世良(1999)による〔『資源・エネルギー工学要論』(6-8p)から〕


1.2 エネルギーの種類の概要と分類
 エネルギーとは平易にいえば、運動、熱、電力などのような「何らかの仕事をする力」であるということができる。学術的に分類すれば、i)位置エネルギー(水力発電など)、ii)運動エネルギー(水車、風力発電など)、iii)熱エネルギー(内燃機関、火力発電、地熱利用など)、iv)化学エネルギー(酸化反応熱、電極反応、燃料電池など)、v)核エネルギー(核分裂、核融合)、vi)光エネルギー(太陽電池など)、vii)電気エネルギー(照明など)、viii)その他、のようになる。
 具体的には大きく分ければ図1.4に示したように、@再生可能エネルギー(renewable energy)、A化石燃料エネルギー(fossil fuel energy、化学エネルギー)、B核エネルギー(nuclear energy、化学エネルギー)などに分類できる。@には水力、太陽、風力などの自然エネルギー(natural energy、多くは物理エネルギー)とバイオマスエネルギー(biomass energy、生物・化学エネルギー)がある。
エネルギー 再生可能
エネルギー
自然エネルギー
(物理エネルギー)
水力(位置)エネルギー 発電
太陽エネルギー 太陽光エネルギー 発電
太陽熱エネルギー 発電、
給湯
地熱エネルギー 浅部エネルギー(<3000m)
深部エネルギー(>3000m)
高温岩体エネルギー(>10000m)
マグマエネルギー(>数万m)
風力(運動)エネルギー 発電
海洋エネルギー 潮力、波力、海流(運動エネルギー)
温度差(熱エネルギー)
バイオマス
エネルギー
(生物、化学
エネルギー)
天然生産物 森林、薪炭、木材、農作物、アルコール発酵物 熱源、
発電
農・畜産廃棄物 芋、とうきび・きび殻、メタン発酵ガス
都市廃棄物 ゴミ発電
化石燃料
エネルギー

(化学エネルギー)
石油
石炭
天然ガス
オイルサンド、オイルシェール
メタンハイドレート
核エネルギー 核分裂
エネルギー
濃縮ウラン利用(重水炉、軽水炉)
プルサーマル利用
プルトリウム利用(高速増殖炉)
核融合
エネルギー
重水素、三重水素の利用

図1.4 エネルギーの種類と分類

 エネルギーの形態には直接には利用しにくいものと、直接利用できる便利な形態のものがある。前者を一次エネルギー(primary energy)とよび、石炭、石油、天然ガス、自然エネルギー(水力、風力、太陽、バイオマスエネルギーなど)、核燃料など自然界に存在しエネルギー源となるものがこれに相当する。後者は熱、動力、電力、都市ガスなどであり二次エネルギー(secondary energy、あるいは最終エネルギー)とよばれる。一次エネルギーは直接利用できないので、二次エネルギーに変換する必要がある。したがって、「二次エネルギーは、一次エネルギーを利用しやすい形態に変換したエネルギー」ということもできる。
 化石燃料(fossil fuel;石炭、石油、天然ガス、オイルサンドなど)はエネルギー密度が高く使いやすいが、資源量には限界がある(1.5節参照)。自然エネルギーは量的には無限量であるが、その多くはエネルギー密度が低く、また現状では変換効率が低いので、現在利用されている自然エネルギーの量は世界の一次エネルギーのうちの約2.5%程度にしか過ぎない(第4章参照)。水力エネルギーは量的にも多く、変換効率も高いが資源が遍在している問題がある。バイオマスエネルギー(植物エネルギー)はエネルギー生産効率は低いが、その由来は自然エネルギー(太陽エネルギー)であり環境適合型エネルギーであるので、太陽エネルギーの直接的利用(4.3節)とともに、バイオマスエネルギーの利用には今後大きな期待が寄せられている(4.5節)。
 現在最も広く利用されている一次エネルギーは、熱エネルギー(化学エネルギー、地熱エネルギーなど)である。化学エネルギーには核エネルギーも含まれるが、現状ではその大部分は燃焼反応熱であり、その資源は化石燃料(第2章)である。化石燃料が好んで用いられる理由は、エネルギー密度が高く安価であることであるが、反面、資源量に限界があること、環境的な問題を含んでいることなどの欠点がある。現在、化石エネルギーが世界の一次エネルギーに占める割合は約90%に達しており(1.5節参照)、エネルギー的には「20世紀は化石燃料の時代」といわれる由縁である。21世紀においても、その割合は低下はするものの、化石燃料が首座を譲ることはない(資源論、環境論からすれば不本意ではあるが、引退することはできない)であろう(1.5.1B節参照)。熱エネルギーほそのまま用いられることも多いが、二次エネルギー(電気エネルギー、機械エネルギー・動力など)に変換して用いられることも多い。』