戒能一成(2009):総合エネルギー統計の解説/ 2007年度改訂版.397p.


「総合エネルギー統計の解説/ 2007年度改訂版」
- 目次-

1. 総合エネルギー統計の概要と基本的考え方・・・1
1-1. 総合エネルギー統計の策定目的と基本方針・・・1
1-2. 総合エネルギー統計の基本的構造と仕様・・・2
2. 総合エネルギー統計の算定手法・・・5
2-1. 基礎的算定原理と算定作業の流れ・・・5
2-2. 発熱量・炭素排出係数の設定・・・7
2-3. モジュールの構築と出典統計・・・12
2-4. モジュールの合成と推計・調整の方法・・・13
3. 総合エネルギー統計の構造と解説-1: 「行」の構造と解説・・・16
3-1. 一次エネルギー供給・・・20
3-2. エネルギー転換・・・26
3-3. 最終エネルギー消費・・・62
4. 総合エネルギー統計の構造と解説-2: 「列」の構造と解説・・・91
4-1. 石炭・石炭製品・・・93
4-2. 原油・石油製品・・・118
4-3. 天然ガス・都市ガス・・・174
4-4. 原子力・事業用水力発電・・・185
4-5. 電力・熱・・・189
4-6. 合計、エネルギー/非エネルギー消費、電力・熱寄与配分・・・204
5. 再生可能・未活用エネルギー表・・・208
5-1. 再生可能・未活用エネルギーの定義・概念整理・・・208
5-2. 再生可能エネルギー・・・211
5-3. 未活用エネルギー・・・216
6. エネルギー起源炭素表・・・224
6-1. 基礎的推計原理・・・224
6-2. 直接排出量・間接排出量の推計・・・229

別掲表・・・235
補論・・・243
補論1: 電力の一次エネルギー供給の算定方法について・・・243
補論2: 産業部門内部での自家用発電・産業用蒸気のエネルギー転換について・・・246
補論3: 鉄鋼業内部での石炭のエネルギー転換について・・・251
補論4: 石油精製業内部での石油のエネルギー転換について・・・261
補論5: 石油化学工業内部での石油製品のエネルギー転換について・・・274
補論6: 産業連関表を用いた非製造業・第三次産業の最終エネルギー消費の推計について・・・282
補論7: エネルギー関連設備・機器とエネルギー源の選択について・・・317
補論8: エネルギー関係統計の統計調査対象範囲と分類について・・・331
補論9: エネルギー起源炭素排出係数の改訂について・・・334
補論10: エネルギー源別標準発熱量の改訂について・・・365

参考文献・リンク・・・394
関係者への謝辞・・・395


1. 総合エネルギー統計の概要と基本的考え方
1-1. 総合エネルギー統計の策定目的と基本方針
1-1-1. 総合エネルギー統計の策定目的
総合エネルギー統計は、海外から輸入されあるいは国内で生産されて日本国内に供給された石炭・石油などのエネルギー源が、巨視的に見てどのような形態に転換され、誰が、何のために、どのような形態で最終的に消費したのかということを明らかにすることにより、日本のエネルギー需給の概要を示し、さらに温室効果ガスの大部分を占めるエネルギー起源二酸化炭素排出量の算定基礎を示すものである。
総合エネルギー統計は、エネルギー・環境政策の企画立案やその効果の実測・評価などに貢献するとともに、エネルギー需給に対する定量的な理解や情勢判断を支援するために策定するものである。

1-1-2. 総合エネルギー統計の表現と意味
一般に、石炭・原油・天然ガスなどのエネルギー源は、輸入や国内生産されたままの形態で使用されることは殆どなく、通常、ガソリン・都市ガス・電力などの最終エネルギー消費の際に都合の良い形態のエネルギー源に転換された上で用いられている。
従って、日本のエネルギー需給の全貌を正しく把握するためには、エネルギー源の需給を個別に見ていただけでは不十分であり、各エネルギー源が形を変えて国内で流通し消費されていく様子を総合的に捉えていくことが必要である。
総合エネルギー統計は、このような目的から、石炭・原油・天然ガスなどの主要なエネルギー源を「列」、発電・石油精製などの転換部門や産業・家庭など主な需要部門を「行」をとして、国内でのエネルギー需給の概要をエネルギー源別・部門別に行列形式で総合的に表現したものである。
[図1-1-2-1. エネルギーの供給・転換・消費の流れと表現- 原料炭の例-(略)]

1-1-3. 総合エネルギー統計策定の基本方針
総合エネルギー統計は、その策定目的にかんがみ、以下のような基本方針により、科学的・合理的方法による精度の向上と、内容の一層の改善のための情報開示を進め、随時必要な改訂を行っていくものとする。
(1) 構成諸元
「列」を構成するエネルギー源は、需給全体に与える重要度や政策的な意義の観点から見直しを行い、随時追加・合併・廃止などの新陳代謝を行う。
「行」を構成するエネルギー部門は、可能な限り内訳を明示した階層構造とし、個別内訳に関する情報の整備を進める。この際、基礎とする統計の改廃による影響を可能な限り限定・識別し時系列での需給が把握できるよう措置する。

(2) 基礎統計
総合エネルギー統計は、供給・転換、消費の各部分を公的統計を基礎として必要最小限の推計・調整により構築する。構築の過程においては数値の出自と推計過程・内容を可能な限り明示して解説する。
供給部門・転換部門における基礎統計は、全体の精度向上の観点から見て推計精度が最も高い統計を取捨選択して用い、可能であれば複数の統計を用いた評価を行う。
消費部門における基礎統計は、IPCCガイドライン、UNFCCCガイドラインなどの国際規約に準拠し、可能な限り消費側からの把握が可能な統計を用いる。

(3) 推計・調整処理
総合エネルギー統計において、論理的整合化のため推計や調整処理を行った項目については、当該推計・調整処理の内容を明示し、利用者の正しい統計の解釈と適正な利用を支援する。

1-2. 総合エネルギー統計の基本的構造と仕様
1-2-1. 期間区分
(1) 年度本位制
総合エネルギー統計の期間区分については、年度の統計しか得られない基礎統計を一部において用いていることから、年度を正本として用いる。

(2) 暦年・月次の扱い
総合エネルギー統計に準じて暦年・月次の表を必要とする場合には、各種統計月報・四半期報及び直近の年度別統計から補間・補外等の統計的手法により近似表を作成する。
但し、このような推計による暦年表・月次表においては、本表と比較して精度が低下していることに留意しなければならない。

1-2-2. 表記単位
(1) 総発熱量・ジュール系単位本位制
総合エネルギー統計の表記単位は、各エネルギー源の総発熱量(高位発熱量)で表したエネルギー量単位(J: ジュール)での表記による「エネルギー単位表」を正本とする。
エネルギー源の収支に関する量的理解を助けるため、「エネルギー単位表」を集計した「簡易表」、各エネルギー源別の固有単位(t, m3, kWhなど)による「固有単位表」を補助的に用いる。
また、国際的なエネルギー需給量の比較・対照を行うため、各エネルギー源の総発熱量から、含有される水素分が水蒸気に変化する際に蒸発潜熱となるエネルギー量を控除した「真発熱量表」を必要に応じ参考として示す*1

