石原(1977)による〔『現代鉱床学の基礎』(203-204p)から〕


第14章 斑岩銅鉱床

石原舜三

§1 まえがき
 斑岩銅鉱床は火成鉱床の一種であって、鉱石の大量処理によって有用鉱床としての価値が生じたものである。したがってその発見・開発の歴史は新しく、1905年のビンガム鉱床の開発に始まる。斑岩銅鉱床は二次的な富化作用を受けやすく、開発初期のころは銅品位2%前後の二次富化帯が採掘された。採掘品位は鉱石処理量の増加と銅需要の増加により低下の方向へ向かい、現在では0.6%前後、初生的鉱石に若干の二次富化を伴うものが多く稼行されている。全鉱量は2〜3億トン規模のものが多い。斑岩銅鉱床は銅鉱床としては現在資源的に最も重要であり、この鉱床からの鉱石量は世界の全確認銅鉱石量の50%をこえる。
 斑岩銅鉱床は斑岩に関係する鉱染〜網状の銅鉱床であって、一般に次のように定義される性格をもつものである。
 1) 空間的に、比較的浅所貫入の中性−酸性貫入岩体と関連して産出
 2) 被貫入岩体中にも各種型式の鉱床を伴うが、基本的には貫入岩体それ自身のなかの鉱染〜網状鉱床
 3) 鉱物組合せとしてCu−Moを特徴とする。
 斑岩銅鉱床の定義は開発初期のころ、二次富化鉱床に対して鉱業的に定められた。そのために銅硫化物の産状のほか、その規模とくに平面的な広がりが重要視された。その後、二次富化帯下位の初生鉱床の開発、潜頭鉱床あるいは二次富化を受けにくい気候条件の地域における鉱床の発見などにより、初生鉱床の状態がくわしく判明した。その結果、初生斑岩銅鉱床は斑岩を中心として逆カップ状の形態を示す鉱染〜網状鉱床で、花崗岩質バソリスの最頂部あるいは火山岩のルートに当たる部分に、マグマから熱および熱水が供給され、これに地表からの地下水が混入し、これらが一体となって熱水循環機構が発達し、その過程で黄銅鉱を主とする銅硫化物が沈殿したものと考えられている。』

§2 分布と時代
§3 鉱床形成の場の地質
§4 鉱化作用と変質作用
§5 鉱床形成のモデル
§6 二次富化作用
§7 むすび
主な参考書