福島第一原子力発電所事故後の放射線量調査の必要性について  http://www.scj.go.jp/ja/info/jishin/pdf/t-110404.pdf
  日本学術会議東日本大震災対策委員会による。2011年4月4日、2p。


東日本大震災に対応する第二次緊急提言

福島第一原子力発電所事故後の
放射線量調査の必要性について

平成23 年4月4日
日本学術会議東日本大震災対策委員会

 福島第一原子力発電所の事故により、発電所から30キロメートルに及ぶ広範囲にわたり、高い放射線量率が観測されている。測定結果によれば、比較的距離の近い場所でも地点間の測定値の開きは大きいため、避難地域での復興活動及び避難している人々の帰還時の安全性の保証には詳細な汚染分布が必須となる。必要な測定点の数は、核種分析に用いる試料採取点を1 キロメートル四方に1点とすると、約1,500点、汚染測定に用いる試料採取を数百メートル四方に1点とすると、約15,000点となるが、この規模の測定はこれまで行われていない。
 このためには、多数の測定者による大規模調査が必要であり、大学等の協力を得て早急に実施することが望まれる。
 測定すべき項目は、地表の表面汚染、空気中放射能濃度、地表の放射線量率、住民の被ばく線量等である。

資料:測定計画の1 例

 測定計画に含まれる項目としては、例えば、

1.地表の表面汚染検査
 原発周辺:30kmの範囲を1×1kmのメッシュで5−10cmの深さまでの土壌のサンプリングを行い、放射性元素の分布を測定する。サンプル採取時にサーベイメータによる放射線量率を測定する。
 また、これと並行して、土壌サンプルを数百メートル四方に1点程度採取し、GM検出器による測定で詳細分布を測定する。

 (この測定は、今後の農業活動にとって最も重要なデータとなる。また住民の生活環境の放射線強度の基礎データとなり、避難から戻ったとき
の安全確認の根拠となる。また、科学的な解析や将来のためのデータベース作りの基礎ともなる。)

2.空気中放射能濃度の測定
 地表の放射性元素分布の測定と同じ場所で、エアサンプラーによる試料採取を行い、空気中濃度の分布を測定する。

3.住民の被ばく線量
 現在既に行っている住民へのスクリーニングに加えて、特に避難者を中心に協力を依頼し、I-131 とCs-137 を甲状腺及び全身カウンターで計測する。事故時前後のその人の生活歴を同時に記録する。

などが挙げられる。
 放射線計測・調査は多くの専門家の動員と大規模なサンプリングが必要である。また、寿命の短いI-131 のような同位体もあり、早急に測定を開始することが望ましい。
 土壌への放射性物質の含有量は雨の影響を大きく受ける。そのため6月の梅雨までの間に最初の網羅した測定をしておくことがその後の測定の基準としても最重要なこととなる。
 サンプリング数は、一カ所で複数の土壌を採取する場合、5,000を越すサンプルとなる。また数百メートル四方で1 点の場合のサンプル採取点数は15,000点に上るので、大がかりで系統的な行動が必要とされる。 
 そのため、政府主導の下、各大学の協力を得て、上記のような計測調査を行う体制を早急に作ることが肝要である。


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