(2) 原油換算・カロリー系表示の廃止
総合エネルギー統計では、計量法の考え方に従い、原油換算(kloe・Mtoeなど)、kcal換算による表記は用いない*2

1-2-3. 精度管理: 有効数字2桁の原則
総合エネルギー統計の精度については、各エネルギー源の発熱量の算定におけるサンプル数は最大でも1000程度しかなく、原理的に有効数字が2桁程度の精度しか得られないため、各エネルギー源毎に±5%程度の本質的誤差を持っていると考えられる。
このため、有効数字を2桁とし、3桁目以降は参考表示として取扱う。
従って、別途精度が確認されている部分や、精度が定義に従う部分以外では、3桁目以降の数値は参考程度の意味しかなく、これを直接の比較や判断材料に用いてはならない。

1-2-4. エネルギー源別の発熱量
(1) 実質発熱量の設定・使用
総合エネルギー統計においては、エネルギー需給の推計精度を確保するため、エネルギー源別の発熱量を公的統計から毎年度算定し直した「実質発熱量」を用いる。

(2) 標準発熱量の取扱い
エネルギー源毎の発熱量について、「実質発熱量」は毎年度事後的にしか知り得ず、「実質発熱量」をエネルギー源毎の発熱量の唯一の基礎とすることは各種の報告・証明・取引などに支障を生じることから、通常は「標準発熱量」によってエネルギー量の表記・算定などを行って差支えないものとする。
「標準発熱量」は5年毎を目処に直近年度の「実質発熱量」を用いて改訂される。

1-2-5. エネルギー源(「列」構成)
(1) エネルギー源別項目
総合エネルギー統計においては、現在日本で用いられている主要なエネルギー源を「列」として表記しその収支を明示する。具体的には、石炭、石炭製品、原油、石油製品、天然ガス、都市ガス、再生可能・未活用エネルギー、事業用水力発電、原子力発電、電力、熱の11の大項目区分と必要な中項目以下の区分で構成する。
総合エネルギー統計上のエネルギー源の「列」の掲載については、基本方針に従い以下の観点から随時取捨選択する。
・各種公的統計上で継続的に統計数値が得られるエネルギー源か否か
・日本の一次エネルギー総供給あるいは最終エネルギー消費に対し0.1%以上の構成比を持っており重要性が認められるエネルギー源か否か
・近い将来当該エネルギー源の利用拡大が見込まれるか否か

(2) 再生可能・未活用エネルギーの取扱い
太陽熱、地熱、廃棄物発電等の再生可能・未活用エネルギーについては、大項目区分以下を別掲した表を設けてその内訳を明示する。

1-2-6. 需給部門(「行」構成)
(1) 需給部門
総合エネルギー統計の需給部門の構成については、一次エネルギー供給(一次供給)、
エネルギー転換(転換)、最終エネルギー消費(最終消費)の3つの大部門と必要な中部門以下の部門で構成する。
総合エネルギー統計上の需給部門の「行」の掲載については、基本方針に従い、各種公的統計上継続的に数値が得られるか否かなどの観点から随時取捨選択する。

(2) 非エネルギー消費の取扱い
最終エネルギー消費のうち、エネルギーを得るための燃焼・酸化を伴わず、エネルギー源を原材料として使用する「非エネルギー消費」についてこれを別掲した表を設け、その内訳を明示することとする。
[表1-2-5-1. 2005年度総合エネルギー統計/簡易表(単位PJ)(略)]



*1「真発熱量」の利用は、エネルギー量の計測が比較的簡易に行える利点があるが、潜熱回収型機器等高効率機器における効率が100%を超える場合があり、エネルギー収支が正しく把握できない問題があるためこれを参考とする。
*2止むを得ず原油体積換算(kloe)を行う際には、国際慣行に則り、換算基準とする原油は常に38.7MJ/l(9250kcal/l)を用いなければならず、日本の輸入原油の標準発熱量や実質発熱量(現在約38.2MJ/l)を用いて換算してはならない。


2. 総合エネルギー統計の算定手法
2-1. 基礎的算定原理と算定作業の流れ
2-1-1. 総合エネルギー統計の基礎的算定原理と限界
(1) 個別物量からのエネルギー量の推計: 「均一性の仮定」
総合エネルギー統計においては、エネルギー需給量の算定にあたり、ガソリン・電力などの各エネルギー源が一律に固有単位あたりの総発熱量*3で均質になっており、均質なエネルギー源が供給・転換・消費されているものと仮定して、各種の公的統計で把握されている固有単位での供給・転換・消費の数値に、固有単位当の総発熱量を乗じてエネルギー需給量を算定している。
当該仮定を「均一性の仮定」という。
このようにして求めたエネルギー源別エネルギー需給量を、重複なくエネルギー源別に合計していけば、日本全体のエネルギー需給量を算定することが可能である。
総合エネルギー統計においては、上記の「均一性の仮定」が有効でなければ正確な値を算定することができないため、例えば同じ「重油」というエネルギー源であってもA重油とC重油のように総発熱量が大きく異なるものが知られている場合、エネルギー源を区分してその需給を取扱い、また区分できない場合には各エネルギー源の真の平均値に最も近いと考えられる総発熱量を選択・設定することなどによって、エネルギー源の性状・品質の分散により「均一性の仮定」が崩れることを防止してその精度を確保している。

[式2-1-1-1. 総合エネルギー統計におけるエネルギー需給算定の基本式]
Edsi = Eoui * Joui ・・・式2-1-1-1)
i エネルギー源( i∈石炭,原油,ガソリン・・・)
Edsi エネルギー源別エネルギー需給量(MJ)
Eoui エネルギー源別固有単位需給量(t,kl,m3・・・)
Joui エネルギー源別(固有単位あたり)総発熱量(MJ/kg,,/l,・・・)

(2) 個別業種・事業所・装置のエネルギー需給・効率と総合エネルギー統計の関係
一方、同じエネルギー源であっても各企業毎・事業所毎・工場毎あるいは装置毎に、用いているエネルギー源の規格・銘柄などの種類は異なることが通常である(例. XX鉱山産亜瀝青炭、C重油JIS1級、都市ガス4C・・・)。
しかし、このような個別の企業・事業所・装置間の差異について、総合エネルギー統計上でこれらを取扱っていくことには限界があるため、エネルギー需給内訳の細目を表現する際には個別企業などでのエネルギー源の詳細な差異を大部分捨象している。
従って、総合エネルギー統計は個別企業・事業所・装置のエネルギー需給やエネルギー効率の「参考となる指標」としては有効であるが、個別企業・事業所・装置の実測によるエネルギー需給やエネルギー効率と直接同列に比較できるだけの分解能や識別精度は持っていない。
従って、総合エネルギー統計は、個別企業・事業所・装置のエネルギー需給やエネルギー効率を個々に評価・判断するなどの用途に用いることはできないことに注意が必要である。
総合エネルギー統計は、あくまで日本全体や該当部門全体で巨視的に見たエネルギー需給やエネルギー効率などを示しているのである。

