海洋基本計画 


目次

総論 ......................................................................................................................1
 (1)海洋と我々との関わり............................................................................... 1
 (2)我が国の海洋政策推進体制........................................................................ 2
 (3)本計画における政策目標及び計画期間...................................................... 3

第1部 海洋に関する施策についての基本的な方針..................................................6
1 海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和.............................................. 6
2 海洋の安全の確保............................................................................................ 7
3 科学的知見の充実............................................................................................ 8
4 海洋産業の健全な発展................................................................................... 10
5 海洋の総合的管理...........................................................................................11
6 海洋に関する国際的協調............................................................................... 13

第2部 海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策.........15
1 海洋資源の開発及び利用の推進..................................................................... 15
 (1)水産資源の保存管理................................................................................ 15
 (2)エネルギー・鉱物資源の開発の推進....................................................... 16
⇒※1
2 海洋環境の保全等.......................................................................................... 17
 (1)生物多様性の確保等のための取組........................................................... 18
 (2)環境負荷の低減のための取組.................................................................. 18
 (3)海洋環境保全のための継続的な調査・研究の推進.................................. 19
3 排他的経済水域等の開発等の推進................................................................. 19
 (1)排他的経済水域等における開発等の円滑な推進..................................... 20
 (2)海洋資源の計画的な開発等の推進........................................................... 20
⇒※2
4 海上輸送の確保.............................................................................................. 22
 (1)外航海運業における国際競争力並びに日本籍船及び日本人船員の確保.. 22
 (2)船員等の育成・確保................................................................................ 23
 (3)海上輸送拠点の整備................................................................................ 23
 (4)海上輸送の質の向上................................................................................ 24
5 海洋の安全の確保.......................................................................................... 24
 (1)平和と安全の確保のための取組.............................................................. 24
 (2)海洋由来の自然災害への対策.................................................................. 25
6 海洋調査の推進.............................................................................................. 26
 (1)海洋調査の着実な実施............................................................................. 26
 (2)海洋管理に必要な基礎情報の収集・整備................................................ 27
 (3)海洋に関する情報の一元的管理・提供.................................................... 27
 (4)国際連携.................................................................................................. 27
7 海洋科学技術に関する研究開発の推進等...................................................... 28
 (1)基礎研究の推進....................................................................................... 28
 (2)政策課題対応型研究開発の推進.............................................................. 28
 (3)研究基盤の整備....................................................................................... 29
 (4)連携の強化............................................................................................... 30
8 海洋産業の振興及び国際競争力の強化.......................................................... 31
 (1)経営基盤の強化....................................................................................... 31
 (2)新たな海洋産業の創出............................................................................. 32
 (3)海洋産業の動向の把握............................................................................. 33
9 沿岸域の総合的管理...................................................................................... 33
 (1)陸域と一体的に行う沿岸域管理.............................................................. 33
 (2)沿岸域における利用調整......................................................................... 35
 (3)沿岸域管理に関する連携体制の構築....................................................... 35
10 離島の保全等.............................................................................................. 35
 (1)離島の保全・管理.................................................................................... 36
 (2)離島の振興............................................................................................... 37
11 国際的な連携の確保及び国際協力の推進................................................... 37
 (1)海洋の秩序形成・発展............................................................................. 38
 (2)海洋に関する国際的連携......................................................................... 38
 (3)海洋に関する国際協力............................................................................. 39
12 海洋に関する国民の理解の増進と人材育成............................................... 40
 (1)海洋への関心を高める措置...................................................................... 40
 (2)次世代を担う青少年等の海洋に関する理解の増進.................................. 41
 (3)新たな海洋立国を支える人材の育成....................................................... 41

第3部 海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要なその他の事項..42
1 海洋に関する施策の効果的な実施................................................................. 42
2 関係者の責務及び相互の連携・協力............................................................. 42
3 施策に関する情報の積極的な公表................................................................. 42

