温室効果ガス排出量算定方法検討会(HP)による〔『森林の定義と京都議定書3条4活動の選択について』〕


森林の定義と京都議定書3条4活動の選択について


I. 割当量報告書の修正

1.森林の定義

(1) 我が国が設定した森林の定義
 京都議定書第1回締約国会議(COP/MOP1)における決議16/CMP.1 に基づき、我が国の森林の定義を以下の通りとする。
・ 最小面積 0.3 [ha]
・ 最小樹冠被覆率 30 [%]
・ 最低樹高 5 [m]
・ 最小の森林幅 20 [m]

(2) 定義の一貫性
 上記の森林定義は、最小面積、最小樹冠被覆率及び最小の森林幅について、我が国の既存の森林計画制度上の対象森林と一致する。最低樹高については既存の制度に定義されていないが、我が国の森林を構成する樹種や気候条件を勘案すると、森林計画対象森林において成林時の樹高が5 m を下回ることは極めて稀である。森林計画対象森林においては、都道府県等が計画樹立等のために調査を行い、森林簿として森林資源に関する情報を取りまとめている。このため、我が国においては、森林計画対象森林をもって京都議定書に基づく森林とみなし、報告の基礎データとして森林簿を用いることとする。
 なお、この定義は国連食糧農業機関(FAO)が2005 年に行った世界森林資源調査「FRA2005」における我が国の報告対象森林の定義(表 1)と一致している。
表 1 我が国がFAO の報告に用いている森林区分及び定義

区分

定義

森林
木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹、もしくは木竹の集団的な生育に供される、0.3 ヘクタール以上の土地。ただし、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く。
 

立木地
森林のうち、樹冠疎密度0.3 以上の林分(幼齢林を含む)。

無立木地
森林のうち、立木地と竹林以外の林分。

竹林
立木地以外の森林のうち、竹(笹類を除く)が生立する林分。

 我が国の森林資源現況調査においては、1995 年以前までは森林(立木地)のサブカテゴリとして、人工林と天然林に区分していたが、2002 年以降の調査においては、森林の育成(人為)の程度及び階層構造に着目し、更に育成林と天然生林のサブカテゴリを加えている。育成林には、伐採後主として植栽等によって更新を図る人工林のほか、植栽等によらず、地表かきおこし等の補助作業により更新を図る一部の天然林が含まれる。人工林、天然林と、育成林、天然生林の定義については以下に示す通りである。
表 2 我が国の人工林、天然林、育成林、天然生林の定義

更新方法による区分

管理方法による区分

人工林
植栽等により更新する森林

育成林
育成林とは、森林を構成する樹木の一定のまとまりを一度に全部伐採し、人為により単一の樹冠層を構成する森林として成立させ維持する施業(育成単層林施業)が行われている森林及び、森林を構成する林木を択伐等により部分的に伐採し、人為により複数の樹冠層を構成する森林(施業の過程で一時的に単層となる森林を含む。)として成立させ維持していく施業(育成複層林施業)が行われている森林。

天然林
人工林の定義に合致しない森林

天然生林
天然生林とは、主として天然力を活用することにより成立させ維持する施業(天然生林施業)が行われている森林。この施業には、国土の保全、自然環境の保全、種の保存のための禁伐等を含む。


2.議定書3条4活動の選択と定義の解釈方法

(1) 選択された京都議定書第3条4の活動
 我が国としては、京都議定書第3 条4 に規定する「吸収源による吸収量の変化に関連する追加的人為活動」(以下、「人為的吸収源活動」という)として、決議16/CMP.1 別添(ANNEX)パラ6 に規定する森林経営(Forest Management)と植生回復(Revegetation)を選択する。