(3) 総合エネルギー統計の地域区分推計と「都道府県別エネルギー消費統計」
総合エネルギー統計は、日本全国を1つの地域としてエネルギー源別・部門別の推計を行っており、現状において地域別の区分については、民生家庭部門で家計調査報告の地域区分集計値を用いて補助的な推計を行っているのみである。
総合エネルギー統計自体を地域別に区分していない理由は以下のとおりである。
・地域別のエネルギー需給の算定においては、直接的に地域別に区分された基礎統計が限定されていること、地域別に見た場合寒冷地仕様の石油製品の存在などエネルギー源の多くが前述の「均一性の仮定」に抵触する問題を生じることなどから、地域別に区分した場合精度の高い推計を行うことが原理的に困難である。
・転換部門においては、エネルギー需給量の多寡は各地域の電源立地の状況や産業構造の状況に依存しており、地域経済との因果性が薄いため、そもそも地域別に区分することの意味に問題がある*4
・運輸貨物部門や公共輸送機関による輸送などにおいては、エネルギー源の需要地と消費地が通常は一致しない*5ため、地域別に区分を行う目的に応じて複数通りの区分が考えられ、地域別に区分することの意味に問題がある。
また、民生家庭部門において補助的に推計している地域別のエネルギー需給を比較する際にも、地域別の平均気温、人口密度や住居形態の差異などの要因を考慮しなければ直接の比較はできないことに留意することが必要である。
こうした問題点を認識した上で、総合エネルギー統計のうち産業部門・民生家庭部門・民生業務他部門・運輸旅客部門の一部の最終エネルギー消費について、関連統計の都道府県別再集計や県民経済計算などを活用し都道府県別に総合エネルギー統計を地域分割推計した「都道府県別エネルギー消費統計」*6が別途算定されているので、必要に応じこれを参照ありたい。

2-1-2. 総合エネルギー統計の算定作業の流れ
総合エネルギー統計においては、図2-1-2-1. 「総合エネルギー統計の算定作業の流れ」に示す手順に従い各表を算定し作成している。
総合エネルギー統計の算定作業は、以下の順序で進められている。
#1 発熱量・炭素排出係数の設定
#2 エネルギー需給モジュールの構築
#3 固有単位表の作成(モジュールの合成)
#4 エネルギー単位表(本表・簡易表)の作成
#5 エネルギー起源炭素表(・真発熱量表の作成)
このうち、算定作業部分について、次節以下に具体的な内容を解説する。
[図2-1-2-1. 総合エネルギー統計の算定作業の流れ(略)]

2-2. 発熱量・炭素排出係数の設定
2-2-1. エネルギー源別の総発熱量
(1) 標準発熱量と実質発熱量
エネルギー源別標準発熱量については、表2-2-2-1. 「エネルギー源別標準発熱量表(2005年度改訂表)」(別掲)に一覧を示す。
各エネルギー源の定義・説明と発熱量の設定根拠は、第4章「総合エネルギー統計の構造と解説-2: 「列」の構造と解説」の各エネルギー源の説明部分及び補論10. 「エネルギー源別標準発熱量の改訂について」を参照されたい。
エネルギー源別標準発熱量は経済産業省資源エネルギー庁により概ね5年を目処に改訂されて設定されているが、総合エネルギー統計においては精度を確保する観点から毎年度再計算が可能なエネルギー源別総発熱量については毎年度再計算を行い、これを「実質発熱量」として算定に用いることとしている。

(2) 実質発熱量の算定
総合エネルギー統計においては、各エネルギー源の固有単位(t、m3など)あたりの総発熱量(MJ/固有単位)が毎年度再計算可能なエネルギー源については、以下の方法により毎年度公的統計から再計算を行って算定した実質発熱量を用いる。
毎年度再計算することができないエネルギー源や、物理的性状が安定しているエネルギー源については、各種公的文献・資料などから推計された標準発熱量の値を用いる。
1) 石炭
a. 原料炭
原料炭(コークス用原料炭、吹込用原料炭)については、日本鉄鋼連盟実測値などに基づいて設定されている標準発熱量を、日本貿易統計による原料炭輸入構成比などにより時系列で補間推計した値を用いる。
b. 一般炭
輸入一般炭のうち発電用一般炭については、電気事業連合会の協力により汽力発電所燃料消費実績の発電所別石炭消費実績(乾炭・有灰,約40ヶ所)を、各湿分率に従い有水(湿炭)・有灰に換算し、さらに国産一般炭のうち発電用の消費量相当分を推計により控除し、加重平均発熱量を求めて実質発熱量とする。
発電用一般炭以外の輸入一般炭については、標準発熱量を用いる。
国産一般炭については、石炭エネルギーセンターによる実測値などに基づいて設定されている標準発熱量を用いる。
c. 無煙炭
無煙炭については、炭化度の高い石炭であり性状が安定していると考えられるため、セメント産業での実測値などを参考に設定されている標準発熱量を用いる。

2) 石炭製品
a. コークス、コールタール
コークス、コールタールについては、鉄鋼業の操業管理・品質管理により性状が安定していると考えられるため、日本鉄鋼連盟実測値(コークス)、経済産業省調査値(コールタール)などに基づいて設定されている標準発熱量を用いる。
b. コークス炉ガス・高炉ガス
コークス炉ガス、高炉ガス(発電用)については、電気事業連合会の協力による汽力発電所燃料消費実績の発電所別コークス炉ガス消費実績(約10ヶ所)、高炉ガス消費実績(同)から加重平均発熱量を求め実質発熱量とする。
高炉ガス(一般用)については、高炉の操業条件により変動する数値を標準値に換算して報告されているため、日本鉄鋼連盟実測値に基づいて設定されている標準発熱量を用いる。
c. 転炉ガス
転炉ガスについては、鉄鋼業の操業形態やその発生原理から極めて性状が安定していると考えられるため、日本鉄鋼連盟実測値などに基づいて設定されている標準発熱量を用いる。

3) 原油
a. 精製用原油
精製用原油については、資源エネルギー庁石油輸入調査及び石油連盟資料による代表的な輸入原油の銘柄別物性値(API比重、硫黄分、水分・灰分をアラビアン・ライトなど33銘柄について調査したもの)からJIS-K2279付属書法により推計した銘柄別発熱量を、銘柄別輸入量で加重平均した値を求め実質発熱量とする。
b. 発電用原油・瀝青質混合物
発電用原油・瀝青質混合物については、電気事業連合会の協力による汽力発電所燃料消費実績の発電所別原油消費実績(約50ヶ所)・瀝青質混合物質消費実績(2ヶ所)から加重平均発熱量を求め実質発熱量とする。
c. NGL・コンデンセート
NGL・コンデンセートについては、電気事業連合会の協力による汽力発電所燃料消費実績の発電所別NGL・コンデンセート消費実績(約10ヶ所)から加重平均発熱量を求め実質発熱量とする。

