。

(5)博物館の機能による分類
 資料の「収集・保管」、「展示・教育」、「調査・研究」という、博物館の3つの機能や博物館の目的を基準にした分類も可能である。
 @全機能型博物館:資料の収集・保管、展示・教育、調査・研究のいずれに偏ることなく、すべてがバランスよく機能している博物館。
 A保存機能重視型博物館:新資料の収集よりも、既存資料の保存に重点をおく博物館。
 B教育機能重視型博物館:利用者に対する教育普及活動を重視する博物館。
 C研究機能重視型博物館:調査・研究機能を重視する博物館で、大学博物館や国立民族学博物館などにみられる。
 Dレクリエーション機能重視型博物館:博物館法に明記された博物館の目的の1つである利用者のレクリエーション活動に役だつことを重視した博物館。』



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