本村眞澄(2004):ピークオイルは近づきつつあるのか? 石油・天然ガスレビュー、2004年11月、1-7.


『2004年に入ってからの油価の高騰は凄まじい。その要因として、イラク戦争後の展望の開けない治安問題、ナイジェリア・ベネズエラ両産油国の社会不安、米国におけるガソリン品質基準の変更による流通阻害・恒常的な在庫不足・ハリケーン「アイバン」の影響などが挙げられているが、さらにOPEC諸国の供給余力の先細りと中国・インドを始めとする東アジア地域の旺盛な需要からくる先行きの需給逼迫懸念が挙げられることがある。
 短期的な局面はともかくとして、油価は中期の生産量見通しも織り込んで動いているのだろうか? 数年先にあるかもしれない需給逼迫のために、何年か後に本当に逼迫してからでなく、今日、この日に石油を買い込むのだろうか? しかし、もしも市場の大多数の人が需給逼迫という観念に囚われているとしたら、市場はそれを前提に機能する。石油市場は、カジノの様相を呈してきているようである。
 そして近づく需給逼迫の地質・技術的な根拠として、石油生産の「ピーク問題」が材料とされることがある。
 世界の石油需要が堅調な伸びを見せる一方で、2010年前にも世界の累積石油生産は埋蔵量の半分を超えて石油生産量がピークを迎え、それ以降減退局面に入るという見解が「石油ピーク問題」である(Campbell & Laherrere, 1998、Deffeyes, 2001)。オイル・アンド・ガス・ジャーナル誌も、2004年の7月から8月にかけてこのテーマで連載を組むなど、最近再び注目を集めている。
 本稿は、「石油ピーク問題」が現在の高油価の原因ではないとの立場であるが、需給がタイトな局面では、「石油ピーク問題」は常連のように顔を出す議論である。これは、いかにももっともらしく聞こえる分、気分的に語られることも多く、賛成反対を含め噛み合った論争になっていないように思われる。本稿では、その主張の根拠を多少詳らかにし、批判と擁護の双方の議論を検討してみる。』

1.石油・天然ガスの将来の埋蔵量をどう見るべきか?
 (1)石油資源は本質的に有限ではあるが…
 (2)石油における悲観論−新マルサス主義とHubbert曲線
 (3)長期有望論(Cornucopians「豊饒の角」)を支える開拓者精神
2.石油埋蔵量をどう見るか?
 (1)石油埋蔵量の概念について
 (2)世界の石油確認可採埋蔵量
 (3)世界の石油究極可採資源量
3.非在来型石油資源の見通し
4.投資と技術革新がこれからの問題点
参考文献


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