アーネスト・キャレンバッハ(2001)による〔『エコロジー事典−環境を読み解く−』(74-76p)から〕


食物網/食物連鎖 Food webs

 植物は種子を生産し、ネズミはその種子を食べる。そして、キツネはそのネズミを食べ、ワシはそのキツネを食べる。これは食物連鎖(food chain)の話である。しかし、物事はこれほど簡単ではない。実際の食う食われるの関係は、ほとんどの場合、際限なく入り組んだものになっている。
 植物は葉と茎と種子で成り立っている。チョウの幼虫やその他の草食動物は葉の部分を食べる。葉は地面に落ちると、昆虫や微生物(Microbes)によって分解され、これらの生物の排出物に含まれる栄養素は、新しい植物に取り入れられることになる。鳥類はチョウの幼虫を食べるし、ときには成長したチョウも食べる。タヌキは鳥の卵を食べる。ネズミは種子を食べ、その他の小さい哺乳類は植物の茎を食べる。ミミズやカブトムシ、その他の昆虫は、鳥やネズミの糞を食べ、「それら」の糞は微生物によって分解される。鳥の中にはカブトムシを食べるものもいる。キツネはネズミを食べ、コヨーテはネズミも食べるが、子ギツネを食べることもある。食べ残されたキツネやワシの死骸は、ウジムシ、カブトムシ、そして他の多くの小生物に食い尽くされる。こうして、かれらの栄養素はリサイクルされる。このように食物連鎖を説明することは、とても複雑で難しいのである。この地球は、相互に関係した莫大な数の食物連鎖から成り立っている。理解しやすいように分けて話をしているが、実際には、ひとつひとつの部分は連結して全体といるのである。
 すべての生物は、「何種類かの」他の生物によって食べられる。しかし、ひとつの生物が別の生物を食べたとしても、確保できるエネルギーはその獲物のものの約1割と、非常に少ない。だからこそ、何百万の種子、何千のネズミ、何百のキツネ、そしてわずかな数だけのワシが存在しているのである。しかし、食物連鎖の頂点に立つワシが死んだとき、たとえば、ワシが捕らえたサケをハイイログマに横取りされ、自らも捕らえられてしまったならば、そのワシの肉と骨さえも食い尽くされてしまうだろう。
 すべての食物連鎖は、地球上に存在する生産者生物、すなわち光合成(あるいは化学合成)をするバクテリア、そして藻類や緑色植物などの生産者である生物(producers)に依存する。そして消費者生物(consumers)とは、バクテリア(Bacteria)、原生生物(Protists)、動物、小数の肉食・食虫性の寄生植物など、生産者を食べる、もしくはお互いがお互いのエサとなる生物を含める。分解者(decomposers)とされる生物とは、主に死骸を摂取し、有機養分として生命プロセスに戻すバクテリアや菌類(Fungi)などである。これらの総重量を比較してみると、生産者のバイオマスが全体重量として一番重い。次に分解者、そして人間を含む消費者が三番目にくる。トラであろうが人間であろうが、大きくて目につく印象的な動物たちはすべて、莫大な数の植物や草の葉のおかげで、また微生物が、糞や死骸を循環してくれていることで生存できているのだということを忘れてはならない。
 第一次生産(Primary productivity)とは、生産者が光合成(Photosynthesis)によって太陽光エネルギーを吸収して成長し、すべての食物連鎖の基盤を供給することである。しかし第一次生産自体も、動物のように複雑な生物の残留物や排出物や、かつて生きていた植物が朽ちることによって土壌(Soil)中に蓄えられた栄養分を消費してくれる緑色植物やバクテリアに依存している。私たち人間でさえも、死後には莫大な数の微生物によって分解され、栄養素として大きな生命サイクルへと還元される。自然界では、すべ失われるてはことなく、循環されるのである。』