兼平・島崎(1977)による〔『現代鉱床学の基礎』(163p)から〕


第11章 正マグマ性鉱床

兼平慶一郎・島崎英彦

§1 はじめに
 マグマの固結の主要な時期に、マグマの分化によって特定の成分が濃集し、火成岩体の一部として形成されたと考えられる鉱床を正マグマ性鉱床という。鉱床をつくる成分がどのようにして濃集したかという点に着目すると、(1)けい酸塩溶融体から金属硫化物あるいは金属酸化物を主体とする溶融体が不混和液として分離したものと、(2)マグマの分別結晶作用によって特定の鉱物が晶出し、濃集したものとの2つのタイプに分けることができる。前者のタイプはサドベリー貫入岩体に伴うニッケル・銅硫化物鉱床で代表され、後者はブッシュフェルト貫入岩体中のクロマイトや磁鉄鉱の鉱床によって代表される。
 正マグマ性鉱床はその種類も多く、それらの成因に関連する問題も多岐にわたっている。この章では、まず正マグマ性鉱床の典型的な例として、サドベリーのニッケル・銅硫化物鉱床とブッシュフェルトのクロマイト鉱床・白金鉱床の産状をやや詳しく述べ、次にマグマ中への硫黄の溶解度およびけい酸塩溶融体と硫化物溶融体への金属元素の分配に関連する実験的な研究の最近の成果を紹介し、最後に種々の正マグマ性鉱床の成因について簡単に論じてみることにする。』

§2 サドベリーのニッケル・銅硫化物鉱床
2.1 サドベリー貫入岩体
2.2 ニッケル・銅硫化物鉱床
2.3 ニッケル・銅硫化物鉱床の成因
2.4 隕石衝突説
§3 ブッシュフェルト貫入岩体と金属鉱床
3.1 ブッシュフェルト複合火成岩体
3.2 クロマイト岩
3.3 白金鉱床
3.4 貫入岩体と鉱床の成因
§4 実験的研究
§5 正マグマ性鉱床の生成機構
主な参考書