(2) 選択された活動の定義の解釈方法
 @ 森林経営(FM)活動
 決議16/CMP.1 の別添(ANNEX)、パラ1(f) において『「森林経営」とは、森林に関連する生態学的機能(生物多様性を含む)や森林の経済的及び社会的な機能を持続可能な形で満たすことを目的とした森林の管理と利用のための施業システムである』と定義されている。我が国としては、決議16/CMP.1、パラ2 において締約国に対して使用が義務づけられているLULUCF-GPG を考慮しつつ、その定義を以下のとおり解釈することとする。
・ 育成林については、森林を適切な状態に保つために1990 年以降に行われる森林施業(更新(地拵え、地表かきおこし、植栽等)、保育(下刈り、除伐等)、間伐、主伐)
・ 天然生林については、法令等に基づく伐採・転用規制等の保護・保全措置
我が国の森林の定義及びマラケシュ合意上の森林経営活動の定義との整合性について
 森林経営活動は我が国の森林の定義に定める全森林からFM 率をもって、対象面積、吸収量を算出していることから、森林経営活動の対象森林は我が国の森林の定義と合致している。
 また、マラケシュ合意上の定義(生態学的・経済学的・社会学的機能を持続可能な形で満たすことを目的とした、森林の管理と利用のための施業システム)と森林経営活動の定義の整合については、持続可能なシステムであることを、育成林においては森林を適切な状態に保つための森林施業が行われているか、天然生林においては法令に基づく伐採・転用規制等の保護・保全措置がとられているかどうかで判断することを森林経営の定義に定めることで整合性を図っている。
 A 植生回復(RV)活動
 決議16/CMP.1 別添(ANNEX)パラ1(e)において『「植生回復(revegetation)」は、「新規植林」及び「再植林」の定義に該当しない、最小面積0.05ha 以上の植生を造成することを通じ、その場所の炭素蓄積(carbon stocks)を増加させる直接的人為的活動である』と定義されている。
 我が国としては、LULUCF-GPG を考慮しつつ、その定義を以下のとおり解釈することとする。
・ 1990 年以降に行われる開発地における公園緑地や公共緑地、又は行政により担保可能な民有緑地を新規に整備する活動。
 我が国では、下位区分として「都市公園」、「道路緑地」、「港湾緑地」、「下水道処理施設における外構緑地」、「緑化施設整備計画認定緑地」を対象に定義に合致する施設を抽出して報告する。このうち、都市公園以外の施設は、全て開発地に設置されているが、都市公園のみ、一部湿地に設置されているものも含まれる(河川区域を占有して設置されている場合あり)。
(3) 選択された京都議定書第3条4の活動間の階層構造について
 我が国では、森林経営活動は森林地、植生回復活動は開発地においてのみ発生する活動として解釈しているため、森林経営活動と植生回復活動の重複はない。

3.土地の特定方法
 LULUCF-GPG、4.24 頁、Section4.2.2.2 において、京都議定書3 条4 の活動を受けた土地を特定し、国際的に報告する方法として、活動を受けた複数の土地を含む領域を法的、行政的、生態学的境界を用いることによって表す「報告方法1」と、活動を受けた土地の地理的特定を空間的に明確かつ完全に行う「報告方法2」の2つの方法が示されている。どちらの報告方法を選択するかについては、LULUCF-GPG の第4 章、図4.2.4 に示されたデシジョンツリーに沿って選択することとされており、我が国の場合は「報告方法1」を選択することとする。即ち、全国土を都道府県界によって区分し、その境界内において京都議定書3 条4 に該当する活動が行われたと適切に推計される土地の面積を報告するものとする。

II. その他補足情報について

1.地理的境界を特定するために用いる地図情報及び地理的境界のID システム


 我が国は、「報告方法1」を選択し、都道府県毎に報告を行うこととしている。そこで、以下の日本地図に従って、都道府県別にID 番号を設定する。

(図、表 略)

2.京都議定書3条3に基づく土地ユニットの面積を決定するための空間評価単位

「1.(1) 我が国が設定した森林の定義」に示す森林の定義にしたがって、京都議定書第3 条3 に基づく土地ユニット(Unit of land)の空間評価単位を0.3 ha とする。


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