駒井克昭・日比野忠史・大釜達夫(2008):黒潮の蛇行・直進が瀬戸内海の流れに及ぼす影響土木学会論文集B64(3)、165-179.


(要旨)
 黒潮流路、河川流量、および瀬戸内海の開口部水位等の経年変化特性に基づいて1982〜1999年を3期に分けて解析し、瀬戸内海の流れ場に及ぼす黒潮の蛇行・直進の影響を明らかにした。まず、実測の密度分布および気圧配置の季節変動を考慮した平面二次元モデルによって瀬戸内海全域の流れ場を解析し、通過流量の強さと流向の変化は下層の低塩分水塊の滞留域の変化によく一致することを示した。次に、運動量保存則に基づいた考察から、黒潮流軸の位置とそれに沿った流速等の水理量を三角級数で近似する数値モデルを構築した。瀬戸内海の通過流量は1010 m3/month のオーダーで期毎に異なり、黒潮流路の蛇行・直進による影響は季節変動量の約3〜4割に相当することが推定された。

Key Words: the Kuroshio stream path; the Seto Inland Sea; density; pressure; throughflow』

1.序論
2.黒潮流路と瀬戸内海の流れ・水質の経年変動
 (1) 瀬戸内海内、開口部、および外洋(黒潮)の物理条件の経年変化
 (2) 瀬戸内海における滞留域の経年変化
3.瀬戸内海における通過流量の季節変動とその経年変化の推定
 (1) 流れ場の解析法
 (2) 紀伊・豊後水道における通過流量の季節変動
4.黒潮による沿岸水位の支配要因とモデル化の方針
 (1) 黒潮による沿岸水位の決定機構
 (2) 黒潮流軸の位置
 (3) 黒潮流軸に沿った流速分布
 (4) 黒潮流軸に沿った水位分布
 (5) 黒潮域の水温・塩分・密度
5.黒潮をモデル化した流れ場の数値解析法
 (1) 数値解析の基礎式
 (2) 黒潮のモデル化と境界条件設定法
6.黒潮の蛇行・直進が瀬戸内海の流れに及ぼす影響
 (1) 計算条件
 (2) 西日本南方海域における水位分布
 (3) 黒潮が瀬戸内海の開口部水位差に及ぼす影響
 (4) 黒潮の蛇行・直進が瀬戸内海の通過流量に及ぼす影響
7.結語
 (1) 瀬戸内海の通過流量の季節変動量と経年変化
 (2) 黒潮による沿岸水位の支配要因
 (3) 黒潮をモデル化した流れ場の解析法
 (4) 黒潮の蛇行・直進が瀬戸内海の通過流量に及ぼす影響の評価と課題
謝辞
参考文献
(Abstract)


図-20 計算による水深平均流速ベクトル(瀬戸内海内はスケールを10倍している=白抜きベクトル)

〔駒井克昭・日比野忠史・大釜達夫(2008)による黒潮の蛇行・直進が瀬戸内海の流れに及ぼす影響から〕

期間〔1〕=1982〜1988年:黒潮蛇行に伴って豊後水道側水位が高かった期間
期間〔2〕=1989〜1993年:東海域の河川流量が平均を上回る年が続き、黒潮の蛇行が弱く直進傾向に遷移するに伴って開口部水位差が小さくなった期間
期間〔3〕=1994〜1999年:黒潮の直進傾向が続いた期間


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