IPCC(気象庁訳)(2007):気候変動に関する政府間パネル第2作業部会により受諾された報告書 技術要約.56p.


目 次

主要な結論の要約......................................................................................3

TS.1 第2作業部会の評価の範囲、アプローチ、方法...................................................................4

TS.2 自然システムと人為システムへの観測された影響に関する現在の知見....................................................4
Box TS.1. 本技術要約の出典.......................................................5
Box TS.2. 第2作業部会第4次評価報告書における不確実性の表現方法...................................................5
Box TS.3. 主要な用語の定義.......................................................5
Box TS.4. 気候変動の原因と物理・生物システムで観測された影響との関連付け..................................7

TS.3 方法及びシナリオ.....................................................................9
TS.3.1 気候変動の影響、適応、脆弱性に関する研究者が利用可能な方法の発展..............................9
TS.3.2 IPCC第2作業部会第4次評価報告書における「将来」の特徴解析....................................................10

TS.4 将来の影響に関する現在の知見.....................................13
TS.4.1 分野別の影響、適応、脆弱性...............................13
Box TS.5. システムと分野に予測される主要な影響...........22
TS.4.2 地域ごとの影響、適応及び脆弱性.......................26
Box TS.6. 地域ごとの主要な予測される影響.......................37
TS4.3 気候変動の変化量による影響の程度...................42
TS4.4 極端現象の変化の影響............................................42
TS.4.5 特に影響を受けるシステム、分野及び地域......42
TS.4.6 大きな影響を及ぼす現象............................................42
TS.4.7 気候変動の影響のコスト計算....................................42

TS.5 気候変動に対する対応についての現在の知見....43
TS.5.1 適応.............................................................................43
TS.5.2 適応と緩和の相互関係............................................48
Box TS.7. インドにおける複合的ストレス要因への適応能力.....................................................................49
TS.5.3 主要な脆弱性.............................................................51
TS.5.4 気候変動と持続可能性に関する展望...................53

TS.6 知識の進展と将来的な研究のニーズ........................54
TS.6.1 知識の進展.................................................................54
TS6.2 将来的な研究の必要性............................................55


主要な結論の要約

● すべての大陸及びほとんどの海洋で観測によって得られた証拠は、多くの自然システムが、地域的な気候変動、とりわけ気温上昇の影響を受けつつあることを示している。
● 1970年以降のデータの地球規模での評価は、人為起源の温暖化が多くの物理・生物システムに対して識別可能な影響を既に及ぼしている可能性が高いことを示している。
● 多くは適応や非気候動因のために識別することが困難であるものの、地域的な気候変動が自然・人間環境に及ぼすその他の影響が現れている。
● 前回の評価に含まれなかったいくつかの分野を含む、広範囲なシステムと分野にわたって、将来影響の性質に関するより明確な情報が、現在入手可能である。
● 将来影響の性質に関して、過去の評価ではカバーされていなかったいくつかの地域も含む、世界の各地域におけるより具体的な情報が、現在では利用可能である。
● 影響の程度を、世界平均気温の起こりうる上昇幅に対応してより系統的に推定することが、今日では可能である。
● 気象、気候及び海面に関する極端な現象の頻度及び強度が変わることによる影響は、変化する可能性が非常に高い。
● いくつかの大規模な気候現象は、特に21世紀以降に、非常に大きな影響を引き起こす可能性がある。
● 気候変動の影響は、地域により異なるが、それらを集計し現在に割り引いた場合、世界気温の上昇につれて時とともに増加する正味の年間コストを課すことになる可能性が非常に高い。
● 観測された気候変動及び将来の気候変動予測に対して、現在行われている適応もあるが、それらは限定的である。
● 適応は、過去の排出により既に避けられない温暖化がもたらす影響に対処するために必要である。
● 広い範囲の適応オプションが利用可能であるが、将来の気候変動への脆弱性を軽減するためには、現在行われているよりも一層幅広い適応が必要である。障壁、限界及びコストが存在するが、これらは十分には理解されていない。
● 気候変動に対する脆弱性は、他のストレスの存在によって一層悪化し得る。
● 将来の脆弱性は、気候変動のみならず、開発経路にも依存する。
● 持続可能な開発は気候変動に対する脆弱性を低減することができるが、気候変動は持続可能な開発経路を達成するための国家の能力を妨害し得る。
● 多くの影響は、緩和によって回避、減少又は遅延され得る。
● 適応策と緩和策のポートフォリオは、気候変動に伴うリスクを縮小できる。



