本田博巳(2005):石油生産ピークは今年中に来るのか? Hubbert曲線の信憑性と探鉱開発技術者の役割石油・天然ガスレビュー39(4)、67-77.


『一国あるいは世界の石油生産量の歴史的変遷を示すグラフはベル状の形を示すとされ、その曲線のピークをこのような石油生産量推移の予測の開祖であるM. King Hubbertに因んで、Hubbert's Peak(あるいはピークオイル)と呼ぶ。Hubbert's Peakは石油資源の量的限界に関する世界的に重要な主題であることから近年、様々な公的な場で議論されてきた。近くは2004年12月に開かれたAmerican Geophysical Unionでのシンポジウムの主題であったし、2005年度物理探査学会のシンポジウムの主題でもあった。分野違いと思われる雑誌“数学セミナー”にも記事が出るほどである(文献1,2)。Deffeyes(2005;文献7)はそのHubbert's Peakが今年の11月24日(感謝祭の日)に来ると予想する。またDeffeyes(2001;文献6)においても2009年までに到来するとした。この石油生産量の峠については近年、「石油生産の将来が暗い」という議論が日本においても目立ってきている(文献15,16)。事実を踏まえて何をすべきか、考える必要があろう。
 2002年1月、石油技術協会探鉱技術委員会で筆者は「“Hubbert's Peak”:21世紀初頭での問題」という題でDeffeyes(2001)の本の紹介とインドネシアの原油・天然ガス生産への応用を紹介した(文献10)。当時はまだ反響が薄かったという印象が残っている。本誌では、本村(2004;文献21)は総説的な解説をしており、井上(2005;文献13)は数理モデルによる将来的な発見開発の可能性について肯定的に議論している。ここではHubbert's Peakが一人の石油探査技術者にどのように映ってきたかを中心に記すことにしたい。石油・可燃性天然ガスの資源的な限界という問題は地球上のほとんどすべての人にかかわることであり、おのおのの人が何かしら考えるところがあろう。したがって、多様な考えの1つをここには記すということにならざるを得ない。
 なお、ここでは「石油」は原油、可燃性天然ガスの総称として用いる。』

1.Hubbert's Peakとの出会いから
2.石油可採埋蔵量の主観性
3.悲観論と石油探鉱開発技術者
4.現在の問題の所在

5.ピークに対する対応:合衆国での事例
6.世界原油生産量変遷
7.終わりに
謝辞
引用文献


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