原子力政策大綱  http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki.htm


原子力委員会による(2005年10月11日)
目次
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第1 章 原子力の研究、開発及び利用に関する取組における共通理念 ・・・3
 1−1.基本的目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
 1−2.現状認識 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
  1−2−1.安全確保を前提とした原子力の研究、開発及び利用に対する国民の信頼 ・・・5
  1−2−2.平和利用の担保 ・・・・・・・・・・・・・・・6
  1−2−3.放射性廃棄物の処理・処分 ・・・・・・・・・・7
  1−2−4.次世代の原子力の研究、開発及び利用を支える人材の確保 ・・・8
  1−2−5.原子力と国民・地域社会の共生 ・・・・・・・・8
  1−2−6.エネルギー安定供給と地球温暖化対策への貢献・10
  1−2−7.核燃料サイクルの確立 ・・・・・・・・・・・11
  1−2−8.電力自由化等の影響 ・・・・・・・・・・・・1 3
  1−2−9.放射線利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・1 3
  1−2−10.原子力研究開発 ・・・・・・・・・・・・・14
  1−2−11.国際的取組 ・・・・・・・・・・・・・・・1 5
 1−3.今後の取組における共通理念 ・・・・・・・・・・・・16
  1−3−1.安全の確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・1 6
  1−3−2.多面的・総合的な取組 ・・・・・・・・・・・1 6
  1−3−3.短・中・長期の各取組の同時並行的な推進 ・・1 7
  1−3−4.国際協調と協力の重視 ・・・・・・・・・・・17
  1−3−5.効果的で効率的な取組と国民との相互理解のために評価を重視 ・・・1 7
第2 章 原子力の研究、開発及び利用に関する基盤的活動の強化・・18
 2−1.安全の確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
  2−1−1.安全対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・18
  2−1−2.核物質防護対策 ・・・・・・・・・・・・・・22
 2−2.平和利用の担保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
 2−3.放射性廃棄物の処理・処分 ・・・・・・・・・・・・・23
  2−3−1.地層処分を行う放射性廃棄物 ・・・・・・・・24
  2−3−2.管理処分を行う放射性廃棄物 ・・・・・・・・26
  2−3−3.原子力施設の廃止措置等 ・・・・・・・・・・26
 2−4.人材の育成・確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・2 7
 2−5.原子力と国民・地域社会の共生 ・・・・・・・・・・・28
  2−5−1.透明性の確保 ・・・・・・・・・・・・・・・2 8
  2−5−2.広聴・広報の充実 ・・・・・・・・・・・・・29
  2−5−3.学習機会の整備・充実 ・・・・・・・・・・・2 9
  2−5−4.国民参加 ・・・・・・・・・・・・・・・・・3 0
  2−5−5.国と地方の関係 ・・・・・・・・・・・・・・30
  2−5−6.立地地域との共生 ・・・・・・・・・・・・・31
第3 章 原子力利用の着実な推進 ・・・・・・・・・・・・・・・32
 3−1.エネルギー利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
  3−1−1.基本的考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・3 2
  3−1−2.原子力発電 ・・・・・・・・・・・・・・・・3 2
  3−1−3.核燃料サイクル ・・・・・・・・・・・・・・34
 3−2.放射線利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
  3−2−1.基本的考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・39
  3−2−2.各分野における進め方 ・・・・・・・・・・・40
第4 章 原子力研究開発の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・41
 4−1.原子力研究開発の進め方 ・・・・・・・・・・・・・・41
  4−1−1.基礎的・基盤的な研究開発 ・・・・・・・・・42
  4−1−2.革新的な技術概念に基づく技術システムの実現可能性を探索する研究開発 ・・・43
  4−1−3.革新的な技術システムを実用化候補まで発展させる研究開発 ・・・43
  4−1−4.革新技術システムを実用化するための研究開発・・・4 5
  4−1−5.既に実用化された技術を改良・改善するための研究開発 ・・・46
 4−2.大型研究開発施設 ・・・・・・・・・・・・・・・・・46
 4−3.知識・情報基盤の整備 ・・・・・・・・・・・・・・・4 7
 4−4.日本原子力研究開発機構の発足と原子力研究開発 ・・・4 7
第5 章 国際的取組の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
 5−1.核不拡散体制の維持・強化 ・・・・・・・・・・・・・48
 5−2.国際協力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
  5−2−1.開発途上国との協力 ・・・・・・・・・・・・49
  5−2−2.先進国との協力 ・・・・・・・・・・・・・・49
  5−2−3.国際機関への参加・協力 ・・・・・・・・・・50
 5−3.原子力産業の国際展開 ・・・・・・・・・・・・・・・5 0
第6 章 原子力の研究、開発及び利用に関する活動の評価の充実 ・・・5 1

はじめに
 我が国における原子力の研究、開発及び利用は、原子力基本法に基づき、厳に平和の目的に限り、安全の確保を前提に、将来におけるエネルギー資
源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的としている。原子力委員会は、
この目的を達成するための国の施策が計画的に遂行されることに資することを目的として、1956年以来、概ね5年ごとに計9回にわたって原
子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(以下、「長期計画」という。)を策定してきた。現行の長期計画は2000年11月に策定されたもので
ある。