4) 石油製品
a. 原料油
精製半製品(揮発油留分、灯油留分、軽油留分、常圧残油)については、石油連盟資料による代表的な輸入原油の留分別収率・物性値(体積収率、比重、硫黄分、34銘柄)の欠測値を発熱量が類似した原油の物性値から補綴し、JIS-K2279付属書法により推計した銘柄別精製半製品別発熱量を銘柄別輸入量で加重平均した値をそれぞれ求め実質発熱量とする。
純ナフサ、改質生成油、精製混合原料油については、それぞれ性状の類似する揮発油留分、プレミアムガソリン、精製用原油の実質発熱量を用いる。
b. LPG
LPGについては、ブタン・プロパンの2つの成分のみからなり、実質的に殆ど性状が変化しないと考えられることから、ブタン・プロパンの理論発熱量と消費量構成比に基づき設定されている標準発熱量を用いる。
c. ガソリン
ガソリンについては、プレミアム・レギュラー別に品質規格が厳格に定められており、当該規格に見合うよう各種の基材から改質などの工程を経て製造されるため、それぞれの性状は極めて安定していると考えられる。
このため、1998年度に石油連盟・日本自動車工業会が実測したプレミアム・レギュラー別の比重から、JIS-K2279付属書の推計式により硫黄分・水分・灰分を0として求められたプレミアム・レギュラー別の標準発熱量を用い、これをプレミアム・レギュラー別の国内生産量で加重平均した値をガソリン全体の実質発熱量とする。
d. ジェット燃料油
ジェット燃料油については、事故防止の観点から民間航空用(Jet-A,Jet-A1)・防衛用(JP-4,-5,-8)とも品質規格が厳格に定められており、性状が非常に安定していると考えられるため、各種規格値に基づいて算定されている標準発熱量を用いる。
e 灯油
灯油については、常圧蒸留時の灯油留分から直接製造されることが多いことから、4)-a. 原料油中の精製半製品-灯油留分の実質発熱量を用いる。
f. 軽油
軽油については、電気事業連合会の協力により国内で軽油を使用している(又は過去に使用したことのある)約110ヶ所の火力発電所での実測値の算術平均から求めた毎年度の実質発熱量を用いる*7
g. A重油/発電用C重油
A重油と発電用C重油については、電気事業連合会の協力により国内で重油を使用している(又は過去に使用したことのある)発電所約110ヶ所での実測値のうち1990〜2001年度の平均で発熱量40.5MJ/l未満の重油を使用している発電所約20ヶ所の重油の発熱量の算術平均から毎年度の実質発熱量を求め、これをA重油の実質発熱量として用いる。
また、1990〜2001年度の平均で発熱量40.5MJ以上の重油を使用している発電所約90ヶ所の加重平均から毎年度の実質発熱量を求め、これを発電用C重油の実質発熱量として用いる。
h. B重油
B重油については、量的に少なく厳格な議論を行う必然性に乏しいため、標準発熱量を用いる。
i. 一般用C重油・アスファルト他重質石油製品
一般用C重油・アスファルト・他重質石油製品については、主に減圧残油などから製造されること、発電用C重油と連産することから、4)-a. 原料油中の精製半製品-常圧残油留分の生産量・実質発熱量から発電用C重油の生産量・実質発熱量を控除して推計した値を用いる。
j. オイルコークス・潤滑油・製油所ガス
オイルコークス・潤滑油・製油所ガスについては、毎年度の実測値を得ることが困難であることから、標準発熱量を用いる。
k. 回収硫黄
石油精製工程において得られる回収硫黄については、これを純硫黄であると仮定し、硫黄の理論発熱量(9.29MJ/kg)を用いる。

5) 天然ガス・都市ガス
輸入天然ガス(LNG)・国産天然ガスについては、電気事業連合会の協力による汽力発電所燃料消費実績の発電所別LNG(約30ヶ所)・国産天然ガス消費実績(約10ヶ所)からそれぞれの加重平均発熱量を求め実質発熱量とする。
都市ガスについては、出典元のガス事業統計が既にジュール系表示に転換済であり、現在、固有単位はジュール系表示値を標準発熱量で除して算定されていることから、標準発熱量を用いる。

6) 電力
電力については、最終エネルギー消費における発熱量を算定する際には、電力の消費側理論発熱量(3.60MJ/kWh)を実質発熱量として用いる。
電力の一次エネルギー換算発熱量を算定する際には、一般用発電、外部用発電、自家用発電(業種別)の区分毎に、電力の消費側理論発熱量(3.60MJ/kWh)を毎年度の各区分の平均発電効率で除した値を実質発熱量として用いる。
ここで、原子力発電、事業用水力発電、未活用・再生可能エネルギーに関する電力の一次エネルギー換算発熱量は、便宜的に一般電気事業者発電の一次エネルギー換算発熱量*8(発電端、約8.8MJ/kWh、毎年度設定)を用いる。

7) 蒸気
産業用蒸気については、最終エネルギー消費発熱量を算定する際には、100℃1気圧の条件下における乾燥蒸気の標準発熱量(2.68MJ/kg)を用いる。産業用蒸気の一次エネルギー換算発熱量を算定する際には、産業用蒸気の業種別区分毎に、蒸気の標準発熱量を毎年度の各区分の平均蒸気発生効率で除した値を用いる。ここで、回収蒸気など未活用・再生可能エネルギーに関する蒸気の一次エネルギー換算発熱量は、便宜的に産業用蒸気の一次エネルギー換算発熱量の平均値(約3.0MJ/kg、毎年度設定)を用いる。

(3) 主要エネルギー源の実質発熱量の推移
主要なエネルギー源別の実質発熱量の時系列推移の概要について、表2-2-2-2.、図2-2-2-1. 「主要エネルギー源別実質発熱量推移」に示す。
ガソリン、灯油、LPGなど民生・運輸部門で用いられるエネルギー源では品質規格の存在などにより実質発熱量はほぼ一定であるが、石炭、C重油など産業部門用のエネルギー源では実質発熱量が時間とともに比較的大きく変化していることが観察される。
[表2-2-2-2. 主要エネルギー源別実質発熱量推移(略)]
[図2-2-2-1. 主要エネルギー源別実質発熱量推移(略)]

2-2-3. エネルギー源別の真発熱量: 参考値としての真発熱量の推計
総合エネルギー統計の真発熱量表に用いるエネルギー源別真発熱量については、各エネルギー源の総発熱量に、エネルギー源毎のおおよその水素含有量に応じた換算係数を乗じて算定する。具体的には、総発熱量で表示されたエネルギー源別の実質発熱量に表2-2-3-1.「真発熱量の推計方法(参考値)」(別掲)に示す換算係数を乗じて算定する。
真発熱量表における電力の換算については、国際比較を容易化するためIEA*9が真発熱量表による国別エネルギー統計の推計において世界共通で用いている方式に従い、原子力発電の真発熱量による一次エネルギー換算は10.91MJ/kWh、地熱発電は36.0MJ/kWh、水力や他の再生可能エネルギーによる電力は3.6MJ/kWhとして換算する。

2-2-4. エネルギー源別炭素排出係数
総合エネルギー統計のエネルギー起源炭素表においては、総発熱量によるエネルギー消費量あたりの炭素排出係数(gC/MJ)として、表2-2-4-1.「2005年改訂炭素排出係数表」(別掲)を用いる。当該炭素排出係数は、補論9. 「エネルギー起源炭素排出係数の改訂について」に記載された方法により、環境省調査値(1992年5月)を改訂したものである*10
但し、エネルギー起源の炭素の物質収支にかんがみ、高炉ガス、一般ガスの排出係数については、当該報告書にあるような固定的な排出係数の使用により精度上の問題を生じることから、各転換工程の炭素の物質収支が成立するよう炭素排出係数を逆推計し毎年度設定する*11

