森本ほか(1975)による〔『鉱物学』(379-380,390p)から〕


『化学組成を基礎にして結晶化学的な立場から鉱物を分類する方法は鉱物の化学組成と結晶構造の間の密接な関係を明らかに示す意味で、もっともわかり易く、現在もっとも広く用いられている。H.Strunz(1970)やDanaのSystem of Mineralogy(1944、1951、1962)に用いられている分類も、この分類法である。
 この方法では、鉱物を、主としてそれにに含まれる陰イオングループの性質によって大きな類(class)に分類する。この分類法によると、鉱物はつぎの類にわかれる(類(class)のことを、人によっては族とよぶこともあるが、本書では族をもっと狭い区分であるgroupに対応させた)。
 元素鉱物(native element)
 硫化鉱物(sulfides including selenides, tellurides etc.)
 酸化鉱物(oxides)、水酸化鉱物(hydroxides)
 ハロゲン化鉱物(halides)
 炭酸塩鉱物(carbonates)、硝酸塩鉱物(nitrates)、硫酸塩鉱物(sulfates)、タングステン酸塩鉱物(tungstates)、モリブデン酸塩鉱物(molybdates)、クロム酸塩鉱物(chromates)、セレン酸塩鉱物(selenates)、テルル酸塩鉱物(tellurates)
 りん酸塩鉱物(phosphates)、ひ酸塩鉱物(arsenates)
 バナジン酸塩鉱物(vanadates)、ほう酸塩鉱物(borates)
 けい酸塩鉱物(silicates)
〔略〕

表11.1 鉱物の分類

分  類
 

類(class)* 陰イオングループの性質による けい酸塩鉱物、硫化鉱物
亜類(subclass) 類の組成または構造による細分 テクトけい酸塩、中性硫化鉱物
族(group)* 化学的・構造的に関係の深い系列や種の集り 長石族、紅ひニッケル鉱族
系列(series) 単一の固溶体もしくは同形の化合物 斜長石、磁硫鉄鉱
種(species) 単一の鉱物 アルバイト、トロイライト
亜種(subspecies) 種の変化したもの ラブラドライト
変種(variety) アマゾン石
 * 人によってclassを族とよび、groupを群とすることもあるが、本書では上表のようにする。

〔略〕
 けい酸塩鉱物の構造をSiO4四面体の結合様式によって分類することは、Machatschki(1928)やBragg(1937)により提案された。その後、Bermann(1937)やStruntz(1941、1970)によって、すべてのけい酸塩鉱物に適用されるようになり、現在では一般に広く用いられている。
〔略〕

表11.2 けい酸塩鉱物の構造的分類

構造群

Si-O四面体の結合様式

ネソけい酸塩
(nesosilicatesまたはorthosilicates)
Si-O四面体は一つずつ分離していて、どの角をも共有しない かんらん石 (Mg,Fe)2SiO4
ざくろ石 (Mg,Fe,Mn,Ca)3(Al,Fe)2(SiO43
藍晶石 Al2SiO5
ソロけい酸塩
(sorosilicates)
二つのSi-O四面体が一つの角を共有してつながっている ローソナイト CaAl2Si2O7(OH)2・H2O
サイクロけい酸塩
(cyclosilicatesまたはring silicates)
Si-O四面体は二つの角を共有してつらなり、リングをつくっている。一つのリングをつくる四面体の数は、3個、6個、12個など コーディエライト (Mg,Fe)2Al3Si5AlO18
電気石 NaLi3Al6(OH)4(BO33Si6O18
イノけい酸塩
(inosilicatesまたはchain silicates)
Si-O四面体が二つの角を共有してつらなり、長い鎖をつくっている。または、その鎖が二つ連結して複鎖をつくっている 輝石 (Ca,Mg,Fe)SiO3
けい灰石 CaSiO3
角閃石
フィロけい酸塩
(phyllosilicatesまたはsheet silicates)
Si-O四面体は三つの角を共有して、平らな層状構造をつくっている 雲母
緑泥石 (Mg,Al)3(Si,Al)2O5(OH)4
テクトけい酸塩
(tectosilicatesまたはnetwork silicates)
Si-O四面体は四つの角をすべて共有し、3次元的につながりフレーム状構造をつくっている 石英 SiO2
長石 (K,Na,Ca)(Al,Si)4O8
注 ここでSi-O四面体とよんでいるものはSiの一部分がAlによって置換されている場合をも含む。