総務省統計局による産業連関表の『統計の概要』から


統計の概要

統計の目的
 産業連関表は、作成対象年次における我が国の経済構造を総体的に明らかにするとともに、経済波及効果分析や各種経済指標の基準改定を行うための基礎資料を提供することを目的に作成しています。

産業連関表とは
 産業連関表は、1936年アメリカの経済学者W.W.レオンチェフ博士によって考案され、産業連関分析による経済予測等について、精度の高さと有用性が認められたことから、広く世界で使われるようになりました。彼は、その功績により1973年にノーベル経済学賞を受賞しました。
 産業連関表は、一定期間(通常1年間)において、財・サービスが各産業部門間でどのように生産され、販売されたかについて、行列(マトリックス)の形で一覧表にとりまとめたものです。
 ある1つの産業部門は、他の産業部門から原材料や燃料などを購入し、これを加工して別の財・サービスを生産し、さらにそれを別の産業部門に対して販売します。購入した産業部門は、それらを原材料等として、また、別の財・サービスを生産します。このような財・サービスの「購入→生産→販売」という連鎖的なつながりを表したのが産業連関表です。
 産業連関表の仕組みを利用して、ある産業に新たな需要が発生した場合にどういう形で生産が波及していくのかを計算することができます。
 現在、わが国では、10府省庁の共同作業による産業連関表(全国を対象としていることから「全国表」ともいう)を5年ごとに作成しているほか、地域産業連関表(日本を9つの地域に分割した各地域を対象に、経済産業省が5年ごとに作成)、都道府県・市産業連関表(都道府県・市を対象に、都道府県・市がおおむね5年ごとに作成)、延長産業連関表(全国表をベンチマークとして直近の産業構造を推計したもので、経済産業省が毎年作成)、国際産業連関表(国際間取引を詳細に記述したもので、経済産業省やアジア経済研究所が作成)、各種分析用産業連関表(分析目的に応じて各機関が作成)など、それぞれの目的に応じた多くの産業連関表が作成され、各界、各層に幅広く利用されています。

統計の沿革
 わが国における産業連関表は、経済審議庁(現内閣府)と通商産業省(現経済産業省)がそれぞれ独自に試算表として作成した昭和26年を対象年次とするものが最初でした。
 その後、関係府省において統一的な産業連関表を作成することが望ましいとする統計審議会の答申を受け、昭和30年表から、行政管理庁(現総務省)、経済企画庁(現内閣府)、農林省(現農林水産省)、通商産業省及び建設省(現国土交通省)の5省庁と集計・製表を担当する総理府統計局(現総務省統計局)を加えた6省庁による本格的な共同の作成作業が開始されました。その後、昭和35年表から運輸省(現国土交通省)及び労働省(現厚生労働省)が、昭和50年表から大蔵省(現財務省)、文部省(現文部科学省)、厚生省(現厚生労働省)及び郵政省(現総務省)の4省が作成作業に参加し、平成13年1月の省庁再編(環境省、金融庁が新たに参加)を経て、現在は10府省庁による共同作業により、産業連関表が作成されています。

参 考
産業連関表の構造と見方(PDF:420KB) 【見る→
国民経済計算体系における産業連関表(PDF:296KB)
産業連関表の沿革と我が国における作成状況(PDF:261KB)
産業連関表の見直しの変遷(PDF:387KB)


産業連関表の仕組み
1 産業連関表の構造

 産業連関表(取引基本表)を縦(列)方向に見ると、財・サービスの生産にあたって投入された原材料及び粗付加価値の構成が示されており、横(行)方向に見ると、生産された財・サービスの販売(産出)先の構成が示されています。

2 産業連関表の見方
 産業連関表は通常、取引基本表、投入係数表、逆行列係数表等からなっています。
 以下に模式化した表で説明します。

(1)取引基本表
 A産業の構造は、以下のとおりとなっています。
列(縦)方向:
A産業(列)の生産額(300億円)は、原材料等としてA産業(行)から30億円、B産業(行)から60億円を購入(投入)したものと、粗付加価値は210億円からなっています。
行(横)方向:
A産業(行)で生産(300億円)されたものは、原材料等としてA産業(列)へ30億円、B産業(列)へ150億円販売し、最終需要には120億円販売しています。
 なお、列方向と行方向の合計額は一致し、当該産業の生産額に等しくなっています。



(2)投入係数表
 投入係数とは、取引基本表の中間需要の列ごとに、原材料等の投入額を当該産業の生産額で除して得られる係数であり、ある産業において1単位の生産を行う時に必要な原材料等の単位を示したものです。投入係数を産業別に一覧表にしたものが投入係数表です。
 上記の第1表の事例から算出される投入係数表は、第2表のとおりです。



(3)逆行列係数表
 逆行列係数とは、ある産業に対して1単位の最終需要があった場合、各産業の生産が究極的にどれだけ必要となるか、つまり、直接・間接の究極的な生産波及の大きさを示す係数のことをいい、産業別に一覧表にした逆行列係数表は、第3表のとおりです。
 生産波及について、第2表を用いて説明すると、以下のとおりとなります。
a A産業に対して1単位の最終需要があった場合、まず、A産業の生産を1単位増加する必要があります。
b A産業の生産を1単位増加させるために必要な原材料投入の額は、第2表からA産業が0.1、B産業が0.2と求められます(第1次生産波及)。
c 第1次生産波及で発生したA産業0.1、B産業0.2の生産増のために必要な原材料投入の額は、第2表からA産業が0.07、B産業0.12と求められます(第2次生産波及)。
d 以降、第3次、第4次と、投入係数を介しての生産波及が続いていきます。
 上記のaからdを、式で表すと以下のとおりとなります。

最終需要 + 第1次生産波及 + 第2次生産波及 + 第3次生産波及 + ・・・
= F + A × F + A2 × F + A3 × F + ・・・ (F:最終需要、A:投入係数)

 投入係数が0<A<1のため、上記の式は、以下のとおり、変形することができます。
 F + A × F + A2 × F + A3 × F + ・・・= (I − A)-1 × F (I:単位行列) 

 上記の式の( I - A )-1 が逆行列係数であり、究極的な生産波及の大きさは「逆行列係数」×「最終需要」で求められることが分かります。


 第3表から、A産業に対して1単位の最終需要があった場合の究極的な生産波及の大きさは、A産業が1.282、B産業が0.513 の計1.795と求められます。

3 経済波及効果について
 上記2のとおり、逆行列係数表を用いて、最終需要から派生する国内生産の波及効果の状況をみることが可能です。
 平成17年産業連関表(速報)では、13部門、34部門、108部門の逆行列係数表を作成しています。

 ご参考までに、34部門の逆行列係数表を用いた簡単な分析シートを作成しました(下記のリンク先参照)ので、ご利用ください。

経済波及効果を計算してみましょう(平成17年産業連関表(確報)逆行列係数表(34部門別))


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