日本国(2008):京都議定書3 条3 及び4 の下でのLULUCF 活動の補足情報に関する報告書.62p.


目 次

第 1 章 一般的情報................................................................................................................................... 1
1.1. 森林の定義........................................................................................................................................... 1
 1.1.1. 我が国が設定した森林の定義.......................................................................................................... 1
 1.1.2. 定義の一貫性.................................................................................................................................... 1
1.2. 選択された京都議定書3 条4 の活動................................................................................................. 2
 1.2.1. 選択された京都議定書3 条4 の活動.............................................................................................. 2
 1.2.2. 京都議定書5 条1 の国内制度における土地の特定方法.............................................................. 2
 1.2.3. 選択された活動の定義の解釈方法.................................................................................................. 2
1.3. 京都議定書3 条3 及び4 の活動の定義の時系列一貫性................................................................. 3
 1.3.1. 新規植林・再植林活動、森林減少活動.......................................................................................... 3
 1.3.2. 森林経営活動.................................................................................................................................... 3
 1.3.3. 植生回復活動.................................................................................................................................... 3
1.4. 選択された京都議定書3 条4 の活動間の階層構造について......................................................... 5

第 2 章 土地に関する情報......................................................................................................................... 6
2.1. 京都議定書3 条3 に基づく土地ユニットの面積を決定するための空間評価単位..................... 6
2.2. 土地転用マトリクスの作成方法......................................................................................................... 6
 2.2.1. 新規植林・再植林面積及び森林減少面積の把握方法.................................................................. 6
 2.2.2. 森林経営(FM)対象森林面積の把握方法.................................................................................... 7
 2.2.3. 植生回復面積の把握方法................................................................................................................ 10
2.3. 地理的境界を特定するために用いる地図情報及び地理的境界のID システム......................... 15

第 3 章 活動別の情報............................................................................................................................... 16
3.1. 炭素ストック変化量及びGHG 排出・吸収量の算定方法............................................................ 16
 3.1.1. 算定方法.......................................................................................................................................... 16
 3.1.2. 算定対象から除外した炭素プールについて................................................................................ 45
 3.1.3. 間接及び自然要因の分離(ファクタリングアウト)について................................................ 45
 3.1.4. 再計算と改善点............................................................................................................................... 46
 3.1.5. 不確実性評価.................................................................................................................................. 47
 3.1.6. その他の方法論(自然撹乱等による影響に対する対処方法等)............................................ 49
 3.1.7. 活動の開始年(2008 年以降の場合)........................................................................................... 50
3.2. 京都議定書3 条3 の活動について................................................................................................... 50
 3.2.1. 1990 年1 月1 日以降に人為的活動が実施されたことを示す情報............................................ 50
 3.2.2. 伐採及び撹乱に伴う一時的なストック減少と森林減少を区別する方法................................ 51
 3.2.3. 森林被覆が減少したが森林減少には分類されない森林のサイズと地理的位置.................... 51
3.3. 京都議定書3 条4 の活動について................................................................................................... 51
 3.3.1. 1990 年1 月1 日以降に人為的活動が実施されたことを示す情報............................................ 51
 3.3.2. 基準年の植生回復活動に関する情報............................................................................................ 53
 3.3.3. 森林経営活動に関する情報............................................................................................................ 53

第 4 章 その他の情報............................................................................................................................... 54
4.1. キーカテゴリー分析結果................................................................................................................... 54
4.2. 今後の検討課題..................................................................................................................................55
 4.2.1. 新規植林・再植林及び森林減少活動............................................................................................55
 4.2.2. 森林経営活動...................................................................................................................................55
 4.2.3. 植生回復活動...................................................................................................................................55

第 5 章 京都議定書6 条に関する情報...................................................................................................56

参考文献......................................................................................................................................................57


第 1 章 一般的情報
1.1.森林の定義

 1.1.1.我が国が設定した森林の定義
 京都議定書第1回締約国会議(COP/MOP1)における決議16/CMP.1 に基づき、我が国の森林の定義を以下の通りとする。
・最小面積 0.3 [ha]
・最小樹冠被覆率 30 [%]
・最低樹高 5 [m]
・最小の森林幅 20 [m]

 1.1.2.定義の一貫性
 上記の森林定義は、最小面積、最小樹冠被覆率及び最小の森林幅について、我が国の既存の森林計画制度上の対象森林と一致する。最低樹高については既存の制度に定義されていないが、我が国の森林を構成する樹種や気候条件を勘案すると、森林計画対象森林において成林時の樹高が5 m を下回ることは極めて稀である。森林計画対象森林においては、都道府県等が計画樹立等のために調査を行い、森林簿として森林資源に関する情報を取りまとめている。このため、我が国においては、森林計画対象森林をもって京都議定書に基づく森林とみなし、報告の基礎データとして森林簿を用いることとする。
 なお、この定義は国連食糧農業機関(FAO)が2005 年に行った世界森林資源調査「FRA2005」における我が国の報告対象森林の定義(表 1-1)と一致している。
表 1-1 我が国がFAO の報告に用いている森林区分及び定義