2-3. モジュールの構築と出典統計
2-3-1. モジュール構造による策定
総合エネルギー統計においては、一次エネルギー供給・転換と最終エネルギー消費にそれぞれ対応した、内部不整合を可能な限り排除した2つのモジュールを一旦構築し、さらにこれを合成して不整合部分を推計・調整することにより全体の整合化を図るという、モジュール構造による策定手法を用いている。
各モジュールは、総合エネルギー統計の本表(固有単位表・エネルギー単位表)と全く同じ「行」「列」構成となっており、モジュールを作成するにあたってその出典となる公的統計上の異常値や本源的不整合を確認しつつ作成を行うことにより、策定過程での品質管理を図っている。
現時点での総合エネルギー統計では、なお精度向上のための改訂や不具合の改善などを要する段階にあること、また出典となる公的統計の項目改廃・基準改定などへの対応を図ることが必要であることから、モジュール構造による策定手法をとることにより、策定段階での作業手順が大幅に簡略化され、精度向上のための改造・修理への対応が迅速化され、さらに算定過程での統計処理の誤謬や精度上の問題点を発見することが容易化されるなどの利点がある。
また、モジュール構造の採択により、総合エネルギー統計の策定過程を順序立って遡及・比較することが容易化されるため、監査・認証(Verification)作業の負担を軽減することができるという副次的利点がある*12

2-3-2. 各モジュールの出典統計と対応部分
(1) エネルギー供給転換モジュール( PEM )
概要: 一次エネルギー供給とエネルギー転換を表現するモジュール
略称: PEM Primary supply & Energy conversion Module
基本統計:
一次エネルギー供給部分(輸入・国内生産)
 エネルギー生産・需給統計*13、日本貿易統計
エネルギー転換部分(電力、熱供給、一般ガス、石油製品)
 電力調査統計・電力需給の概要、ガス事業統計・ガス事業便覧、熱供給事業便覧、石油等消費動態統計(自家発電・産業蒸気関連部分、石油化
学関連部分)、エネルギー生産・需給統計(石油製品製造関連部分)
最終エネルギー消費部分(電力、熱供給、都市ガス販売内訳)
 電力調査統計・電力需給の概要、ガス事業統計・ガス事業便覧、熱供給事業便覧

(2) エネルギー消費モジュール( FCM )
概要: 最終エネルギー消費を表現するモジュール
略称: FCM Final Consumption Module
基本統計:
エネルギー転換部分(石炭製品、自家消費、消費在庫)
 石油等消費動態統計
最終エネルギー消費部分(産業)
 石油等消費動態統計、電力調査統計、ガス事業統計他
最終エネルギー消費部分(民生)
 家計調査報告、電力調査統計、ガス事業統計他
最終エネルギー消費部分(運輸)
 自動車輸送統計、鉄道輸送統計、船舶輸送統計、航空輸送統計及び運輸関係エネルギー要覧*14

2-4. モジュールの合成と推計・調整の方法
2-4-1. モジュールの合成
エネルギー供給転換モジュール(PEM)、エネルギー消費モジュール(FCM)に異常値や本源的不整合がある程度除かれていることを確認した上で、論理的整合性が保たれるように2つのモジュールを合成し、不整合部分がある場合にはこれを推計・調整により接合・補訂することにより、固有単位表を策定する。
モジュールの合成過程における推計・調整は、統計数値の欠測に関する推計・調整、統計数値の不整合に関する推計・調整の2段階で行う。

2-4-2. 推計・調整の方法-1: 統計数値の欠測に関する推計・調整
各モジュールにおいて部分的に必要な統計数値が得られない場合、以下の手順で推計・調整を行う。これらの推計を行った数値部分は各モジュール上「黄色」に着色し明示することとする。
(1) 残差法
総供給量・総消費量が得られているが、部分的に必要な統計数値が得られていない場合、他の項目での供給量・消費量を控除した残差を当該項目の推計値とする。

(2) 比例法
平均的な転換効率・消費率などの指標が得られているが、部分的に必要な統計数値が得られない場合、あるいは同種の用途の特定のエネルギー源の統計数値が得られない場合、当該転換効率・消費率などの指標を比例的に適用し推計値とする。

(3) 直近値法
同一項目の該当期間の統計値が編纂期限までに得られない場合、前年度あるいは前年の統計値やそこから導かれるエネルギー原単位などからの推計値とするか、前年度又は前年の同一統計区分のエネルギー需給の構成比を用いた値を推計値とする。

2-4-3. 推計・調整の方法-2: 統計数値の不整合に関する推計・調整
各モジュールの同一内容の数値が大きな乖離を持つ、合成の結果消費量が負の値となってしまう、統計誤差が±1%を超え、供給を上回る転換・消費が行われエネルギーが「湧き出して」いたり、逆に供給の一部が転換・消費側で捕捉できず「行方不明」になっているなどの不整合を生じる場合、以下の基本的方針により推計・調整を行う。
本推計・調整において、在庫変動や自家消費を調整したり、統計外の品種転換を計上したり、特定の最終消費項目を調整項目とし値を調整した場合には、本解説に明記した上、作表時に当該推計・調整の対象項目を「黄色」に着色して識別し明示することとする。

(1) 固体・液体エネルギー源の不整合
固体・液体のエネルギー源の需給の乖離や統計誤差が±1%を超える場合には、以下の基本的方針により推計・調整を行う。
 1) 正の誤差があり供給量が過大となっている場合(散逸)
固体・液体のエネルギー源(石炭・石油製品)については、必ずしも全ての最終消費項目について統計調査が行われていないことから、過大となる残差分を以下の項目に計上し当該項目の消費量と見なす。
  a. 石炭・石油製品のうち、コークス・C重油・重質石油製品・製油所ガスなどの産業中間材産業中間材の燃料については製造業で消費されていると考えられること、主要製造業種では在庫統計が把握されていることから、最終エネルギー消費の産業部門-製造業のうち「他業種・中小製造業」に残差分を計上する。
  b. 石油製品のうち灯油・A重油・LPGなどの汎用燃料
石油製品のうち灯油・A重油・LPGなどの汎用燃料は消費側で大量の在庫が行われることは希であること、民生業務他部門に関する直接のエネルギー統計調査が殆ど行われていないことから、最終エネルギー消費の民生業務他部門のうち「他・分類不明・誤差」に残差分を計上する。
  c. 石油製品のうちガソリン・軽油などの輸送用燃料
石油製品のうちガソリン・軽油などの輸送用燃料については、運輸部門の最終エネルギー消費を上回る供給分であって産業部門・転換部門で捕捉されていない部分がある場合には、最終エネルギー消費の民生業務他部門のうち「他・分類不明・誤差」に残差分を計上する。
 2) 負の誤差があり供給量が過小となっている場合(不足)
  a. 石炭・石油製品のうち、コークス・C重油・重質石油製品・製油所ガスなどの産業中間材
石炭・石油製品の類似のエネルギー源で統計誤差の符号が反対のエネルギー源がある場合、当該項目間で統計にない品種転換が転換段階・最終消費段階で行われているものと見なし、「品種転換」*15を計上し誤差を調整(相殺)する。
このような品種転換を行い得る適切な項目が存在しない場合、推計・調整を行わず残差分をそのまま誤差とする。
  b. 石油製品のうち灯油・A重油・LPGなどの汎用燃料
石油製品のうち灯油・A重油・LPGなどの汎用燃料について、転換部門での生産と輸入量を上回る最終エネルギー消費を行うことは原理的に考えにくい状態であるため、原則として推計・調整を行わず残差分をそのまま誤差とする。
  c. 石油製品のうちガソリン・軽油などの輸送用燃料
b. 同様に、輸送用燃料のエネルギー需給において、転換部門での生産と輸入量を
上回る最終エネルギー消費を行うことは原理的に考えにくい状態であり、運輸部門の最終エネルギー消費の推計が過大であると考えられるため、残差分を総輸送量で案分し運輸旅客・運輸貨物部門の-「輸送機関内訳推計誤差」にそれぞれ計上する。