表 TS.3. 21世紀の世界平均地上気温の上昇量の違いに対応した気候変動(及び関係のある場合は海面水位、大気中の二酸化炭素)から予測される地球規模の影響の例 [表20.8]。これは、現在入手できるいくつかの推定結果から選択したものである。全ての事項は、本評価報告書の各章の公表研究論文から引用している。箱の縁と記述の位置は、影響が関係する気温変化の範囲を示している。箱の間の矢印は、推定値の間で影響の度合いが増加していることを表す。その他の矢印は影響の傾向を示している。水ストレスと洪水に関する全ての項目は、SRESシナリオのA1FI、A2、B1、B2にわたって予測される条件に対応した気候変動による追加的な影響を表す。気候変動に対する適応はこれらの推定には含まれていない。絶滅に関しては、「多数」は評価された種の〜40%から〜70%を意味している。 また表では、1980〜1999年と比較した、SRESシナリオ及び安定化シナリオの予測で選ばれた期間における世界気温の変化を示している。1850〜1899年と比較した気温変化を表すためには0.5℃を加える。より詳細な内容は第2章に示されている[Box2.8]。推定値は2020年代、2050年代、2080年代(IPCCデータ配信センターで使われている期間で、故に、多くの影響研究においても使用されている)及び2090年代に対するものである。SRESに基づく予測は2つの異なるアプローチを用いて示されている。中央のパネル:複数の情報源に基づく第1作業部会第4次評価報告書政策決定者向け要約からの予測。最良の推定値はAOGCMに基づいている(色付けされた点)。2090年代のみに適用されている不確実性幅は、モデル、観測上の制約、専門家の判断に基づいている。下段のパネル:簡易気候モデル(SCM)に基づいた最良の推定値と不確実性幅で、第1作業部会第4次評価報告書(第10章)からとられている。上段のパネル:SCMを用いた、4つの二酸化炭素濃度安定化シナリオに対する最良の推定値と不確実性幅。第4次評価報告書では21世紀について比較可能な予測が得られないため、結果は第3次評価報告書からのものである。しかし、二酸化炭素換算濃度の安定化時の平衡状態における気温上昇の推定値は、第1作業部会第4次評価報告書で報告されている18。温室効果ガスが安定化した後、何十年、何百年後まで、平衡気温に達することはないであろう点に留意しなければならない。
表TS.3. 出典:1, 3.4.1; 2, 3.4.1, 3.4.3; 3, 3.5.1; 4, 4.4.11; 5, 4.4.9, 4.4.11, 6.2.5, 6.4.1; 6, 4.4.9, 4.4.11, 6.4.1; 7, 4.2.2, 4.4.1, 4.4.4 .4.4.6, 4.4.10; 8, 4.4.1, 4.4.11; 9, 5.4.2; 10, 6.3.2, 6.4.1, 6.4.2; 11, 6.4.1; 12, 6.4.2; 13, 8.4, 8.7; 14, 8.2, 8.4, 8.7; 15, 8.2, 8.4, 8.7; 16, 8.6.1; 17, 19.3.1; 18, 19.3.1, 19.3.5; 19, 19.3.5


図 TS.19. 5.5℃の気候感度を仮定したSRES A2排出シナリオに沿った、緩和の有無による2050年における脆弱性の地理的分布。(a)現在の適応能力が変わらない場合の脆弱性。(b)世界中で適応能力が向上した場合の脆弱性。(c)大気中の温室効果ガス実効濃度を550ppmに抑えるよう計画した緩和の地理的な影響。(d)濃度を同様に550ppmvに抑えた緩和と、適応能力の向上が組合さった補完的効果の様子 [図20.6]。

IPCC(2007)による『気候変動に関する政府間パネル第2作業部会により受諾された報告書 技術要約』から


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