区分

定義
 

森林
木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹、もしくは木竹の集団的な生育に供される、0.3 ヘクタール以上の土地。ただし、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く。

立木地
森林のうち、樹冠疎密度0.3 以上の林分(幼齢林を含む)。

無立木地
森林のうち、立木地と竹林以外の林分。

竹林
立木地以外の森林のうち、主に竹(笹類を除く)が生立する林分。

 我が国の森林資源現況調査においては、1995 年以前までは森林(立木地)のサブカテゴリとして、人工林と天然林に区分していたが、2002 年以降の調査においては、森林の育成(人為)の程度及び階層構造に着目し、更に育成林と天然生林のサブカテゴリを加えている。育成林には、伐採後主として植栽等によって更新を図る人工林のほか、植栽等によらず、地表かきおこし等の補助作業により更新を図る一部の天然林が含まれる。人工林、天然林と、育成林、天然生林の定義については以下に示す通りである。
表 1-2 我が国の人工林、天然林、育成林、天然生林の定義

更新方法による区分

管理方法による区分

人工林
植栽等により更新する森林

育成林
育成林とは、森林を構成する樹木の一定のまとまりを一度に全部伐採し、人為により単一の樹冠層を構成する森林として成立させ維持する施業(育成単層林施業)が行われている森林及び、森林を構成する林木を択伐等により部分的に伐採し、人為により複数の樹冠層を構成する森林(施業の過程で一時的に単層となる森林を含む。)として成立させ維持していく施業(育成複層林施業)が行われている森林。

天然林
人工林の定義に合致しない森林

天然生林
天然生林とは、主として天然力を活用することにより成立させ維持する施業(天然生林施業)が行われている森林。この施業には、国土の保全、自然環境の保全、種の保存のための禁伐等を含む。


1.2.選択された京都議定書3 条4 の活動
 1.2.1.選択された京都議定書3 条4 の活動
 我が国としては、京都議定書第3 条4 に規定する「吸収源による吸収量の変化に関連する追加的人為活動」(以下、「人為的吸収源活動」という)として、決議16/CMP.1 別添(ANNEX)パラ6 に規定する森林経営(Forest Management)と植生回復(Revegetation)を選択する。

 1.2.2.京都議定書5 条1 の国内制度における土地の特定方法
 LULUCF-GPG、4.24 頁、Section4.2.2.2 において、京都議定書3 条4 の活動を受けた土 地を特定し、国際的に報告する方法として、活動を受けた複数の土地を含む領域を法的、行政的、生態学的境界を用いることによって表す「報告方法1」と、活動を受けた土地の地理的特定を空間的に明確かつ完全に行う「報告方法2」の2つの方法が示されている。どちらの報告方法を選択するかについては、LULUCF-GPG の第4 章、図4.2.4 に示されたデシジョンツリーに沿って選択することとされており、我が国の場合は「報告方法1」を選択することとする。即ち、全国土を都道府県界によって区分し、その境界内において京都議定書3 条4 に該当する活動が行われたと適切に推計される土地の面積を報告するものとする。

 1.2.3.選択された活動の定義の解釈方法
  1.2.3.1.森林経営活動
 決議16/CMP.1 の別添(ANNEX)、パラ1(f) において『「森林経営」とは、森林に関連する生態学的機能(生物多様性を含む)や森林の経済的及び社会的な機能を持続可能な形で満たすことを目的とした森林の管理と利用のための施業システムである』と定義されている。我が国としては、決議16/CMP.1、パラ2 において締約国に対して使用が義務づけられているLULUCF-GPG を考慮しつつ、その定義を以下のとおり解釈することとする。
・育成林については、森林を適切な状態に保つために1990 年以降に行われる森林施業(更新(地拵え、地表かきおこし、植栽等)、保育(下刈り、除伐等)、間伐、主伐)
・天然生林については、法令等に基づく伐採・転用規制等の保護・保全措置

  1.2.3.2.植生回復活動
 決議16/CMP.1 別添(ANNEX)パラ1(e)において『「植生回復(revegetation)」は、「新規植林」及び「再植林」の定義に該当しない、最小面積0.05ha 以上の植生を造成することを通じ、その場所の炭素蓄積(carbon stocks)を増加させる直接的人為的活動である』と定義されている。
 我が国としては、LULUCF-GPG を考慮しつつ、その定義を以下のとおり解釈することとする。
・1990 年以降に行われる開発地における公園緑地や公共緑地、又は行政により担保可能な民有緑地を新規に整備する活動。1
 我が国では、下位区分として「都市公園」、「道路緑地」、「港湾緑地」、「下水道処理施設における外構緑地」、「緑化施設整備計画認定緑地」、「河川・砂防緑地」、「官庁施設外構緑地」、「公的賃貸住宅地内緑地」を対象に定義に合致する施設を抽出して報告する。このうち、都市公園と河川・砂防緑地以外の施設は、全て開発地に設置されている。都市公園は、一部湿地に設置されているものも含まれ(河川区域(=湿地)を占有して設置されている場合あり)、河川・砂防緑地は全て湿地に設置されている。

