T 鉱物学入門
1 鉱物の調べ方
2 鉱物のでき方と産状
3 フィールドでどこまで種類がわかるか
U 鉱物カタログ
V フィールドガイド
フィールドで使う道具
索引
あとがき
『3 フィールドでどこまで種類がわかるか
鉱物種類は、化学組成と原子配列で決まるので、フィールドでの観察からだけでは種類の決定(鑑定)はできない。そういう意味からいうと、絵合せが主になっている図鑑は鑑定という点ではほとんど無力である。しかし、産状や物理的性質を詳細に検討し、図鑑に出ているような特徴的な外観を見つけだせれば、その種類を推定することができる。
フィールドでは簡単な器具しかもっていけないし、室内でのチェックでも、専門家でもない限り高価な測定機器は使えないことを前提に考えなければならない。
光沢、色、条痕色は、U章をみるとして、ここでは硬度、磁性、劈開、蛍光、希塩酸によるテストについて簡単に紹介しよう。
硬度
鉱物を互いにこすりあわせてどちらに傷がつくかを調べる。傷をつけてもよいような塊であること。粉状、繊維状、針状のものは正確な硬度はわからない。モースの硬度計(太字の鉱物)以外に、補助的にナイフ、釘(5.5)、なども使える。
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8.5以上 | ダイヤモンド(10)、コランダム(9)、金緑石(8.5) |
8 | トパズ |
8〜7 | スピネル、ジルコン、緑柱石、菫青石、紅柱石、ダンブリ石、鉄ばんざくろ石 |
7 | 石英、電気石 |
7〜6 | 黄鉄鉱、錫石、かんらん石、ブラウン鉱、斧石、灰ばんざくろ石、緑簾石、輝石、角閃石、ばら輝石、イネス石 |
6 | 正長石、斜長石 |
6〜5 | 輝コバルト鉱、硫砒鉄鉱、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、赤鉄鉱、オパル、紅簾石、方沸石 |
5 | 燐灰石 |
5〜4 | 自然白金、磁硫鉄鉱、灰重石、珪灰石、ソーダ沸石、湯河原沸石、菱沸石 |
4 | 蛍石 |
4〜3 | 閃亜鉛鉱、黄銅鉱、赤銅鉱、菱マンガン鉱、あられ石、白鉛鉱、藍銅鉱、孔雀石、重晶石、緑鉛鉱、束沸石 |
3 | 方解石 |
3〜2 | 自然金、自然銀、自然銅、輝安鉱、方鉛鉱、辰砂、アルチニー石、鉄明ばん石、雲母、緑泥石、琥珀(こはく) |
2 | 石膏、岩塩 |
2未満 | 硫黄(2〜1.5)、鶏冠石(2〜1.5)、石黄(2〜1.5)、石墨(1.5)、輝水鉛鉱(1.5)、葉ろう石(1.5)、滑石(1) |
強磁性のおもな鉱物 | 自然鉄、自然ニッケル、磁鉄鉱、ヤコブス鉱、磁硫鉄鉱、トロイリ鉱、磁赤鉄鉱、磐城鉱 |
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三方向以上あるもの | 閃亜鉛鉱、方鉛鉱、閃マンガン鉱、蛍石、岩塩、方解石、硬石膏 |
二方向あるもの | 藍銅鉱、輝石(ほぼ直交する劈開面)、角閃石(約120゜で交わる劈開面)、珪灰石、ばら輝石、長石 |
一方向あるもの | 石墨、輝水鉛鉱、銅藍、輝安鉱、石黄、水滑石、石膏、雲母、緑泥石、蛇紋石、ぶどう石、トパズ、魚眼石、滑石、輝沸石 |
ほとんどないもの | 自然金、硫黄、黄銅鉱、黄鉄鉱、錫石、磁鉄鉱、赤鉄鉱、燐灰石、石英、かんらん石、ざくろ石、電気石、方沸石、菱沸石、かすみ石 |
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灰重石(青白)、玉滴石(一種のオパル)(緑)、燐灰ウラン鉱(黄緑)、マラヤ石(黄緑) |
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泡(炭酸ガス)を出して溶ける | 炭酸基([CO3]2-)を含む多くの鉱物(方解石、菱マンガン鉱、孔雀石など) |
泡は出さないが溶ける |
元素鉱物(自然鉄、自然蒼鉛など) 酸化鉱物の一部(赤銅鉱、針鉄鉱など) ホウ酸塩鉱物の多く 硫酸塩鉱物の多く(青鉛鉱、石膏、ブロシャン銅鉱など) 燐酸、砒酸塩鉱物の多く(藍鉄鉱、コバルト華など) 珪酸塩鉱物の一部(沸石の多く、かすみ石、柱石、ぶどう石、魚眼石、ダトー石など) |
悪臭(硫化水素)を出しながら溶ける | 辰砂、輝水鉛鉱などをのぞく硫化鉱物のほとんど、珪酸塩鉱物の一部(ヘルバイト、青金石など) |
反応しない | 貴金属の元素鉱物、酸化鉱物や珪酸塩鉱物の多く |