 原子力の研究、開発及び利用は、多大な投資を必要とする先端的な巨大技術に関わるものを含み、原子力以外の分野の科学技術研究や多様な一般
産業活動にも支えられて、国民の理解の上に展開されるものである。このため、原子力の研究、開発及び利用が上述の目的を達成するには、研究開
発、規制、誘導、財政的措置等により国が大きな役割を果たす必要がある。
 我が国の原子力行政は、2001年1月の中央省庁再編により内閣府に属することになった原子力委員会が、毎年、長期計画に基づいてこの目的
を達成するために必要な施策の基本的考え方を定め、関係行政機関がそれを踏まえて、それぞれの所掌する分野において必要な施策を企画・実施・
評価して推進されてきている。

 原子力委員会は、今後数十年にわたる我が国における原子力の研究、開発及び利用に関係する国内外の情勢を展望して、情勢変化が激しい時代を
迎えている我が国社会においては短期、中期、長期の取組を合理的に組み合わせて推進することが重要との認識に基づき、今後10年程度の期間を
一つの目安とした、新たな計画を策定することとした。このため、原子力委員会は、2004年6月に、新たな計画策定のために、原子力に関係の
深い有識者のみならず、学界、経済界、法曹界、立地地域、マスメディア、非政府組織等の各界の有識者を構成員とし、原子力委員も委員として参加
する新計画策定会議(以下、「策定会議」という。)を設置した。
 国においては、原子力政策と密接な関係を有するエネルギー政策や科学技術政策に関する基本方針を具体化したエネルギー基本計画や科学技術
基本計画が策定されている。また、内閣府に属することとなった原子力委員会には、原子力行政の実施を担う各省庁に対し、基本的な施策の方向を
示す役割が期待されていると考えられる。このような状況から、新たな計画は、原子力の研究、開発及び利用に関する施策の基本的考え方を明らか
にし、各省庁における施策の企画・推進のための指針を示すとともに、原子力行政に関わりの深い地方公共団体や事業者、さらには原子力政策を進
める上で相互理解が必要な国民各層に対する期待を示す、原子力政策大綱とした。
 審議は総合的視点に立った結論を導くことを重視して、基本的には策定会議で行った。また、その進め方は、重要課題ごとに現行の長期計画の評
価と国内外の情勢変化を踏まえつつ、今後の取組のあり方について議論を行い、その結果を「中間取りまとめ」や「論点の整理」として取りまとめ
た。審議においては、我が国における原子力の研究、開発及び利用が一連の事故・不祥事により国民の不安や不信を克服できていない現実を厳しく
見据え、国民の期待に応えるとはどういうことかをはじめとする原点からの議論を進めた。同一事項について様々な見解が存在する場合にはそれら
を踏まえつつ審議を行い、その結果を「論点の整理」等に反映することに努めた。なお、核燃料サイクル政策や国際問題に関する議論に限っては、
技術検討小委員会及び国際問題に関するワーキンググループを設けて、専門的な事項についての論点整理を行った。
 策定会議は、最後にこれらの「論点の整理」等を踏まえて新計画を起草する方針を「新計画の構成」と題する文書に取りまとめ、これに対する国
民の意見を公募して、3 9 3 名の方からの7 5 8 件の意見を得た。また、原子力政策大綱(案)については国民の意見を公募するとともに、5ヶ所
でご意見を聴く会を開催して、併せて701名の方から1717件の意見を得た。策定会議は、これらも踏まえつつ審議を重ね、原子力政策大綱(案)
を取りまとめた。
 33 回に及ぶ策定会議、技術検討小委員会( 計6 回開催)、国際問題に関するワーキンググループ( 計3 回開催)、策定会議に並行して開催した
長計についてご意見を聴く会(計21回開催)の審議は全て公開し、審議に供された資料及びその議事録はインターネットを通じて公開するなど、
透明性の高い審議に努めた。

 以下、第1章においては我が国における原子力の研究、開発及び利用が目指すべき基本目標を示した後に、その現状分析を行い、今後の取組にお
ける共通理念を示している。第2章から第6章においては、この共通理念を踏まえた主要課題領域における今後の取組の基本的考え方を示してい
る。また、巻末には、策定の基礎とした資料及び用語解説並びに審議の過程で作成した「論点の整理」等を添付している。

 原子力委員会は、今後の我が国の原子力の研究、開発及び利用が原子力政策大綱に示す、目指すべき基本目標、今後の取組における共通理念及び
基本的考え方を踏まえることを期待する。なお、その際、原子力関係者は、原子力施設には危険性が潜在することを片時も忘れず、また、原子力技術
の優れた潜在特性にとらわれてその優位性を過信することなく、優れた他者と性能を競い合い、切磋琢磨し、必要に応じ躊躇することなくそのあり
方を変革していくことにより、国民の負託や期待に将来にわたり応えていくことを原子力委員会は切望する。

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