植田(1996)による〔『環境経済学』(209-212p)から〕


『 環境経済学は比較的若い生成期の学問であり、その対象やアプローチの方法も多様に広がりつつ展開されているのが現状である。また、環境経済学の理論や政策は、常に現実から挑戦を受け発展するという側面をもっている。それゆえ、ごみ問題から地球環境問題まで、いわゆる環境問題を経済学の立場から具体的に分析したり対策を提言したりした書物を、あわせてひもとくことを薦めたい。ただ、本リーディングリストは邦語文献に限っているが、残念ながら、日本人の経済学者によるまとまった環境経済学の出版物はまだそれほど多くはない。

 環境経済学が扱う問題領域を鳥瞰図的に理解するための入門書としては、
(1)植田和弘監修『地球環境キーワード 環境経済学で読み解く』有斐閣、1994年。
がある。
 また、環境経済学の多様な方法論を勉強するには、
(2)植田和弘・落合仁司・北畠佳房・寺西俊一『環境経済学』有斐閣、1991年。
が、概括的なスケッチを与えていて便利である。

 本書と同レベルの標準的なテキストは、日本人の著者になるものは見当たらない。参考になる書物をあげれば、
(3)D.ピアス他/和田憲昌訳『新しい環境経済学』ダイヤモンド社、1994年。
(4)E.J.ミシャン/都留重人監訳『経済成長の代価』岩波書店、1971年。
(5)A.V.クネーゼ他/宮永昌男訳『環境容量の経済理論』所書店、1974年。
(6)P.W.バークレイ他/篠原泰三監修、白井義彦訳『環境経済学入門』東京大学出版会、1975年。
(7)M.エデル/南部鶴彦訳『環境の経済学』東洋経済新報社、1981年。
(8)P.ネイカンプ/藤岡明房他監訳『環境経済学の理論と応用』勁草書房、1985年。
がある。

 「法と経済」からのアプローチの、より進んだレベルは、以下の書物を参照されたい。
(9)R.コース他/松浦好治編訳『「法と経済学」の原点』木鐸社、1994年。
(10)浜田宏一『損害賠償の経済分析』東京大学出版会、1977年。
(11)G.カラブレイジ/小林秀文訳『事故の費用』信山社出版、1993年。

 いわゆるエコロジー経済学については、
(12)J.マルチネス=アリエ/工藤秀明訳『エコロジー経済学』HBJ出版局、1991年。
(13)N.ジョージェスク=レーゲン/高橋正立他訳『エントロピー法則と経済過程』みすず書房、1993年。
(14)室田武『エネルギーとエントロピーの経済学』東洋経済新報社、1979年。
(15)鷲田豊明『エコロジーの経済理論』日本評論社、1994年。
(16)玉野井芳郎『生命系の経済に向けて』(玉野井芳郎著作集2)学陽書房、1990年。

 政治経済学的アプローチからの到達点を示すものとしては、
(17)都留重人『公害の政治経済学』岩波書店、1972年。
(18)宮本憲一『環境経済学』岩波書店、1989年。
(19)K.W.カップ/篠原泰三訳『私的企業と社会的費用』岩波書店、1959年。
(20)K.W.カップ/柴田徳衛・鈴木正俊訳『環境破壊と社会的費用』岩波書店、1975年。
がある。

 第3章「環境・経済統合勘定」に参考になる文献に、次のものがある。
(21)国際連合『国民経済計算ハンドブック 環境・経済統合勘定』経済企画庁経済研究所国民所得部、1995年。
(22)桂木健次『環境経済学の研究』松香堂、1996年。

 第4章にかかわる開発プロジェクトの評価、費用便益分析については、次の文献が参考になる。
(23)J.ティンバーゲン/尾上久雄訳『経済開発の設計』有斐閣、1985年。
(24)A.K.ダスグプタ他/尾上久雄他訳『コスト・ベネフィット分析』中央経済社、1975年。

 第5章で述べた環境の価値評価についてより深く学ぶには、次の書物に取り組まれたい。
(25)P.O.ヨハンソン/嘉田良平監訳『環境評価の経済学』多賀出版、1994年。
(26)J.ディクソン他/長谷川弘訳『環境はいくらか』築地書館、1991年。
(27)嘉田良平他『農林業の外部経済効果と環境農業政策』多賀出版、1995年。

 第6章および第7章で述べた環境政策の経済的手段についてより進んだ分析は、
(28)柴田弘文・柴田愛子『公共経済学』東洋経済新報社、1988年。
(29)岸本哲也『公共経済学』有斐閣、1986年。
(30)石弘光編、環境税研究会『環境税』東洋経済新報社、1993年。
(31)OECD/石弘光監訳『環境と税制』有斐閣、1994年。

 また、経済的手段の理論と実際に関するより包括的な解説は、
(32)植田和弘・新澤秀則・岡敏弘「環境政策の経済学」『経済セミナー』(1995年4月号〜1996年5月号)日本評論社。
がある。

 以下、第8〜11章にかかわって、また個別の環境問題を経済学の立場から具体的に分析したもので、参照されたい文献をあげておく。
(33)宇沢弘文『地球温暖化の経済学』岩波書店、1995年。
(34)宇沢弘文『自動車の社会的費用』岩波書店、1974年。
(35)宇沢弘文/茂木愛一郎編『社会的共通資本 コモンズと都市』東京大学出版会、1994年。
(36)中西準子『環境リスク論』岩波書店、1995年。
(37)永田信也『森林資源の利用と再生』農文協、1994年。
(38)鷲田豊明『環境とエネルギーの経済分析』白桃書房、1992年。
(39)植田和弘『廃棄物とリサイクルの経済学』有斐閣、1992年。
(40)寺西俊一『地球環境問題の政治経済学』東洋経済新報社、1992年。
(41)慶應義塾大学経済学部環境プロジェクト編『持続可能性の経済学』慶應義塾大学出版会、1996年。
(42)慶應義塾大学経済学部環境プロジェクト編『地球環境経済論(上・下)』慶應通信、1994〜95年。
(43)小島麗逸・藤崎成昭他編『開発と環境』(シリーズ@〜E)アジア経済研究所、1993〜94年。
(44)大来佐武郎監修『地球環境と経済』中央法規出版、1990年。
(45)OECD編/環境庁地球環境部監訳『貿易と環境』中央法規出版、1995年。
(46)U.E.ジモニス編著/宮崎修行訳『エコノミーとエコロジー』創成社、1995年。
(47)E.U.von ワイツゼッカー/宮本憲一他監訳『地球環境政策』有斐閣、1994年。
(48)世界資源研究所編、R.レペット他/飯野靖四監訳『緑の料金』中央法規出版、1994年。
(49)F.ケアンクロス/東京海上火災保険グリーンコミッティ訳『地球環境と成長』東洋経済新報社、1992年。
(50)黒田洋一・F.ネクトゥー『熱帯林破壊と日本の木材貿易』築地書館、1989年。
(51)環境と開発に関する世界委員会/環境庁訳、大来佐武郎監修『地球の未来を守るために』福武書店、1987年。
(52)L.R.ブラウン編著『ワールド・ウォッチ地球白書』各年版、ダイヤモンド社。

 その他、環境問題を解説したものとして、次のものがあげられる。
(53)環境庁地球環境部編『改訂 地球環境キーワード事典』中央法規出版、1993年。
(54)環境庁編『環境白書』大蔵省印刷局、毎年。』