EPTやEPRは、それぞれエネルギー源の性能を表す指標の一種です。それぞれ、下記のような意味を持ちます。
エネルギーペイバックタイム(Energy Payback Time, EPT): ライフサイクル中に投入されるのと同じだけのエネルギーを、発電によって節約できるまでに必要な稼働期間を表します。これが短いほど優秀です。
エネルギー収支比(Energy Payback Ratio, EPR): ライフサイクル中に投入されるエネルギーに対する、発電によって節約できるエネルギーの倍率を表します。これが大きいほど優秀です。
大まかには、下記のように表されます。
Ein : ライフサイクル中に必要になるエネルギー
eav : 単位期間中の発電量で節約できたエネルギー投入量
Eav : ライフサイクル中の発電量で節約できたエネルギー投入量
Tlifetime : 想定寿命(稼働期間)
EPT = Ein / eav
EPR = Eav / Ein = eav ・ Tlifetime / Ein = Tlifetime / EPT
エネルギー源としては、EPTが寿命(Tlifetime)より十分小さいこと、もしくはEPRが1より十分大きいことが求められます。再生可能エネルギーの多くは、この条件を満たします(こちらをご参照ください)。
太陽光発電の場合、ライフサイクル中の投入エネルギーには、下記のようなものが含まれます。
・設備の生産に用いる材料(シリコン・ガラス・金属・プラスチックなど)の原料採掘・精製・運搬
・設備の製造、設置
・保守用部品の製造・運搬
・使用後処理(解体・廃棄・リサイクルなど)
これらは全て、実際に使用される材料やエネルギーに基づいて計算されています。また使用後処理はアルミなどのリサイクルだけで逆にエネルギーを節約できるため、無視されることもあります。(太陽光発電のEPT/EPRについては、こちらをご参照下さい。)
一方、枯渇性エネルギー源(化石燃料による火力発電や原子力発電など)では多くの場合、運転(発電)用の燃料(原油・石炭・天然ガス・ウランなど)は除外して計算されます。枯渇性エネルギー源において運転用の燃料まで考慮した場合、EPTは定義不能(もしくは負の値)、EPRも1未満(もしくは負)となります(これは枯渇性エネルギー源が持続的でないことを表します)。
より詳細には、下記のように計算されます。
EPTを計算するにあたっては、エネルギーの入力と出力を、一次側(入力側)または二次側(出力側)に揃えて計算する必要があります。太陽光発電においては、EPTは下記のように定義されます。
EPT = Ein / Eav
ここで
Ein = Ein,elc ・ fin,elc + Ein,fossil
(投入した電力を得るのに必要なエネルギー+直接投入した燃料のエネルギー)
Eav = fav,elc ・ Eout - Eom (太陽光発電システムの発電によって回避された投入エネルギー−保守・運用エネルギー)
です。上記の記号はそれぞれ、
Ein,elc : 太陽光発電システムの初期電力投入量
Ein,fossil : 太陽光発電システムの初期化石燃料投入量
fin,elc : 投入電力の一次エネルギー換算係数
fav,elc : 太陽光発電システムの導入によって回避される消費電力の一次エネルギー換算係数
Eout : 太陽光発電システムの年間発電量
Eom : 年間運用・保守エネルギー量
を意味します。
この時、想定寿命をTlifetime で表しますと、
EPR = Tlifetime / EPT
の関係になります。ただしEPRが1未満の時、EPTは定義できません。
図1 各種エネルギー源のエネルギーペイバックタイム(EPT)の比較 図2各種エネルギー源のエネルギー収支比(EPR)の比較 (独)産業技術研究所の太陽光発電研究センターによる『再生可能エネルギー源の性能』から |
図1 太陽光発電のエネルギーペイバックタイム(EPT)の推移状況 図2太陽光発電のエネルギー収支比(EPR)の推移状況 (独)産業技術研究所の太陽光発電研究センターによる『太陽光発電のエネルギー収支』から |