加瀬(1977)による〔『現代鉱床学の基礎』(239p)から〕


第17章 別子型銅鉱床

加瀬 克雄

§1 はじめに
 古期岩層あるいは変成岩層中に、母岩の層状構造にほぼ調和的に、層状またはレンズ状に胚胎される、いわゆる“層状含銅硫化鉄鉱鉱床”はヨーロッパのバリスカン・カレドニアなど、世界の造山帯に広く発達し、古くから世界の銅および硫化鉄鉱の重要な資源として注目されてきた。同時にこの種の鉱床の成因は、鉱床学の大きな問題の一つであり、いままで多くの研究・論争がなされてきた。
 わが国でも、三波川・三郡・阿武隈・日高などの各変成帯、秩父古生層、四万十層群中などに、この種の鉱床が存在する。とくに三波川帯中には、別子・佐々連・白滝・飯盛・久根など多くの鉱床が知られている。なかでも別子鉱床は世界有数の規模を有するので、わが国では、この種の鉱床は“別子型銅鉱床”[加藤武夫、1937]と呼ばれている。
 この章ではわが国の別子型鉱床の地質鉱床学的諸性質を明らかにする。なお三波川帯の層状含銅硫化鉄鉱鉱床は、鉱床の産状、鉱石の鉱物組成などに多くの類似性を有し、同一の生成史をもつものと考えられるので、“狭義の別子型鉱床”としては、三波川帯中のものに限るほうがよいと思われるが、ここでは加藤[1937]に従って、他の変成帯、中・古生層中の層状含銅硫化鉄鉱鉱床も別子型鉱床に含めることにする。』

§2 別子型鉱床の層序的位置
§3 鉱床の形態と構造
§4 別子型鉱床の生成時期
§5 鉱石の特徴
5.1 鉱石の初生的な組織・構造
5.2 鉱石の変成組織・構造
5.3 鉱石の構成鉱物
5.4 磁硫鉄鉱の産状と成因
5.5 鉱石の鉱物組成
5.6 鉱石鉱物の微量成分
§6 まとめ
主な参考書