三島慎一郎・神山和則(2010):近年の日本・都道府県における窒素・リン酸フローと余剰窒素・リン酸の傾向に関する算出方法とデータベースおよび運用例農環研報27、117-139.


(要旨)
 本稿ではアンケートデータや統計データから農業生産に関る窒素・リン酸収支を求めるための方法を確立し、算出結果を表計算ソフト上に収録しデータベース化を行った。ここには、都道府県ごとに、耕種として水田・畑・野菜・果樹・茶・飼料作物に関して生産のために投入される窒素・リン酸と作物生産量、収支が収録されている。また蓄種に関しては家畜ふん尿窒素・リン酸の排泄量、堆肥としての利用量、廃棄量、堆肥化過程の窒素消失量を収録している。都道府県を単位として、作目・農業生産全体での窒素・リン酸収支の傾向を見ると、化学肥料の投入の減少に伴って農地表面での窒素・リン酸収支は減少したが、農業生産量は変化が無かった。家畜ふん尿の利用は減少しつつあり、廃棄は増えていた。作目別に見ると野菜での施肥が増加しており、地域によってはこれまで最も化学肥料の施用が多かった茶を超える場合も見られた。野菜への施肥を削減することが重要になるであろう。本データベースの値を原単位として、県内での窒素・リン酸過剰(欠乏)を表示することも可能であり、分布には窒素とリン酸で違いがあった。』

T.はじめに
U.窒素・リン酸フローの算出方法
 1.データの収録年度
 2.窒素フローモデル
 3.国・各都道府県での各窒素フロー算出のためのデータソースと算出方法
  (1)作物生産
  (2)化学肥料の施用量
  (3)家畜ふん尿の行方
  (4)窒素固定・灌漑水・脱窒による窒素の流れ
  (5)収支と農業生産で余剰となる窒素
V.算出結果の妥当性
W.算出結果の収録
X.算出結果を利用した成果
 1.国・都道府県での余剰窒素の発生量の傾向とその要因および環境影響
  (1)はじめに
  (2)各窒素フローの傾向
  (3)地下水への影響の評価
 2.国・都道府県での余剰リン酸の発生量の傾向とその要因
  (1)はじめに
  (2)化学肥料と家畜ふん尿の利用
  (3)作物によるリン酸収奪
  (4)リン酸収支と見かけのリン酸利用効率
  (5)家畜ふん尿の廃棄と余剰リン酸
 3.国・都道府県での作目ごとの窒素・リン酸収支の傾向
  (1)はじめに
  (2)化学肥料の施用
  (3)堆肥の施用
  (4)作物収量
  (5)作物別窒素・リン酸収支
Y.本データベースの拡張利用例:都道府県内での余剰窒素・リン酸の分布の細密地図化
Z.摘要
引用文献
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