須藤(2001)による〔『日本の長石及び長石質資源』(50-51p)から〕


1.はじめに

2.沿革及び概要
 長石及び長石質資源は、陶磁器の素地及び釉薬として欠くことのできないものである。その利用の歴史は極めて古いものとみられるが、鉱業的に最初に採掘されたのは、愛知・岐阜県の風化花崗岩(“さば”、“そうけい”)であったと考えられる。
 1900年代に入ると、岐阜・滋賀県のアプライトが、1920年代には福島県のペグマタイトが開発され、1939年には年間の採掘・利用量は7,600tに達した。これとともにその用途も、1930年頃からガラス原料・ホーロー釉薬・研削砥石ボンドなどに拡大した。
 第二次世界大戦のため、1945年には、採掘・利用量は1,800t/年にまで落ち込んだが、輸出用陶磁器産業の再開・発展とともに、採掘・利用量は増加し、1955年には10万t/年となった。
 1955年以降は、我国経済の飛躍的発展に伴い、ガラス・衛生陶器・建築用タイル原料などの需要が急増、変質花崗岩・風化花崗岩などの長石質資源の開発が進み、年間採掘・利用量は、1970〜1973年には、50〜60万t/年に達した。
 1973年にはオイル・ショックに伴い、採掘・利用量は40万t/年に減少したが、その後次第に回復・増加し、1990年には100万tを突破し、1994年には年間採掘量約120万tを記録した。しかし、その後、景気の低迷・タイル生産の落ち込みなどのため、生産は漸減し、1997年には104万tとなっている。
 近況を地域別に見ると開発条件の悪化、鉱山の老朽化が目立つ滋賀県信楽地区の生産量が減少し、愛知〜岐阜・長野・佐賀における風化花崗岩の生産が増加している。戦後の採掘・利用量の推移は第1表(巻末)、第1図(略)に示したとおりである。
 我が国においては、長石質資源の需要(利用量)と供給(採掘量)は、ほぼ均衡しており、輸出・輸入量はごく少ない。ペグマタイト長石がインド・中国・韓国等より年間4,500t程度、ネフェリン及びネフェリン閃長岩がカナダより年間1,000t程度輸入され、精製・調整された長石類が東南アジア方面へ年間2万t前後輸出されている。
第1表 長石及び長石質資源の生産推移。(単位:千トン/年)
種別
ペグマタイト 交代性長石 選別長石 長石
アプライト 変質花崗岩 風化花崗岩 その他 長石質資源計 総計
1950
1955
13
26
5
10
0
0
18
36
7
26
0
2
52
36
1
4
60
68
78
104
1960
1965
1970
1975
1980
42
44
34
18
19
18
20
19
12
14
0
0
5
4
6
60
64
58
34
39
47
97
141
106
120
28
122
216
168
247
50
60
135
108
203
5
7
12
10
20
130
286
504
392
590
190
350
562
426
629
1981
1982
1983
1984
1985
14
14
13
13
14
9
11
16
18
14
7
9
9
8
8
30
34
38
39
36
147
139
183
173
171
241
211
263
270
286
201
204
215
228
237
24
23
25
23
26
613
577
686
694
720
643
611
724
733
756
1986
1987
1988
1989
1990
15
17
15
14
15
13
12
10
12
19
15
29
35
33
42
43
58
60
59
76
183
173
166
192
179
275
274
336
274
288
255
315
377
395
523
27
33
37
33
31
740
795
916
894
1,021
783
853
976
953
1,097
1991
1992
1993
1994
1995
15
14
15
12
13
25
27
23
20
24
41
40
40
38
39
81
81
78
70
76
191
133
125
130
109
255
230
224
185
172
580
664
661
781
784
20
30
32
31
32
1,046
1,057
1,042
1,127
1,097
1,127
1,138
1,120
1,197
1,173
1996
1997
12
12
19
7
26
13
57
32
94
88
163
160
825
743
24
18
1,106
1,009
1,163
1,041
「本邦鉱業の趨勢」など通産省の統計データから各タイプ別の生産量を推定して作成した。もとの統計対象鉱種は「長石」・「アプライト」・「風化花崗岩」の三種である。第1図にグラフとして示した。

3.長石及び長石質資源の成因的分類
(1)長石と長石質資源
(2)長石及び長石質資源の成因的分類
4.長石資源
(1)ペグマタイト長石
(2)交代性長石
(3)選別長石
5.長石質資源
(1)アプライト
(2)変質花崗岩
(3)風化花崗岩(「さば」、「そうけい」、「まさ」)
6.その他の長石および長石質資源
(1)アルビタイト
(2)流紋岩・石英斑岩類
7.おわりに
日本の長石鉱床に関する基本的な文献