(2) 電気・熱・気体エネルギー源の不整合
電気・熱・気体の各エネルギー源については、原理的に在庫が困難であり、供給側の統計をそのまま転換・消費側の値と見なすことが可能であるため、需給の乖離や統計誤差が±1%を超える場合には、以下の基本的方針により推計・調整を行う。
 1) 正の誤差があり供給量が過大となっている場合(散逸)
エネルギー源別の主な用途に応じて、以下の各項目のいずれかに残差を計上し、推計・調整を行う。
   産業部門: 製造業のうち「他業種・中小製造業」
   民生部門: 業務他のうち「他・内訳不明・誤差」
   運輸部門: 運輸旅客・運輸貨物のうち「輸送機関内訳推計誤差」
 2) 負の誤差があり供給量が過小となっている場合(不足)
(1)-2) b., c. 同様に原理的に考えにくい状態*16であるため、原則推計・調整を行わず残差分をそのまま誤差とする。



*3固有単位あたり総発熱量とは、MJ/kg、MJ/l、MJ/m3などをいい、単に「総発熱量」と呼ばれている。
*4転換部門でエネルギー需給が産業構造や企業構造に依存している典型的な例として火力発電所のエネルギー消費が挙げられる。各火力発電所の稼働状況は当該発電所を運営する電力会社などの経営判断に左右される問題であり、地域経済との直接の因果関係は存在しない。石油精製やコークス製造などの、石炭・石油製品製造についても同様である。
*5運輸部門において需要地と消費地が一致しない例としては、高速道路SAでのトラックや長距離バスへの給油、新幹線など長距離鉄道線への給電、航空機・船舶の途中経由地での給油などが挙げられる。
*6「都道府県別エネルギー消費統計」における推計の基礎は本総合エネルギー統計の解説における方法と同じであるが、地域別での区分推計上の仮定などについては、解説資料を別途用意するため当該説明資料を参照ありたい。
*7軽油、A重油について加重平均ではなく算術平均を用いる理由は、発電所の運転開始時の試運転の有無などにより発電用の軽油などの消費量は毎年度大きく変動しており、加重平均を行うと特定の発電所が調達した特定の品種に平均が偏ってしまい、安定した時系列推計結果が得られないためである。
軽油において精製半製品-軽油留分の実質発熱量を用いない理由は、軽油は品質規制の関係上軽油留分・灯油留分・分解軽油などの各種の基材などから深度脱硫などの処理を経て製造されており、現状においてその性状が軽油留分とは対応していないためである。
*8補論1. 「電力の一次エネルギー供給の算定方法について」参照。
*9IEA: International Energy Agency / 国際エネルギー機関
*10第6章エネルギー起源炭素表参照。
*112000年度改訂版の総合エネルギー統計においては、石油精製工程などから発生する「製油所ガス」の炭素排出係数を調整する方法を用いていたが、今次改訂による石油精製部門の推計精度の向上に伴い当該調整は廃止している。第6章エネルギー起源炭素表を参照ありたい。
*122000年度改訂版の総合エネルギー統計においては、一次エネルギー供給、エネルギー転換、最終エネルギー消費の3つのモジュールを合成して策定していたが、一次エネルギー供給とエネルギー転換に関する統計改廃への対応や精度向上のための改善作業が一巡したことを受け、本改訂を機に両モジュールを統合している。総合エネルギー統計の作成手順がなお改訂を要し基礎統計の改廃が継続する現状においては、なおモジュール構造を用いることが合理的であると考えられる。
*13エネルギー生産・需給統計は、2002年度から資源・エネルギー統計と改称したが、本稿では便宜上旧呼称を用いる。
*14運輸関係エネルギー要覧は、2001年度から交通関係エネルギー要覧と改称したが、本稿では便宜上旧呼称を用いる。
*15産業部門においては、自らの機械設備の仕様や環境基準の要請に応じてエネルギー源を調合・配合して利用したり他のエネルギー源を転用することは頻繁に行われている。(例) 原料炭への一般炭の配合、無煙炭の一般炭への転用、重油の再調合など
こうした製造業の工場内での「転換行為」を正確に捕捉することは一般に困難であり、またその調合自体が商業上の機密を構成し統計上開示がなされない場合があるため、このような推計・調整を行うことが必要である。
*16電力・都市ガスなどのエネルギー源の需給が不足する側に誤差を生じている場合において、過去の供給量の推移と比較して大きな乖離が観察されるなど供給側の統計に問題を生じていると判断される場合、必要に応じて比例法、直近値法などを適用し暫定的に異常値を排除することがある。特に、速報値時点においては、供給側の統計の内部不突合などが補正されずに公表される場合が多いことから、暫定的にこのような処理を行う場合がある。


6-2. 直接排出量・間接排出量の推計
6-2-1. 基本的考え方
(1) 直接排出法・間接排出法の基礎概念
エネルギー起源炭素排出量を物理的基礎単位法により算定する場合、その算定の考え方については、大きく分けて直接排出法と間接排出法に分類される*89
本問題が典型的に問題となるのは、電力・熱の産出に関する場合であるため、以下電力・熱の外部とのやりとりがある工場・事業所の場合を例に解説する(図6-2-1-1.)。
直接排出法は、ある工場・事業所の内部で化石燃料の燃焼・酸化により直接排出されたエネルギー起源炭素排出量のみを算定する方式であり、電力・熱を含めて外部から供給された財・サービスに伴うエネルギー起源炭素排出量を加算せず、外部へ供給した電力・熱などの財・サービスに伴うエネルギー起源炭素排出を控除しない方法である。
間接排出法は、ある工場・事業所の内部で化石燃料の燃焼・酸化により直接排出されたエネルギー起源炭素排出量に加えて、外部から供給された電力・熱などの生産に要したエネルギー起源炭素排出量を加算し、一方当該工場・事業所が外部に供給した電力・熱などの生産に要したエネルギー起源炭素排出量を控除して算定する方法である。
[図6-2-1-1. 工場・事業所と直接排出法・間接排出法(電力・熱)の概念(略)]

