『◆水資源の状況
わが国は世界でも有数の多雨地帯であり、年平均降水量は1,714mmである。これは世界の年平均降水量約970mmの約2倍となっている。しかし、これに面積を掛けて人口で割ると(年平均降水総量)約5,200m^3/人・年となり、世界の平均である2万7,000m^3/人・年の5分の1程度であり、諸外国に比べ必ずしも豊富なものではない。
これらの水は、河川や湖沼、地下水、湧水などとして存在する。しかし、これらの水は定常的なものではなく、ダムや河口堰などの水資源開発施設によって確保され、浄水場などの水道施設やその他のさまざまな施設によってさまざまな用途に供給され、私達の生活や経済活動が支えられている。
しかし、水は決して豊富な資源ではなく、限りある資源である。わが国の水需要は、生活水準の向上、産業経済の進展等にともなって今後とも増加が見込まれるが、ダムなどによる水資源の開発は、しだいに困難な状況になってきている。
1997年3月末現在、ダム等の水資源開発施設による河川水の開発水量のうち、都市用水(生活用水および工業用水)の開発水量は約161億m^3/年である。一方、河川流量が豊富なときにだけ取水できる、いわゆる不安定取水の量は約23億m^3/年であり、都市用水の使用量に対する割合は約7.1%となっている。
このため、水需要の増大に対して水資源開発が追いつかず不安定取水に頼らざるを得ない現況だが、近年の少雨傾向により、水需要の逼迫している地域を中心に渇水が頻繁に発生し、国民生活や経済、社会活動に大きな影響を与えている。
1994年におけるわが国の都市用水および農業用水の取水量は、年間約908億m^3と推計され、このうち河川水等が86%、地下水が14%と推計されている。地域的には、北海道、東北、山陽、北九州および沖縄で河川水等への依存が9割以上となっており、逆に関東内陸、東海および四国では、地下水依存が2割以上を占めている。なお、海水淡水化プラントは、全国で12万8,309m^3/日(1997年3月現在)の造水能力に達しており、生活用が47ヵ所、6万1,043m^3/日の造水能力、工業用が26ヵ所、6万7,266m^3/日の造水能力となっている。
◆水使用の状況
図2-2に示したように、水の用途には、飲み水をはじめ調理、洗濯、入浴、水洗トイレ、洗車、打ち水など家庭で使用する家庭用水があるほか、飲食店、デパート、ホテル、プール等の営業用水、事務所等の事業所用水、噴水、公衆トイレ等の公共用水、消化用水等といった都市活動用水としても使われている。また、工場などで使用する工業用水、田畑のかんがいなどに利用する農業用水、および親水公園や人工滝、小川、小池などに利用する環境用水などもある。
農業用水 | 水田かんがい用水、畑地かんがい用水、畜産用水等 | ||
都市用水 | 工業用水 | ボイラー用水、原料用水、製品処理用水、洗浄用水、冷却用水、温度調節用水等 | |
生活用水 | 都市活動用水 | 営業用水(飲食店、デパート、ホテル、プール等)、事業所用水(事務所等)、公共用水(噴水、公衆トイレ等)、消火用水等 | |
家庭用水 | 飲料水、調理、洗濯、風呂、掃除、水洗トイレ、散水等 |