国土交通省 土地・水資源局水資源部(2008):平成20年版日本の水資源〜総合的水資源マネジメントへの転換〜.228p.
は じ め に
- わが国は、これまで大都市圏を中心とする水需要の急増に対応して水資源開発を実施してきました。それにより水資源関係施設が相当程度整備された一方で、社会経済活動が安定的な局面へ移行した近年、水需要は横ばい若しくは減少傾向となり、水需要に供給が追いつかない状況からは脱却しつつあります。しかし、安全でおいしい水や豊かな環境等に対する国民の意識が高まっている中で、水資源関係施設の老朽化等を背景とした事故や水質悪化のリスク、震災時の水供給力低下等の課題が顕在化し、その対策が求められています。
- 加えて、平成19年2月から順次承認された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第4次評価報告書において、地球温暖化が加速度的に進行していることが指摘されています。近年の少雨化や降水量の変動幅の増大によって、全国各地で依然として渇水が発生しており、地球温暖化の進行によって、今後干ばつなど深刻な影響を受けるおそれがあります。
- 水資源に係る課題や気候変動等により生じるリスクに対応するため、水資源の量的な確保だけでなく、水量と水質、地下水と地表水を一体的にとらえて災害や事故等における危機管理も含めて、私たちに与えられた水資源を有効に活用する総合的な水資源マネジメントへと転換すべき時機にきています。
- 一方、世界に目を向けると、今年は「国際衛生年」であり、世界各国の首脳が「水と衛生」を持続的な発展の鍵と捉えて真剣な議論を重ねています。昨年12月に大分県で開催された第1回アジア・太平洋水サミットのほか、今年5月に東京で開催された国連「水と衛生に関する諮問委員会」第10回会合、7月に開催されたアフリカ連合(AU)サミットにおいても、水と衛生に関する集中的な議論がなされました。つい先日の7月7〜9日に北海道洞爺湖で開催されたG8北海道洞爺湖サミットにおいても、水に関する問題が議題にあげられたところです。
- 国連の報告では、全世界で約11億人が安全な水を利用できず、約26億人が基本的な衛生施設を利用できないとされています。また、毎日4,900人の子供達がコレラや腸チフス等、非衛生的な水に起因する病気で亡くなっているとされています。かつて、経済的な成長の過程で同様の問題に直面し、乗り越えてきたわが国が、知恵と技術を活かして水問題の克服にリーダーシップを発揮することが強く求められています。
- 今年の「日本の水資源」第T編では、総合的水資源マネジメントへの転換をテーマに、わが国の水資源の現状と課題を踏まえた総合的水資源マネジメントに向けた方策をまとめました。第U編では、世界の水問題解決に向けた新たな行動を紹介しています。
- 「日本の水資源」は、国土交通省土地・水資源局水資源部が関係機関の調査結果等を基にわが国の水需給や水資源開発の現況、今後早急に対応すべき水資源に関わる課題について総合的にとりまとめたもので、昭和58年から毎年公表しております。本書を通じて、多くの国民の皆様にわが国と世界の水資源の実態をご理解いただくとともに、基礎資料として活用していただき、あわせて水資源行政に一層のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
日本の水資源 概要版(PDF版)
概要版
日本の水資源 本編(PDF版)
第T編 総合的水資源マネジメントへの転換
第U編 世界の水問題解決に向けた新たな行動
第V編 日本の水資源と水需給の現況
第1章 水の循環と水資源の賦存状況 、 参考資料
第2章 水資源の利用状況 、 参考資料
第3章 水資源開発と水供給の現状 、 参考資料
第4章 地域別の状況 、 参考資料
第5章 渇水、災害、事故等の状況 、 参考資料
第6章 水資源と環境 、 参考資料
第7章 地下水の保全と適正な利用 、 参考資料
第8章 水資源の有効利用 、 参考資料
第9章 水源地域対策 、 参考資料
第10章 水資源に関する理解の促進
第11章 健全な水循環系の構築
第12章 水資源に関する国際的な取り組み 、 参考資料
第13章 平成19年度の水資源をめぐる動き 、 参考資料
用語の解説
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