第7章 途上国の長期化する資源紛争の構造(253-292p)
 [石油とダイヤモンドが「豊かな」アンゴラの悲劇]
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| コロンビア: 石油 | 1992年からバーレル当たり1ドル以上の「戦争税」が外国の石油企業に課せられ、反政府軍の攻撃から石油施設を守る軍隊の資金源となった。オキシデンタル石油社は軍隊に直接の費用も払っている。一方、ゲリラグループは石油企業から1億4000万ドル以上もの略奪を行っている。石油はコロンビアの最大の輸出産品になったが、大多数の人はほとんど恩恵を得ておらず、ウワ族などの先住民族は石油産業による生活環境への侵略を恐れている。石油プロジェクトへの抗議行動は軍隊によって抑圧されている・ | 
| スーダン: 石油 | 1980年に石油が発見された後、政府が和平を破棄、83年に内戦が再開して以降、200万人以上が死亡し、100万人が難民になり、450万人が立ち退かされた。99年に始まった石油輸出が現在も紛争を拡大させている。石油収入は武器輸入に使われ、軍事支出を3倍にするのに貢献している。石油産業の道路と滑走路は軍隊に用いられている。南部の石油の豊富な地域の人口を減らすために、政府軍は村々を爆撃し、収穫物を徹底的に荒し、家畜を略奪し、各党派に武器を提供することで部族間の戦闘状態を助長している。反対派の軍は石油施設を攻撃目標にしている。 | 
| チャドと カメルーン: 石油 | 2003年に石油生産が始まる予定のチャドのドーバ地域での反乱の鎮圧で数百名が死亡した。2000年にはチャド政府はエクソンモービル社、シェブロン社、ペトロナス社からの2500万ドルの「ボーナス」の一部を武器購入に費やした。同地域からカメルーンの海岸までのパイプラインの建設によってバッカ・ピグミー族の土地が脅かされ、大西洋岸の熱帯雨林地域で密猟と野放しの伐採が横行するであろう。 | 
| アフガニスタン: エメラルド、瑠璃、アヘン、ヘロイン | アヘンの密輸はソ連軍との戦闘の後、ムジャヒディン党派間内戦の資金源の一部となった。1990年代半ばから続く内戦下のタリバーン政権には、アヘンは年間で最大5000万ドルに達する極めて重要な資金源となった。アヘンの生産量は1970年代の10トンから1989年の1200トンにまで急上昇し、99年の4600トンにいたっている。国際社会の圧力によってタリバーン政権は2000年7月にケシ栽培を禁止したが、2001年10月のアメリカの攻撃の後に禁止を解除した。パキスタンへの木材輸出には25%の税金が課せられている。反対派の北部同盟は、収入の大半の年間6000万ドルをエメラルドと瑠璃(淡青色の半宝石)の販売から得ている。 | 
| カンボジア: サファイア、ルビー、木材 | 1989年に中国からの援助が途絶えた後、クメール・ルージュ反政府軍は軍事行動の資金源を資源の略奪に頼った。クメール・ルージュは領土内での採掘権と伐採権をタイの企業に売ることで、1990年代前半には、年間1億2000万〜2億4000万ドルの収入を得ていた。しかし95年以降は宝石の枯渇とタイ政府の木材貿易の制限により急激な収入減少に見舞われて、クメール・ルージュは弱体化した。カンボジア政府は1990年代半ばには、ベトナム人伐採業者へ木材伐採権を売る違法な秘密協定を結び、毎年1億ドルを得ていた。しかし、森林破壊が広がるにつれて、収入は2000万ドルを切っている。 | 
| 注:(1)この章で詳細に議論するアンゴラ、シエラレオネ、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、インドネシア、パプアニューギニアの紛争はこの表には記載していない。 出所:巻末原注の349ページの3.を参照。 | |
◆資源と紛争のあいだの関係
 [「イデオロギー闘争」から「資源紛争」へ]
 [大金は特権階級へ、暴力と破壊は貧しい人々へ]
 [原料を確保するため、産業界が介入する可能性]
◆資源をめぐる紛争の分析
 [冷戦が終わったあとの「紛争の力学」]
 [住民の支持を得るよりも、少年は少年兵に、少女は性的奴隷に]
 [一見して異常だが、「紛争長期化の論理」に基づく]
 [資源が紛争をまねきやすい国]
 [政府をあやつる「影の国家」]
 [分断支配を画策する中央政府]
 [傭兵−政府−多国籍企業]
 [推定概算で5億5000万丁の小型武器が世界に]
 [多くの流血を経た資源が密輸ネットワークから豊かな国へ]
 [限りなく灰色の企業活動もある]
◆自然資源の略奪はいかにして紛争の資金源となるか
 [「紛争の原因は一から十まですべてダイヤモンドなのだ」−シエラレオネのカマラ国連大使]
 [平和の訪れない国]
 [昼は正規兵、夜は反乱兵]
 [リベリアの関与−国連の調査パネルが報告]
 [コンゴ民主共和国でも資源が略奪された]
 [派兵費用を略奪資源の輸出収入で賄うことも可能]
 [「需要」という紛争責任者]
 [紛争が続くアンゴラがコンゴ内戦に首を突っこむ]
 [アンゴラの反政府勢力のダイヤモンド・ビジネス]
 [密輸ルートをダイヤと武器が行き交う]
 [石油資源を支配するアンゴラ政府と世界的石油会社の関係]
◆資源開発はいかにして紛争を引き起こすか
 [インドネシアのアチェ州の事例]
 [1976年、アチェ自由運動蜂起]
 [イリアンジャヤ州でのアメリカに本社のあるフリーポート社の露天掘り金鉱]
 [資源の豊かな地域の分離独立運動]
 [ブーゲンビル島でのロンドンに本社のあるリオ・ティント社の露天掘り銅鉱山]
 [ナイジェリア−多国籍石油企業−ケン・サロウィワの処刑]
 [「何も知らない」先進国の消費者と紛争との関係]
◆制裁と認証システム、そして経済の多角化
 [原産地証明でコンフリクト・ダイヤモンドの流通を防ぐ]
 [それでも密輸ネットワークで先進国へ]
 [グローバル・スタンダードとしての認証システムを]
 [需要サイドのさまざまな「紛争への責任」]
 [ダイヤの独占的企業、デ・ビアス社へのNGOの一撃]
 [武器の拡散防止のための国際的協調にブッシュ政権が「ノー」]
 [国連平和維持活動の強化]
 [資源に恵まれた途上国に紛争をまねかないための持続可能な開発]