国際エネルギー機関(1999)による〔『新エネルギーの国際戦略・T(総括編)』(65-68p)から〕
『(1)バイオマス
バイオマスと廃棄物は、水力以外の再生可能エネルギー供給のもっとも大きい部分を占め、その50%近くが米国でのバイオマス利用である。図5に1995年のバイオマスおよびその他再生可能エネルギーの絶対利用量および相対的な割合を示す。水力以外の再生可能エネルギー利用のうち、バイオマスが80%以上を占めているのは12か国、残りの3か国も50%以上であることから、大多数の国で、水力以外の再生可能エネルギーの分類中でもっとも利用量の多いのがバイオマスであることは、明らかである。
表7 IEA加盟国におけるバイオマス国内生産量 製品分類別 1995年 (ktoe)
|
|
木質 |
植物廃棄物 |
黒液 |
動物性およびその他(1) |
バイオガス |
|
オーストラリア |
1,951.0 |
2,072.5(2) |
204.2 |
0.0 |
78.8 |
|
オーストリア |
1,848.1 |
386.6 |
332.5 |
0.0 |
0.0 |
|
ベルギー |
176.3 |
16.9 |
30.2 |
0.0 |
7.1 |
|
カナダ |
1,920.6 |
3,190.7 |
5,329.0 |
0.0 |
0.0 |
|
デンマーク |
200.9 |
547.5 |
0.0 |
5.8 |
42.1 |
|
フィンランド |
819.4 |
1,079.4 |
2,693.0 |
155.2 |
0.0 |
|
フランス |
7,514.8 |
75.9 |
1,065.0 |
0.0 |
31.0 |
|
ドイツ |
955.2 |
238.8 |
119.5 |
0.0 |
144.9 |
|
ギリシャ |
462.8 |
119.3 |
0.0 |
0.0 |
2.9 |
|
アイルランド |
39.8 |
118.5 |
0.0 |
0.0 |
3.6 |
|
イタリア |
n/a |
n/a |
n/a |
1,208.5(3) |
13.3 |
|
日本 |
n/a |
n/a |
6,181.7 |
249.6 |
0.0 |
|
ルクセンブルク |
15.4 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.8 |
|
オランダ |
168.4 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
106.6 |
|
ニュージーランド |
150.4 |
88.5 |
506.6 |
0.0 |
38.9 |
|
ノルウェー |
823.9 |
3.5 |
215.9 |
0.0 |
15.4 |
|
ポルトガル |
955.2 |
0.0 |
143.3 |
0.0 |
0.5 |
|
スペイン |
1,792.2 |
731.6 |
626.9 |
0.0 |
53.1 |
|
スウェーデン |
940.9 |
25,390.2 |
2,954.0 |
72.4 |
28.7 |
|
スイス |
466.9 |
69.0 |
0.0 |
0.0 |
52.1 |
|
トルコ |
5,449.9 |
389.8 |
0.0 |
1,165.6 |
0.0 |
|
英国 |
165.4 |
114.7 |
0.0 |
65.4 |
341.6 |
|
米国 |
15,343.0 |
23,800.9 |
18,196.7 |
0.0 |
3,662.7 |
|
IEA加盟国全体 |
42,160.5 |
35,583.2 |
38,598.3 |
2,922.5 |
4,624.1 |
(1) エネルギー用途のバイオアルコールとバイオエステル、動物の生成物および排出物、その他不明のバイオマス生成物。
(2) オーストラリアのみバガスを含む。
(3) 輸入を含む。 |
IEA加盟国全体でみると、再生可能エネルギー源に占める割合がもっとも大きいのはバイオマスと廃棄物であり、他の水力以外の再生可能エネルギーを引き離している。1995年の供給量は141Mtoe(表4:略)で、同年のコークス炭からのエネルギー利用より7.5%多い。バイオマス利用に関する数値が近年上昇したのは、データの報告、収集方法が改善されたことも一部反映しているが、実際にバイオマスの利用方法のなかには、10年ほど前から急速に利用量が増えたものもある。たとえば、IEA加盟国のうちでバイオマス利用がもっとも多い米国では、1978年の「公益事業規制法」(PURPA)制定以来、バイオマスからの発電量が一挙に伸びた。同法は、公益事業が発電を肩代わりさせることにより回避できるコストで、資格を取得している施設から、再生可能エネルギーからの電力を購入することを義務づけるものであった。1994年の、木質燃料発電プラントの設備容量は、全米合わせて6GWを超えていた。フランスも、バイオマス利用が多く、主に住宅用部門に使われている。カナダ、スウェーデンでは、産業部門でのバイオマス利用がかなりの量になっている。このほかの、ルクセンブルクを除くIEA加盟国すべてに、バイオマス利用は分布している。ルクセンブルクからも、廃棄物の利用は報告されている。
IEA加盟国全体を通して、バイオマス利用の大部分は木質である(表7)。とりわけ、オーストリア、フランス、ドイツ、ノルウェー、ポルトガル、スイス、トルコでは大きな割合を占めている。他に、バイオマス・エネルギー源には、植物廃棄物、エネルギー利用作物、わら、バガス、黒液、「その他」(動物性、特定できないもの)、バイオマス・ガスが入る。黒液は、製紙産業の副産物であり、1995年のバイオマス利用に占める割合が多いのは、日本96%、ニュージーランド65%、カナダおよびフィンランド50%、40%を超えるスウェーデンの各国である。
1995年のバイオマス総利用量のうち、66%(78.7Mtoe)が直接利用であった。直接利用の大部分は、住宅用部門(41.3Mtoe)または産業部門(33.8Mtoe)であり、大口利用者は製紙、パルプ、木材製品の製造業である。2.3Mtoeが商業部門、公共施設、農業用途に利用されている。これ以外のバイオマス利用のほとんどは、発電と熱生産の間接利用であった。1995年に、バイオマスからの発電量は72.9TWh(主に自家発電業者)、同じく熱生産量は125PJ(主に公共の熱供給システム)であった。
バイオマスからの発電、熱生産ともに、少数の国に片寄っている。バイオマスからの総発電量のうち、米国が55.7%近く、日本が14.5%である。熱生産の方が、絶対生産量でみれば、もう少し広く分布しており、IEA加盟国全体の総生産量に対してスウェーデンが38.2%、ドイツが30.4%、米国が15.4%となっている。しかし、一国内の発電と熱生産にそれぞれバイオマスが利用されている相対的割合には大きなばらつきがある。IEA加盟国の大半で、バイオマスからの発電(16か国)および熱生産(13か国)が1%未満にとどまる一方で、フィンランドでは総発電量のうち10.3%を、スウェーデンでは熱総生産量のうち30.8%をバイオマス利用で賄っている。』
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