添田(1978)による〔『日本の金銀鉱石 第二集』(1p)から〕


1 中国地方の金銀鉱床

添田 晶

1.まえがき
  中国地方の金銀鉱床には、今から650年前に発見され、大正の末期まで採掘された大森鉱山(島根県)や江戸時代の初期に砂金を採掘した阿川金山(山口県)のように開発の歴史の古い鉱山の鉱床もあり、また一方で戦後(昭和38年)発見開発された甲山鉱山の鉱床もある。このほかに中国地方には、約150〜200年前に銀山として栄えた鉱山も多い。またいわゆる雑鉱鉱床の鉱石には金銀を含有するものも多く、その中でも現在稼行中の都茂鉱山(高熱交代鉱床、島根県)では、粗鉱中にAu 1〜3g/t、Ag 15〜20g/t(丸山鉱床75mL)が含まれ、鉱石の副産物としてその価値を高めている。
 従来、中国地方の金銀鉱床および雑鉱鉱床の金銀については、個々の鉱床は各種の文献にのべられていることもあるが、総括的に記載されたものは極めて少なく、また鉱石中の金銀の起源、産状などについても不明の点が多い(添田晶、1970)。
 本文では、中国地方の金銀鉱床に関して、その全体像を明らかにし、同時にそれらの鉱石について筆者の観察をもとに一部は文献から得られた資料をあわせて記載する。しかし筆者の調査した鉱床、観察した鉱石あるいは調べた文献にもかたよりがあり、皮相的な見方になることを恐れる。』

2.金銀鉱床の分布
2.1 金銀を主目的として稼行されたもの
2.2 雑鉱鉱床に伴う金銀
2.3 マンガン鉱脈に伴う金銀
3.金銀鉱物の同定
4.金銀鉱床各論
4.1 新生代火山岩中の金銀鉱床

 a)大森鉱山
 b)石見鉱山露頭
 c)その他の黒鉱式鉱床および鉱脈鉱床の金銀
4.2 中生代火山岩類および同砕屑岩中の金銀鉱脈
 a)阿川鉱山
 b)三陽鉱山
 c)和気地区の金銀鉱脈
  c-1 日笠鉱山
  c-2 入里中鉱山
  c-3 和意谷鉱山
4.3 山陰−白川帯花崗岩類の内成および外成金銀鉱脈
 a)小鴨鉱山(倉吉鉱山)
 b)平床鉱山
 c)宇波鉱山
 d)御崎鉱山
 e)永輝鉱山
4.4 古生界中の金銀鉱脈
 a)甲山鉱山
 b)宇治金山
4.5 雑鉱型金銀鉱床
 4.5.1 高熱交代鉱床に伴う金銀
  a)都茂鉱山の金銀
  b)三原鉱山
 4.5.2 気成〜熱水鉱床に伴う金銀
 4.5.3 中熱水鉱床に伴う金銀
4.6 マンガン鉱脈に伴う金銀
4.7 層状硫化鉄鉱床に伴う金銀
5.粗鉱中の金銀品位と精鉱中の金銀品位
6.中国地方における含有金銀量
7.あとがき
文献