⇒※1
(2)エネルギー・鉱物資源の開発の推進
 エネルギー・鉱物資源の開発は、民間企業にとりリスクが高く、技術的な困難も伴うため、下記のとおり基礎調査や技術開発等について、国が先導的な役割を担う。その際、専門家の意見を聴きつつ、計画的、機動的に実施するとともに、成果を民間企業に引き継ぐことにより、資源開発を着実に推進する。
ア 石油・天然ガス
 石油・天然ガスの賦存が見込まれる地質構造は、周辺海域に広く存在しているが、これらの大部分は未探査であり、昭和36年以来の国による実績は、二次元物理探査12万キロメートル、三次元物理探査6千平方キロメートル、基礎試錐しすい27坑にとどまっている。このため、平成19年度に導入された三次元物理探査船を活用し、周辺海域における賦存状況の把握を目的として、探鉱実績の少ない海域について重点的に基礎物理探査を実施するとともに、賦存可能性が高いと判断される海域において基礎試錐しすい等の基礎調査を実施する。このような調査等を通じ、我が国技術者への探査技術の移転を図る。また、このような基礎物理探査等から得た成果については、民間企業に引き継ぐ。
イ メタンハイドレート
 メタンハイドレートは、南海トラフ等に相当量の賦存が見込まれており、商業生産が可能となった場合には、将来のエネルギー安全保障上重要かつ有望な国産エネルギーとなりうる。一方、生産技術の開発が課題となっており、平成13年以降国による技術開発が継続され、平成18年度にカナダ北部において陸上産出試験を実施し、減圧法によるメタンハイドレートの産出に成果を得ている。このため、賦存状況の把握のための調査を実施するとともに、周辺海域での産出試験、経済性の評価、生産に伴う環境への影響の評価技術の確立等、将来の商業生産に必要な技術開発等を計画的に推進する。
ウ 海底熱水鉱床及びコバルトリッチクラスト
 周辺海域に賦存することが明らかになりつつある海底熱水鉱床及びコバルトリッチクラストは、銅、鉛、マンガン、コバルト等の貴重な資源の安定供給源となりうる。海底熱水鉱床は、これまでの探査の結果、沖縄海域及び伊豆・小笠原海域で有望な鉱床が確認されているが、資源量及び環境への影響等に関する情報が十分得られていない。また、コバルトリッチクラストは、周辺海域に鉱床が確認されているが、賦存状況の把握等が今後の課題となっている。
 このため、海底熱水鉱床については、周辺海域における賦存状況の把握のための調査を実施するとともに、開発に伴う環境への影響の評価技術の確立、海洋環境基礎調査、採鉱技術の開発等、将来の商業化に必要な技術開発等を計画的に推進する。また、コバルトリッチクラストについては、これまで得られた試料の分析を踏まえつつ、必要な調査を推進する。
エ その他の資源の研究開発等
 管轄海域に賦存し、将来のエネルギー源となる可能性のある自然エネルギーに関し、地球温暖化対策の観点からも、必要な取組や検討を進める。洋上における風力発電については、設置コストの低減、耐久性の向上のための技術的課題とともに、環境への影響を評価する手法の確立等に取り組む。また、波力、潮汐等による発電については、海外では実用化されている例もあるので、国際的な動向を把握しつつ、我が国の海域特性を踏まえ、その効率性、経済性向上のための基礎的な研究を進める。』

