『核燃料サイクルの黄昏
閉じないサイクル
まず、本書や本稿のタイトルにもなっている「核燃料サイクル」という言葉の話からしなくてはならない。原発に絡む核燃料や放射能の流れという意味で私自身も長年使ってきたが、実はこの言葉は、海外の仲間、研究者の間ではいたって評判が悪い。サイクルと言うからには輪が閉じていて、その中をものが循環するというイメージだが、核燃料サイクルは決して文字どおりのサイクルではない。
仮に再処理しをして、回収したプルトニウムをMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料にして再利用するとしても、循環されるのは流れの中のごく一部すぎない。回収ウラン(減損ウラン)は今日一般には、再利用されていない。ウランとしての品質も劣化するし、経済性の面からも再利用に値しないからだ。
百歩譲って、回収ウランの「リサイクル」を認めたとしても、使用済み燃料中の最もやっかいなゴミである死の灰の本体は、放射性廃棄物として残る。それだけでなく、ウラン採掘から、廃炉処分に至る全体の流れに従って、ぼう大な量の廃棄物が排出され、その多くは処分がやっかいな放射性廃棄物である。この状況を図1に示すが、この図を見れば、「核燃料サイクル」はフルに稼働したとしても、実は放射性廃棄物を作り出す仕掛けのようなものであって、とても「サイクル」ではないことがおわかりだろう。
↓ | ← | M | O | X | 燃 | 料 | ← | ← | ||||||||||
→ | → | → | 天 | 然 | ウ | ラ | ン | → | → | → | → | ↓ | ↑ | |||||
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縮 |
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処 理 |
O X 燃料加工 |
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↓ ウラン残土 |
↓ 鉱滓 |
↓ ウラン廃棄物 |
↓ 劣化ウ ラ ン |
↓ウラン廃棄物 |
↓ 発電所廃棄物 |
↓ 超ウラン廃棄物 |
↓ 高レベル廃棄物 |
↓ 減損ウラン |
超ウラン廃棄物 |
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※低濃度の気体・液体廃棄物は薄めて放出される。 |