経済産業省(2007):エネルギー基本計画.69p.
平成19年3月。


目 次


(頁)
はじめに ……………………………………………………………………… 1
第1章 エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針 …… 5
 第1節 安定供給の確保 ………………………………………………… 5
 第2節 環境への適合 …………………………………………………… 7
 第3節 市場原理の活用 ………………………………………………… 9
第2章 エネルギーの需給に関し、長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策 ………12
 第1節 エネルギーの需給に関する施策の基本的な枠組み …………12
 第2節 エネルギー需要対策の推進 ……………………………………13
 第3節 多様なエネルギーの開発、導入及び利用 ……………………20
 第4節 石油の安定供給確保等に向けた戦略的・総合的な取組の強化………40
 第5節 エネルギー・環境分野における国際協力の推進 ……………47
 第6節 緊急時対応の充実・強化 ………………………………………50
 第7節 電気事業制度・ガス事業制度の在り方 ………………………51
第3章 エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために重点的に研究開発のための施策を講ずべきエネルギーに関する技術及びその施策 ……………………………………56
 第1節 エネルギー技術戦略の策定 ……………………………………56
 第2節 重点的に研究開発のための施策を講ずべきエネルギーに関する技術及びその施策 ………58
第4章 エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 ………62
 第1節 広聴・広報・情報公開の推進及び知識の普及 ………………62
 第2節 地方公共団体、事業者、非営利組織の役割分担、国民の努力等 ………63
 第3節 今後の検討課題 …………………………………………………64

はじめに

 我が国においては、二度に及ぶ石油危機を通じ、石油という単一のエネルギーへの依存度が高いことの問題が認識され、その後、エネルギー需給安定のため、石油代替エネルギー対策や省エネルギー対策が進められた。その結果、我が国の石油依存度は大幅に低下した。しかしながら、我が国の場合、資源小国として石油を始めとするエネルギー資源の大部分を海外に依存していること、エネルギー供給の約5割を石油が占め、しかも中東への依存度が9割近くまで達していること等脆弱なエネルギー供給構造が依然として解決されていない。
 また近年、エネルギーの利用に伴う環境問題、とりわけ、地球温暖化問題への対応が世界的に求められている。我が国においては、エネルギー起源の二酸化炭素が温室効果ガスの大部分を占めるため、これをどう抑制していくかが重要な課題となっている。
 加えて、経済活動の国際化が急速に進展する中、我が国のエネルギーコストが他の先進諸国に比べて高い場合、国民生活のみならず、我が国産業の競争力にも影響を及ぼすため、規制改革等を通じ公正な競争を促進し、効率的なエネルギー供給システムを確保することも重要である。

 こうした課題に対応していくためには、国がそれぞれに対応した施策を総合的・整合的に進めていくことが必要であるとの観点から、エネルギーの需給に関する政策に関し、「安定供給の確保」、「環境への適合」及びこれらを十分考慮した上での「市場原理の活用」を基本方針として定めること等を内容とする「エネルギー政策基本法」(以下「基本法」という。)が平成14年6月に制定された。また、これに基づき、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るための「エネルギー基本計画」(以下「基本計画」という。)を平成15年10月に策定した。
 この基本計画の策定から3年が経過した。この間、国際的にエネルギー需給が逼迫しつつある。高い経済成長を背景としたアジア諸国を中心とするエネルギー需要の急増、産油国における供給余力の低下等のために、石油を始めエネルギーの国際価格が急激に上昇した。こうしたことを背景に、各国は石油・天然ガス等エネルギー資源の獲得に向けた行動を活発化させるとともに、これまで原子力に対して慎重な立場をとってきた主要先進国を始め、これを推進する方向に政策を転換してきている国も見られる。他方、資源産出国においては、資源の国家管理・外資規制を強化する傾向が見られる。このため、国際的にも、エネルギーの安定供給の確保が重要な国家戦略として位置付けられるようになってきている。我が国は平成17年10月、原子力委員会が策定した「原子力政策大綱」を尊重する旨の閣議決定を行い、供給安定性の高い原子力を積極的に推進することとしている。また、石油等の国際エネルギー価格の高騰は、中小企業を始めとする経済活動に止まらず、ガソリン価格や航空運賃の値上げ、更
には農水産物価格その他の国民生活に密接な部分にまで波及しつつある。これにより、国民においてエネルギーが改めて身近な問題として認識されるとともに、エネルギー安定供給の確保が国民生活や経済活動の基盤となる国家としての最重要課題の一つとなっている。
 環境問題に関しては、平成17年2月に気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書が発効した。これに伴い、その第1約束期間(平成20年(2008年)から平成24年(2012年))に向けた取組が関係機関で進められている。加えて、先進国首脳会議(G8)における合意に基づく取組等新たな国際的な取組も開始されている。こうした中、我が国も、京都議定書の目標達成に向けた対策・施策を盛り込んだ京都議定書目標達成計画を策定(平成17年4月28日閣議決定)し、エネルギーに係る地球温暖化対策等を強化・充実するなど、エネルギー問題と気候変動問題を始めとする環境問題の一体的な解決に取り組んでいる。
 さらに、我が国がアジア及び世界のエネルギー問題克服のために主体的な役割を果たす必要性が高まっている。我が国産業はこれまでアジア諸国等を中心に国際展開を進めてきた。国際的にエネルギー需給が逼迫しつつある中、我が国が持続的な成長を確保するためには、アジア、世界経済と共生することを基本的立場として、エネルギー問題に対する我が国の技術力・ノウハウ・経験を積極的かつ戦略的に活用し、地域全体の発展基盤の強化及び国際エネルギー市場の安定化に向けて主体的な役割を果たすことが重要である。

