高野(1973)による〔『双晶の分類−双晶点群−』(9-10p)から〕


1-1 双晶現象
 TWINという述語の訳は、双生児・双晶・双子座などのほかに、植物などで対をなしたという意味がある。双生児とは一緒に生まれた子という意味で、性別はもちろん容貌もほとんど区別できない一卵性双生児と、そうでない二卵性双生児のあることはよく知られている。双生児はふつうにはそれぞれ独立の身体をもったものであるが、シャム双生児というと、腰部で二人の循環系が交叉してくっついつ生まれた人間ということになる。クリスティなどの探偵小説に出てくるので御存知の方も多いだろう。
 結晶においてTWINというときには人間の双生児とは大部趣を異にしているようである。強いて近いものをあげれば、シャム双生児がこれに該当するであろう。双晶とは、2つ以上の結晶がその結晶学的方向の一部を共通にして規則的に結合したものである。人間の場合と異なって一緒に生まれる結晶は無数の場合が多いので、これらを双晶と呼ばないのはもちろんである。また2つ以上の結晶が平行に並んで配列する場合は、個体が離れている場合は平行成長、個体の一部が結合している場合は平行連晶と呼ばれ、これらも双晶ではない。すなわちこれらにおいては、すべての結晶軸がその正負の符号を含めて平行に配置していることになる。結晶体におけるTWINは、共軸双晶に始まるともいえよう。共軸双晶では2つの結晶体の結晶軸は平行であるが、その正負の向きが反対のもので、方解石の双晶などに見られる。一般にいう双晶では、結晶軸または晶帯軸のうちの1つを共通にするか、結晶面を共通にするか、あるいはこれらの組合せによって記載される。そして双晶体は、これらの結晶軸または晶帯軸によって一方の個体を180゚回転させるか、共通の結晶面によって一方の個体を鏡映させることによって、他方の個体とともに一つの単結晶に復し得る。これらの軸または面を双晶体における対称の要素として、それぞれ双晶軸および双晶面と呼んでいる。そして双晶の記載には単結晶での場合と異なって、180゚の回転操作か、鏡映操作またはその組合せで説明できるとして、一般には3回・4回・6回などの回転操作は採用されないで今日に至った。』