⇒※2
(2)海洋資源の計画的な開発等の推進
ア 水産資源

 生物資源は、再生産が期待できることから、適切に管理することにより、枯渇させることなく持続的に利用することが可能である。我が国の管轄権が及ぶ海域の水産資源については、重要水産資源についての漁獲可能量等を定めている「海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画」に基づき、保存・管理を計画的に推進するとともに、資源の状況等を踏まえ、適宜同計画の見直しを行う。
 また、「海洋水産資源の開発及び利用の合理化を図るための基本方針」に基づき、水産動植物の増養殖の推進、新漁場における漁業生産の企業化の推進、漁場における新漁業生産方式の企業化の促進等に取り組む。
イ エネルギー・鉱物資源
 陸域の資源に乏しい我が国は、需要量のほぼすべてを海外からの輸入に頼ってきたが、近年は資源価格の高騰に伴い資源産出国において資源ナショナリズムが急速に高まりつつある。このような状況は、我が国のエネルギー・鉱物資源の安定供給確保にも影響を及ぼしかねないものである。この対策として、現在、我が国は資源外交を活発化し資源産出国との関係強化に努めているが、これに加えて、他国の資源政策に影響されない安定的な自らの資源供給源を持つための取組を進める必要がある。天然資源に対し管轄権の及ぶ排他的経済水域等においてエネルギー・鉱物資源の探査・開発を行うことは、この意味から極めて重要である。
 ただし、海洋におけるエネルギー・鉱物資源の開発には未解決の技術的課題が多く残されている。このため、国の主導による本格的な探査・開発を明確な目標と綿密な計画の下で着実に推進することによって、中期的に商業化を目指すことが国家戦略として妥当である。
 このような認識から、排他的経済水域等における当面の探査・開発の対象を石油・天然ガス、メタンハイドレート及び海底熱水鉱床とし、必要な政策資源を集中的に投入するとともに、コバルトリッチクラストについては今後の調査・開発のあり方について検討する。その際、現在の高水準の資源価格は、国際市場における構造的な需給逼迫ひっぱく状況を踏まえると今後も中長期的に継続する可能性が高いことから、探査・開発は可能な限り早い速度で進め、成果を得る必要がある。このため、いまだ商業化されていないメタンハイドレート及び海底熱水鉱床については、今後10年程度を目途に商業化を実現することを目標とする。これらの目標に向けて、おおむね以下に示す手順で探査・開発を推進する。
 石油・天然ガスについては、より水深の深い海域の比重を高めつつ、二次元物理探査、三次元物理探査及び基礎試錐しすいを広域展開する。特に、三次元物理探査については、探鉱面積を大幅に拡大するため、平成19年度に導入した調査船を十分に活用し通年調査を実施する。メタンハイドレートについては、平成20年度までにカナダで行う陸上産出試験により得られた技術課題の評価を行う。この結果を踏まえ、平成21年度から次の研究段階に移行し、周辺海域における海洋産出試験等の実施により将来の商業化実現を目指す。
 海底熱水鉱床については、平成24年度までに沖縄海域及び伊豆・小笠原海域を中心に資源量と環境影響に関する調査を行うとともに、採鉱技術、金属回収技術等の検討を行い、開発課題を明らかにする。この結果を踏まえ、次の研究段階に移行し、将来の商業化実現に向けた技術開発等を行う。コバルトリッチクラストについては、これまでに得られた試料の分析等を踏まえ、調査・開発のあり方を検討した上で、有望な海山を抽出するための調査を行う。また、老朽化が著しい調査船の維持・更新の方法について検討し、適切な措置を講ずる。
 以上を確実に推進するため、平成20年度中に、関係府省の連携の下、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画(仮称)」を策定する。同計画においては、目標達成に至るまでの探査・開発の道筋とそのために必要な技術開発等について極力具体的に定める。あわせて、これら探査・開発において、国、研究機関及び民間企業が果たすべき役割分担を明示する。
 ただし、資源探査の成否には不確定要素が少なからずあり、それらが計画全体の進行速度を大きく左右する可能性があることは否めない。また、資源価格の水準は商業化のタイミングに影響する。このため、同計画が常に適切な計画であり続けるよう、必要に応じ、探査の進捗しんちょくや資源価格の見通し等の諸状況を踏まえて見直しを行う。また、国による探査・開発の成果を民間企業に円滑に引き継ぐための環境整備のあり方や、海洋におけるこれらの企業活動に対する国の関与のあり方についても検討し、早期に適切な措置を講ずる。』




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