熊澤・丸山(編)(2002)による〔『プルームテクトニクスと全地球史解読』(363p)から〕


第3部 全地球ダイナミクスへ向けて

3−5 自然環境と地球のダイナミクス

 21世紀の科学発展の中で重要な役割を担って行くのが環境科学である。これまでの地球表層環境の変動に関する研究は、時間尺度の長い固体地球の変動とは無関係に、大気と海洋や、太陽放射の地球への入射量の変動など、主に比較的時間尺度の短い現象との関連でなされてきた。分野としての環境科学の成立は、自然環境を科学の対象として扱う立場と、汚染や温暖化など人間活動が関わる問題の理解と解決を目指す立場の融合によるものであろう。しかし自然科学のほとんどの分野は、もともと原理面からの環境の理解と利用という実利面が密着して発展してきたものであるから、上の二つの立場は、本来は一つのものが、歴史的に別の立場のように見えていただけなのである。
 産業革命以降の二酸化炭素の増加が地球温暖化の原因になっているという指摘がなされるが、人類の化石燃料消費とはまったく無関係な時期にも二酸化炭素ガスの増加と急激な温暖化が生じたことがある。そのメカニズム研究の現状の解説が多田論文によって解説される。このような事実の理解は、実利的環境問題対応の検討にも非常に大事である。
 プルームの活動は、表層環境とその変動にも大きな効果をもっている。二酸化炭素などの揮発性元素に富んだプルームが地表にマグマを供給すると、短期間大気組成とそれに伴う表層環境が大きく変化する。過去6億年にわたる地球表層環境史が川幡によってまとめられ、プルームの活動史と比較検討される。全地球史解読は、太古代に遡る全地球史に焦点を合わせていたが、過去2億年までの地球の変動史の記録は、現在まだ深海底にある堆積物を掘削によって採取して解読できる。このようなアプローチはODP(海底掘削計画)として、1960年ごろからアメリカのスクリップス海洋研究所とラモント地質学研究所で組織的に行われてきた。特に近年になって、比較的最近の過去の地球変動理解が、当面の近未来の環境問題対応に決定的な重要性をもつことが広く認識されてきた。日本も遅ればせながら最新のテクノロジーを駆使して、この分野の躍進をはかろうとしている。その構想や意義を平らは解説している。
 火山活動や地震発生は、特に日本列島のような変動帯では、われわれにとって目前の大きな自然環境問題の一つである。その理解の進展に加えて社会的対応も昨今急速に進展しつつある。「科学」にもこの分野の寄稿があるが、基礎的な研究の例として、市原は発泡するマグマの振動を地震学的手法で調べている。亀・山下は大きな地震よりも圧倒的に小さな地震が多い理由を考察している。地震への対応を検討するという実利面でも、こうした原理的な理解が必要不可欠である。特に地震発生に関しては、あとがきでも最近の理解について捕捉する。』


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