(2) 直接排出量・間接排出量の具体的算定方法
図6-2-1-1. において、直接排出量、間接排出量を算定すると以下のとおり。
a. 直接排出量: Cin - Cot
          = Cdu + Ceu - Cot
          ≒ Cdx + Cex
          = Cxu
b. 間接排出量: Cin - Cot + Pin*Cpu/Pxx - Pot*Ceu/Pex
          = Cdu - Cot + Pin*Cpu/Pxx + Peu*Ceu/Pex
          ≒ Cdx + Pin*Cpu/Pxx + Peu*Ceu/Pex
          = Cxu + Pin*Cpu/Pxx - Pot*Ceu/Pex
Cin: (=Cdu+Ceu) 内部への投入化石燃料に伴う総炭素量
Cdu:         内部の燃料直接利用設備への化石燃料投入に伴う炭素量
Cot:         外部への内部の燃料直接利用設備からの副生燃料産出に伴う炭素量
Ceu:         内部の発電・熱設備への化石燃料投入に伴う炭素量
Cxu: (=Cdu+Cex) 内部の化石燃料の燃焼に伴う総炭素排出量
Cdx:         内部の燃料直接利用設備からの炭素排出量
Cex:         内部の発電・熱設備からの炭素排出量
Pex: (=Peu+Pot) 内部の発電・熱設備の電力・熱の総発生量
Peu:         内部の発電・熱設備からの電力・熱のうち内部での消費量
Pot:         外部への内部の発電・熱設備からの電力・熱の産出量
Pin:         外部から供給を受けた電力・熱の量
Cpu:        外部から供給を受けた電力・熱の産出に伴う総炭素排出量
Pxx:         内部へ電力・熱を供給する外部の発電・熱設備の電力・熱の総発生量
Cpu/Pxx      内部へ電力・熱を供給する外部の発電・熱設備の炭素原単位
Ceu/Pex      内部の発電・熱設備の炭素原単位
Pco: (=Peu+Pin+Pre) 内部での電力・熱の総消費量
Pre: 内部での電力・熱の回収利用量(相殺)

6-2-2. 直接排出法・間接排出法を巡る議論
(1) 直接排出法の論点
直接排出法においては、ある特定の工場・事業所・住宅・移動体が排出したエネルギー起源の炭素排出量は、当該工場・事業所・住宅・移動体に帰属する。
つまり、第三者に電力・熱や財・サービスなどを供給している場合でも、直接の排出場所を管理する主体がその排出に責任を負い、電力・熱や財・サービスの消費者は責任を負わないという考え方をとる。
この考え方においては、電力・熱や財・サービスを生産・供給する企業部門においては、その電力・熱や財・サービスを1単位生産・供給する際の炭素排出量(=炭素原単位)を減少させる動機づけは機能することとなる。
一方、電力・熱や財・サービスの消費者には排出量が計上されず、直接の責任を負わないこととなるため、自分で燃料を燃焼しない限りいくら電力・熱や財・サービスを消費しても構わないこととなり、消費者への省エネルギーの動機づけは機能しないこととなる。
さらに、当該考え方の下では、自家発電や燃焼型の暖房機器などのエネルギー直接利用設備・機器を現在利用している者は、外部からの購入電力・熱供給にエネルギー源を切替えることによって、いとも簡単に「見掛け上の排出削減」を行うことが可能である。
従って、仮にこの考え方に従って炭素排出の削減を行うとした場合には、電力・熱や財・サービスを生産・供給する企業部門で省エネルギー対策やエネルギー源の低炭素化のための対策が実施され、消費者は対策に必要な費用が転嫁された分を支払うか、あるいは転嫁が不十分であれば、企業部門の収益率が変化し賃金や配当が相対的に低下することで家計行動に反映され問題が解決されることとなる。
実際に、欧州委員会(EU)における排出権取引制度では、直接排出法による排出割当が行われている。
欧州では、欧州固有の事情として、東欧など域外国との電力取引が盛んに行われているが域外国の電力原単位を正確に知ることは事実上不可能であり間接排出量を計算できないこと、旧式な石炭(褐炭)火力発電所や石炭熱供給設備が多数存在し電力・熱の供給側で天然ガス転換を行えば比較的簡単に炭素原単位の改善が見込まれることなどの事情から当該制度が選択されたと考えられる。
一方、仮に日本において直接排出法による排出計算を採用したならば、相対的に電力消費の多い民生業務他部門や民生家庭部門は、最終エネルギー消費が増加しているにもかかわらず、灯油やLPG、都市ガス以外には殆ど排出を行っていないこととなる。
つまり、オール電化住宅の居住者やインテリジェントビルのテナント企業、電池式電気自動車の保有者は、どれだけ電力を浪費的に使用しても一切排出が計上されない反面、電気事業法による供給義務を負っているにもかかわらず一般電気事業者はその発電に関する排出に全ての責任を負うこととなり、電力消費が増えた場合相応の炭素原単位の改善努力を強いられることとなる。

(2) 間接排出法の論点(電力・熱に関する間接排出)
間接排出法においては、ある特定の工場・事業所・住宅・移動体が排出したエネルギー起源の炭素排出量のうち、化石燃料・副生燃料・電力・熱の消費を介して、当該工場・事業所・住宅・移動体が排出したと見なされる量を計上する。
つまり、第三者に電力・熱や財・サービスなどを供給している場合、供給分だけ直接の排出場所を管理する主体は免責され、自家消費分などを除き、電力・熱や財・サービスの消費者が責任の大部分を負担するという考え方をとる。
この考え方においては、直接排出法と反対に、電力・熱を生産・供給する企業部門においては、その電力・熱の炭素原単位を減少させる動機は殆ど機能しないこととなる。一方、電力・熱や財・サービスの消費者には排出量が計上され、直接の責任を負うこととなるため、消費者への省エネルギーの動機づけは機能することとなる。
従って、仮に炭素排出の削減の必要があるのなら、電力・熱の消費者である企業・家計部門で省エネルギーが行なわれ、電力・熱を供給する企業部門では供給量の減少を介して影響が波及することとなる。但し、供給量(=売上高)が減少した場合、電力・熱の供給部門での炭素原単位が増加するか減少するかは当該部門の供給状況や供給量の減り方に依存するため不確実である。
日本において間接排出法による排出計算を採用したならば、相対的に電力消費の多い民生業務他部門や民生家庭部門は、電力の最終エネルギー消費に応じた排出が計上され、省エネルギー努力を通じた責任を分担することとなるが、一般電気事業者は如何なる炭素排出原単位の供給を行っても殆ど責任を負わないこととなる。

