地学団体研究会(1996)による〔『新版地学辞典』(433p)から〕


鉱物命名法(method of mineral naming) 
 自然の物質のうち、無機質の固体で原則的に結晶質のものに対して種の認定を行い、鉱物名をつける。種は次の基準によって決定される。1)化学組成がほぞ一定、ないしある決まった範囲内にある。2)物理的性質がある決まった範囲内でのみ変化。3)原子配列が決まっていて、単位格子がある決まった範囲内でのみ変化。端成分が定義され、それを特徴づけるイオンが構造において無秩序の完全固溶体であるときは50%ルールが適用される。つまり2成分(A-B)の場合、種名Aは常にA>B。3成分(A-B-C)の場合、Aは常にA>B、A>C。4成分以上の場合も同じようになる。端成分がまったく知られていないときは無秩序の完全固溶体であるかどうか不明なので、安全を考えて60%を超えなければ新種として認定しない。不混和領域のあるものでは単純に50%ルールは適用されない。二つ以上の非晶質の「単位」が混じりあっている可能性を否定できないので、非晶質の鉱物はよほど化学組成が狭い範囲内にないと種として認定が困難である。例えば火山ガラスは化学組成範囲が広く、鉱物種の定義からはずれる。このため鉱物ではあるが鉱物名はつけず、「火山ガラス」と呼ぶ。鉱物名は原則的に英名(フランス、ドイツ、スペイン、北欧文字も認められている)である。和名は歴史的に漢字が使われてきたが、難解なものがあり適当でない。しかしすべて片仮名にすると鉱物名かどうかわからなくなる。現在最も妥当と考えられるのは、少なくとも語尾に石か鉱をつけることであろう。外来種は原則的には片仮名(特に人名、土地名)にして石か鉱をつける。鉱は慣習的にMg、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Mo、Ag、Cd、Sb、Pt、Au、Pb、Bi、Uなどの元素鉱物、不透明な酸化物、硫化物、炭酸塩などにつけ、それ以外は石をつける。しかし、あまり厳密な区別があるわけではない。グループ名としてなじみの深いもの(ざくろ石、電気石、輝石、沸石、角閃石族の○○閃石など)は、それらを語尾につけるとわかりやすい。また化学成分を和名で表現すると便利なことも多い。例えば、常用漢字との関係で難はあるが、苦ばんざくろ石(Mg3Al2Si3O12、「苦」(Mg)「礬」(Al))など。最近は英語をそのまま日本語読みにして用いることも多い(パイロープ、ペロブスカイトなど)。新鉱物は、国際鉱物学連合(略称IMA)の「新鉱物鉱物名委員会」(Commission on New Minerals and New Mineral Names)に鉱物名、理想化学組成式、結晶系(空間群も)、格子定数、提案者、産状、物理的性質、光学性、分析方法と分析値、X線粉末回折値、単結晶解析結果(可能なら)、鉱物名の由来(提案者の名前は不可)、タイプ標本の保管場所(原則的に研究者のいる公共の博物館)、既知鉱物との関連などのデータを提出し、各国委員による国際投票によって2/3以上の賛成が得られたとき認定される。新鉱物として認定されていない鉱物を新鉱物として学会誌に投稿しても受けつけない規則になっている。〔参〕E.H.Nickel et al.(1987), Min.J., Vol.15。』