 こうしたエネルギーを取り巻く内外の環境変化に関する現状認識の上に立ち、経済産業省においてエネルギー安全保障を軸とし、平成42年(2030年)に向けて特に重要な施策プログラムを盛り込んだ「新・国家エネルギー戦略」(平成18年5月31日、以下「新戦略」という。)が策定された。さらに、経済成長戦略大綱(平成18年7月6日財政・経済一体改革会議)及び経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006(平成18年7月7日閣議決定)において、新戦略等を踏まえた資源・エネルギー政策の戦略的展開を図ることとした。
 これらを踏まえ、第一に、自立した環境適合的なエネルギー需給構造を実現するため、原子力発電を積極的に推進し、新エネルギーの着実な導入拡大を図ること、第二に、我が国の重要なエネルギー源である石油等化石燃料の安定供給に向けて資源外交の積極的展開、強靱なエネルギー企業の育成等戦略的・総合的な取組を強化すること、第三に、世界のフロントランナーとして省エネルギー政策の一層の充実・強化を図るとともに、我が国として地球温暖化問題に係る実効ある国際的な将来枠組み作りを主導すること、第四に、技術により国内外のエネルギー・環境問題の制約をブレークスルーするため、我が国の優れた技術力の一層の強化及びその戦略的な活用を図ることを中心に、基本計画の見直しを行う。
 なお、エネルギーの供給や利用を進めるに当たっては、安全の確保がその前提となる。エネルギーには、本質的に爆発性や強度の燃焼性、また不完全燃焼による一酸化炭素中毒等、その種類に応じた危険性が伴うことを意識しなければならない。特に、原子力は、その性質上、適切な安全確保が行われない場合、大きな被害の発生する可能性が高まる。国と事業者は、エネルギー技術の性質に応じて適切な徹底した安全確保策を講じることの重要性についてともに再認識し、これに取り組んでいく必要がある。エネルギーの供給や利用に当たっての安全確保については、基本方針に沿った施策を実現する上で前提となる重要な事項であるため、そのための施策については、この基本計画において必要に応じ各個別施策の項において取り上げる。

 基本計画は基本法で明らかにされたエネルギー政策の基本方針を具体化するものであり、今回の基本計画の見直しに当たっても、社会情勢や技術体系についてある程度予見が可能で、国が各エネルギー分野に即した具体的施策を策定できる期間として、今後10年程度の期間を一つの目安として定めることとする。しかしながら、エネルギーに関する研究開発等については、長期のリードタイムを要するものも少なくないため、エネルギー需給に関する長期的な展望を踏まえた取組についても必要に応じ触れる。
 もとよりエネルギー政策は世界のエネルギー情勢、我が国の経済構造や国民のライフスタイルの変化を踏まえて実施されるべきものであり、基本計画に沿って実施されるエネルギー各分野の個々の施策の効果に対する評価も踏まえつつ、少なくとも3年ごとに、また、事情変更が生じた場合等には適時適切かつ柔軟に基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには変更する。なお、エネルギー政策は環境政策、科学技術政策と密接な関連性を持つものであり、相互に連携を図っていくべきである。また、エネルギー政策は国民生活や経済活動の基本に関わるものであるため、他の分野にも増して国民各層の理解の下に進めることが必要であり、その見直しに当たっては、この点に十分留意し、国民各層から広く意見を聴取しつつ進める。


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