(3) 直接排出法・間接排出法の補完的併用- 寄与度分解法
(1),(2)で見たように、直接排出法、間接排出法を単独で用いた場合には、いずれも複数の主体が関与する電力・熱に関する排出を特定の主体にのみ寄与させて整理する結果、排出削減に関しての責任分担に何らかの問題を生じていることが理解される。
ここで、原点に立ち返って、間接排出に関する電力・熱の排出の算定方法を再度考えてみる。簡略化のため、電力の場合を例に解説する。
C [gC] = P [kWh] * Co/Po [gC/kWh] (間接排出に関する排出量の算定式)
     = P [kWh] * F [gC/kWh]
C: 対象主体の電力(・熱)の間接排出に関する排出量[gC]
P: 対象主体の電力(・熱)の消費量[kWh]
Co: 対象主体に供給される電力(・熱)の発生による総排出量[gC]
Po: 対象主体に供給される電力(・熱)の総発生量[kWh]
F (= Co/Po): 対象主体に供給される電力(・熱)の炭素原単位[gC/kWh]
ここで、問題は排出量C が2つの主体の行動(消費者の電力・熱消費量P、電力(・熱)の供給者の炭素原単位F)の積で決定されるため、いずれか一方のみに排出寄与を全部計上することができない点にあり、何らかの方法で、消費量と炭素原単位に関する情報を使って、排出量Cを2つの主体の寄与に近似的に分割することができれば、直接排出法・間接排出法の欠陥が補完されることがわかる。
基準時点での排出量C がある期間内に△C だけ増減した際に、電力・熱消費量P、炭素原単位F にも当然に何らかの変化があるはずであり、この場合の間接排出に関する算定式を書き直すと下記のようになる。
C + △C = (P + △P) * (F + △F)
      = P*F + △F*P + F*△P + △F*△P
∴ △C = △F*P + F*△P + △F*△P

a. 第一次近似による分割
交絡項(△F*△P)が無視できる程度に小さければ、第1次近似として排出量変化の寄与を供給側・消費側に分割することができる(図6-2-2-1.)。
[図6-2-2-1. 電力・熱の排出量の供給者・消費者への寄与度分解: 第1次近似(略)]

b. 第二次近似(幾何近似)による分割
あるいは、両者の行動の結果が複合して生じる交絡項が無視できない大きさである場合には、交絡項を両者に近似的に均等に分配した第2次近似(幾何近似)として排出量全体を供給側・消費側に完全に分割することができる(図6-2-2-2.)。
さらに、第2次近似の方法で時系列の排出量C を遡及し、基準時点での排出量C を無視できる程度に小さくすることができれば、排出量C 全体をも供給者・消費者の寄与に近似的に分割することができる(図6-2-2-3.)。
この場合に、ある特定の起算時点を決めておき、当該時点からの増減を以て供給者・消費者の寄与と考えることも可能である。
[図6-2-2-2. 電力・熱の排出量の供給者・消費者への寄与度分解: 第2次近似(幾何近似)(略)]
[図6-2-2-3. 電力・熱の排出量の供給者・消費者への寄与度分解: 第2次近似の時系列化(略)]

6-2-3. エネルギー起源炭素表を用いた直接排出量・間接排出量の算定
(1) エネルギー起源炭素表における直接排出量・間接排出量の算定
総合エネルギー統計のエネルギー起源炭素表は、直接排出法・間接排出法(電力・熱)の両方の考え方に一長一短があることを認識した上で、各部門のエネルギー起源炭素排出量を両方の方法で簡単に算定できるように構成されている。
さらに、これらの排出量、電力・熱消費量、炭素原単位の時系列変化を用いて、排出量の寄与度分解による評価を試みることも可能である。
各部門の直接排出法による排出量は、各部門に属するエネルギー転換(含自家消費)と最終エネルギー消費の$900 合計部分の合計量である。
各部門の間接排出法(電力・熱)による排出量は、各部門に属する最終エネルギー消費の$990 電力・熱寄与損失/排出量配分後合計*90の量である。

(2) 間接排出量の電力・熱以外への展開・拡大とLCA問題
総合エネルギー統計のエネルギー起源炭素表を用いて、さらに、最終エネルギー消費のうち貨物輸送部門など特定の財・サービス産出部門の産出額(・物量)と$990 電力・熱寄与損失/排出量配分後合計の値の関係から、「平均産出額(・物量)当炭素排出原単位」を求め、これを当該財・サービスの需給に基づいて再配分することにより、電力・熱以外に拡張された間接排出量の算定へこれを展開することも可能である。
あるいは、企業部門が生産した自動車・家電製品や輸送サービスなどの財・サービスを製造・提供する際のエネルギー消費についても、本来これらの財・サービスを消費した者に排出寄与を再分配し分担させるべきとの考え方や、製品の品質・性能によりこれらの製品を使用する際のエネルギー消費が相対的に減少する場合消費者のエネルギー消費減少分の一部を製造元の企業の寄与として再分配し評価するといった考え方を採る場合も、適切な財・サービスの生産量や、特定の機器のエネルギー消費効率などの情報を補完することによってこれを算定することも可能である。
究極的には、総合エネルギー統計の本表とエネルギー起源炭素表の接続表の投入係数の逆行列表は、各エネルギー消費1単位当たりが直接・間接に誘発するエネルギー起源炭素排出量の総量を表現していることになる。
しかし、こうした拡張による試算結果の解釈・評価においては、多くのLCAに関する問題同様に、どこ迄の境界(Boundary)を考慮の対象とするのか、またどこ迄の精度を以て結果を解釈・評価するのか、という問題についての考え方をまず整理しておく必要があることに注意しなければならない。
特に、総合エネルギー統計は、現実のエネルギー需給を「均一性の仮定」(2-1-1. 参照)に基づいて、平均的なエネルギー需給の姿に置換えて仮想的に描いていること、多くのエネルギー源では誤差を特定の部門に集めて処理していること、海外部門については何の情報もないことから、個々の部門のエネルギー消費1単位の増減の影響評価を確実に行い得る迄の精度は保証されておらず、こうした「均一化に伴う歪み」が随所に生じていることをまず認識・考慮した上で、試算結果を解釈・評価しなければならないものと考えられる。



*89経済的基礎単位法によりエネルギー起源炭素排出量を計量する場合には、直接排出量のみが存在し、間接排出量は考慮する必要がない。経済的基礎単位法では、例えば、電力・熱を供給するためのエネルギー消費やエネルギー起源炭素排出に関する措置の費用を含めて、電力会社・熱供給会社への報酬・対価が支払われており、電力会社・熱供給会社の問題と考えるためである。
経済的基礎単位法では、直接排出量・間接排出量に関する物理的整合性の問題がない代わりに、企業部門の事業部や工場・事業所の統合・売却、企業合併や分社化・アウトソーシングなど組織の時系列整合性についての問題が存在するため、両者は単純に優劣がつけられる性質の問題ではない。
*90厳密には、各エネルギー転換部門の自家消費・送配損失は$990 電力・熱寄与損失/排出量合計において再配分されておらず、エネルギー転換部門における消費としている。
エネルギー転換部門の自家消費・送配損失をも含めて間接排出量を算定する場合には、理論上は#2900 自家消費・送配損失を該当する各エネルギー転換部門の生産量に応じて最終エネルギー消費部門に再配分すればよいが、実際は石油製品を使って発電した電力を石油精製部門が再度使ったり、その逆に電力を使って生産した石油製品を再度電力部門が燃料利用しているため、極めて複雑な均衡計算(逆行列計算)を行わなければ再配分することはできず、またその計算結果の解釈は極めて難解なものとなってしまう問題がある。従って、総合エネルギー統計では自家消費・送配損失を再配分していない。


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