根岸敏雄(2006):石油生産量はピークに来たのか?−ピークオイルの本質と21世紀のエネルギー−.石油文化社(幸書房 発売)、189p.

目次


X.まとめ
1.ピークオイルに来ているのか? 156
2.石油資源は有限である 157
3.埋蔵量増加の努力も重要 161
4.石油代替エネルギーへの速やかな転換 163
5.輸送用燃料の代替がキー

164
6.省エネルギーと環境問題

165
7.ベストエネルギーミックスによる石油需要の軟着陸 166

7.ベストエネルギーミックスによる石油需要の軟着陸
 限られた化石エネルギーを大事に使うためには(いわゆるNoble Use)、省エネルギーとエネルギー源毎の最適な用途の振り分けが重要である−ベストエネルギーミックス。天然ガス、石炭、新エネルギーを上手く使い分けて行けば、石油資源の枯渇までにはまだ時間も十分にあるので、石油資源を温存しながら、大きな混乱もなく次世代のエネルギーに繋いで行けるであろう。
 化石エネルギーはいずれは枯渇する。新エネルギー(水素、太陽光、太陽熱、風力、バイオマスなど)の利用開発は環境との調和のためにも当然だが、化石エネルギーに取って代わるだけの容量はない。化石エネルギーが減退に向かう21世紀後半のエネルギーの供給源を、Salvador(2005)は石炭に、Edwards(2005)は太陽光や地熱や水素などの自然エネルギーや新エネルギーで賄うことにしている。特にEdwards(2005)は、2100年のエネルギー需要の半分をこれら新エネルギーで賄うとしているが、その実現のためにはさらなる技術開発が必要である。
 原子力は人類の救いの神でもあれば悪魔でもある。現在はチェルノブイリの原子力発電所の事故後、原子力の利用は制限されている。しかし核融合発電など原子力の安全性が確保され、原子力廃棄物の処理方法が確立されれば、化石燃料の枯渇が近づけばもとより、それ以前でも化石燃料による環境問題が深刻になってくれば、原子力利用の必要性が再認識されてくると思われるが、現時点で原子力の拡大を予測することはできない。その場合は環境問題の解決を前提に、まだR/Pが100年以上ある石炭復権のシナリオが有望になるのかも知れない。
 結局、結論は、K.M.Hubbertが50年前に言いたかったことと同じになった。すなわち、“石油の終わりはいずれ来る、だから石油から代替エネルギーへの軟着陸の準備をすべきだ”であったが、50年経った現在がまさにその時だと言うことではないだろうか。そして世界はすでに石油からの燃料転換を始めているし、さらに環境と言う要素が加わって、エネルギー需要のベストエネルギーミックスの方向は加速されて行くと思われる。


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