須藤・平野(1994)による〔『日本の工業原料鉱物資源(その1)』(26-27p)から〕


1.はじめに
1.1 工業原料鉱物とは?
1.2 金属鉱物から工業原料鉱物へ
1.3 ESCAPワーク・ショップ

2.日本の工業原料鉱物
 日本の工業原料鉱物(非金属鉱物)は、第二次世界大戦以後、日本経済の復興の原動力として重要な役割をはたした。例えば、木節粘土や蛙目粘土は輸出の花形商品であった陶磁器の原料として、石灰石は国土再建を支えたセメントの原料として、それぞれ重要な役割を果たした。この結果工業原料鉱物鉱業は、戦後の日本経済の発展とともに拡大し、その生産高は1972年には金属鉱業のそれを追越し、1980年から1987年にかけての停滞期があったものの、1990年現在約2330億円に達し、金属鉱業、石炭鉱業、石油・天然ガス鉱業の生産高をしのぎ、日本の鉱業総生産高の47.4%を占めるに及んでいる(第1、2図:略)(注:産業別鉱業生産高の残りは、石炭鉱業 26.3%、石油ガス鉱業 18.7%、金属鉱業 7.6%)
 日本で現在採掘・生産・利用されている工業原料鉱物は25種類(“鉱種”と言う)以上に及んでおり、その主要なものと各鉱種別の鉱業生産額、鉱種グループ別の戦後の生産推移を、第1表、第3、4図(略)に示した。生産額の多い順に、石灰石・珪石・珪砂・ろう石・耐火粘土・ドロマイト・かんらん岩・ベントナイト・長石……といった順になっており、炭酸塩岩類(石灰石、ドロマイト、大理石)が、全体の約三分の二を占めている。生産推移においても、炭酸塩岩類の伸びが著しい。
第1表 鉱種別生産金額(1990年)

区分

鉱種

鉱山数

生産金額
(百万円) (%) (百万円) (%)
珪質資源 珪石 69 37,707.97 17.30 16,376.90 7.51
珪砂 52 20,539.10 9.42
珪藻土 17 791.96 0.36
長石質資源 長石

30

4,250.16

1.95

297.43 0.14
アプライト 1,352.24 0.62
風化花崗岩 2,600.48 1.19
粘土質資源
 堆積性粘土



 熱水性粘土
木節粘土

86

19,985.52
8,595.15



11,390.37

9.17
3.94



5.23

1,493.41 0.69
蛙目粘土 4,598.08 2.11
頁岩粘土 583.29 0.27
雑粘土 1,920.37 0.88
カオリン 13 861.09 0.40
ろう石 40 8,415.55 3.86
陶石 17 2,039.27 0.94
絹雲母   74.46 0.03
炭酸塩岩類 石灰石 245

144,876.20

66.48

138,804.37 63.69
大理石 12 150.93 0.07
ドロマイト 9 5,920.90 2.72
その他

ベントナイト 16

11,119.13

5.10

3,830.17 1.76
酸性白土 9 590.96 0.27
滑石 8 308.14 0.14
かんらん岩 16 4,612.67 2.12
その他* 6 1,777.19 0.82
合計   649 217,938.96 100.00 217,938.96 100.00
「本邦鉱業の趨勢」1990年版に基づいて作成。*:その他には重晶石、沸石、黒鉛、石綿などが含まれます。

 今回は、これら経済的に重要な鉱種を中心に、各鉱物の産状・成因、鉱石の品質・特徴、戦後の生産推移、最近(1990年現在)の開発・生産・利用状況などについて次のようなグループに分けて概説することとする。なお、本報ではその1として、珪質資源と長石質資源について述べ、そのほかについては号を改めて報告する。
 1.珪質資源−白珪石・軟珪石・炉材珪石、天然珪砂・人造珪砂
 2.長石質資源−長石・アプライト・風化花崗岩
 3.粘土質資源
  −1)堆積性粘土−耐火粘土(木節・蛙目・頁岩粘土)
  −2)熱水性粘土−ろう石・陶石・カオリン・セリサイト
 4.炭酸塩鉱物(岩)資源−石灰石・大理石・ドロマイト
 5.その他の鉱物資源−タルク・ベントナイト・酸性白土、かんらん岩』

2.1 珪質資源
2.1.1 珪石
2.1.2 珪砂
2.1.3 珪藻土
2.2 長石質資源
文献