1.3.京都議定書3 条3 及び4 の活動の定義の時系列一貫性
 1.3.1.新規植林・再植林活動、森林減少活動
 新規植林・再植林(AR)及び森林減少(D)の面積は、全国をカバーする1989 年末の空中写真オルソ画像と衛星画像を用いたサンプリング調査により推計する。衛星データは2 年毎に更新し、継続してモニタリングを行う。

 1.3.2.森林経営活動
 森林経営(FM)対象森林面積は、国家森林資源データベース内に蓄積された森林面積から新規植林・再植林面積を除外した上で、地域別樹種別に、森林が適切に維持管理されている状態の森林の割合(FM 率)を乗じて算定する。第一約束期間内のFM 対象森林の変化については、サンプリング手法によるFM 率調査を毎年度継続して実施することにより把握する。

 1.3.3.植生回復活動
 植生回復(RV)活動として対象とした各下位区分の定義の時系列一貫性については、以下に示す通りである。
表 1-3 植生回復活動の定義の時系列一貫性(下位区分別)

下位区分

植生回復活動の定義の時系列一貫性

都市公園
国土交通省では、当該緑地が都市公園法及び都市公園法施行規則において「都市公園台帳」の作成が義務付けられているため、「都市公園等整備現況調査」により、都市公園の名称、所在地、告示年、面積を把握している。本調査を継続して実施することにより、毎年、面積を把握・更新する。ただし、土地の転用については、個別に把握することが困難であることから、国土における土地転用の割合を用いて推計している。

道路緑地
国土交通省では、「道路緑化樹木現況調査」を5 年に1 回実施しており、1990 年以降に供用された道路緑地について、1990 年以降に植裁された高木本数を把握している(5 年に1 回の調査のため、データ空白年は外挿、内挿により算定)。道路緑地の活動面積は、高木1 本当たりの活動面積(ha/本)に高木本数を乗ずることにより算定している。2007年度以降は、毎年調査を実施し、高木本数の実績値を更新していく予定である。ただし、土地の転用については、個別に把握することが困難であることから、国土における土地転用の割合を用いて推計している。

港湾緑地
国土交通省では、2006 年度より全数調査を毎年1 回実施しており、1990 年以降に供用された港湾緑地について、個別施設の供用年度、開設面積を把握している。本調査を継続して実施することにより、毎年、面積を把握・更新する。ただし、土地の転用については、個別に把握することが困難であることから、国土における土地転用の割合を用いて推計している。

下水道処理施設における外構緑地
国土交通省では、2006 年度より「下水処理場・ポンプ場における吸収源対策に関する実態調査」を毎年実施しており、1990 年以降に供用された下水道処理施設における外構緑地について、個別施設の供用年度、緑化面積、高木本数(一部施設のみ)を把握している。本調査を継続して実施することにより、毎年、面積を把握・更新する。ただし、土地の転用については、個別に把握することが困難であることから、国土における土地転用の割合を用いて推計している。

緑化施設整備計画認定緑地
国土交通省では、当該緑地が都市緑地法(第60 条)に基づく市町村長による認定制の緑地で、新設、変更に当たっては届出が義務付けられているため、「都市緑化施策の実績調査」において緑地の名称、所在地、認定年、植裁面積を把握している。本調査を継続して実施することにより、毎年、面積を把握・更新する。土地の転用については、報告対象とする全ての施設において、1989 年12 月31 日時点で森林では無く、また、転用のない開発地に設置されている。

河川・砂防緑地
国土交通省では、2007 年度より「河川における二酸化炭素吸収源調査」を実施しており、1990 年以降に竣工した河川事業及び砂防事業を対象に、個別施設の名称、所在地、竣工年、植栽面積、高木植栽本数を把握している。本調査を継続して実施することにより、毎年、面積を把握・更新する。ただし、土地の転用については、個別に把握することが困難であることから、国土における土地転用の割合を用いて推計している。

官庁施設外構緑地
国土交通省では、2007 年度より全数調査を実施しており、1990 年以降に竣工した官庁施設を対象に、個別施設の名称、所在地、竣工年、敷地面積、建築面積を把握している。本調査を継続して実施することにより、毎年、面積を把握・更新する。ただし、土地の転用については、個別に把握することが困難であることから、国土における土地転用の割合を用いて推計している。

公的賃貸住宅地内緑地
国土交通省では、2007 年度より「公的賃貸住宅緑地整備現況調査」を実施しており、1990 年以降に竣工した公的賃貸住宅を対象に、個別施設の名称、所在地、竣工年、敷地面積、建築面積を把握している。本調査を継続して実施することにより、毎年、面積を把握・更新する。ただし、土地の転用については、個別に把握することが困難であることから、国土における土地転用の割合を用いて推計している。


1.4. 選択された京都議定書3 条4 の活動間の階層構造について
 我が国では、森林経営活動は森林地、植生回復活動は開発地及び湿地においてのみ発生する活動として解釈しているため、森林経営活動と植生回復活動の重複はない。



1最小面積が0.05 ha未満または新規植林及び再植林の定義に合致する土地は、植生回復地に含まない。


戻る