加藤敏郎(1963):いわゆるベメント石について.鉱物学雑誌、6(1/2)、93-103.


1.まえがき
『ベメント石はneotocite(またはpenwithite)の結晶化物、tephroiteの変質物などとして産出する鉱物で、従来ジャモン石のMn置換体として考えられてきた。
 ところで原産地のアメリカNew Jersy州Franklin Furnace産のものと、其後欧米および本邦の数ケ所から産出したものの間には、前者は底面およびそれに直交する三方向に劈開があるのに対し、後者の大部分はいわゆる鰹節鉱の名前で示されるように主としてキヌウンモ様の微細劈開片の集合物状として産し、またX線粉末回折線においても底面反射以外の細部においてやや相違がみられるなど、polymorphの存在、もしくは異種の鉱物が同じベメント石の名前で呼ばれている可能性が残されてきた。
 筆者は、これらの点を追及するために、ベメント石および類似鉱物数試料について検討し、結局これまでベメント石と呼ばれていたものが、少なくとも二種の結晶構造未知の鉱物の両方もしくはどちらか一方からなるという結果を得た。
 以下はこれまでに得られた結果の概要である。』
2.試料
3.実験結果
4.考察
 1.“Franklin”型ベメント石
 2.“Chamosite”型ベメント石
5.命名の問題
『上記のようにこれまでベメント石と呼ばれてきた鉱物中に2種の鉱物が存在する以上、どちらか一方の鉱物は別の名前で呼ばれるべきである。
 この場合priorityをとるならば、原産地のFranklin産の底面およびそれに直交する三方向に劈開があり、ao=14.5Å、bo=17.5Å、co=7.28×4=29Åの鉱物(ここでは“Franklin”型と呼んできた。)をベメント石と呼び、“chamosite”型と呼んだ鉱物を別の名前(たとえば“caryopilite”)で呼ぶできであろう。
 しかし、いわゆるベメント石の大部分は、“chamosite”型であり、また一般にはベメント石はMn-ジャモン石であるとする考えが行なわれているから、この方をベメント石とし、むしろ“Franklin”型の鉱物を別の名前(たとえば発見者に因んでKonigite(oの頭に¨))で呼ぶことも可能であると考えられる。』
謝辞
文献
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