飯島(2000)による〔『環境問題の社会史』(2-3p)から〕


1環境という言葉
 環境という言葉は、この本の中では重要な位置を占めている。そこで最初にこの言葉について説明しておきたい。筆者は、環境社会学の視点から、環境という言葉を、つぎのような意味で使っている。
 「環境とは、すべての命ある存在が生きていくのに必要な外的な条件や影響の全体をあらわし、人間社会を主体として考えるならば、その社会的文化的環境と自然的化学的物理的環境を指し示す概念である。」
 ところで、第二次世界大戦前の日本では、アメリカよりもヨーロッパからの文化を取り入れることが多かったが、戦後はあらゆる面でアメリカとの関係が強化された。言葉も、西欧の言葉の中で戦後もっとも普及したのは英語であり、それもイギリス英語よりはアメリカ英語の方が圧倒的に多く入ってきている。その関係で、環境関連で入ってくる外国語も圧倒的にアメリカ英語が多い。輸入される専門書も、日本で発行される外国語の新聞も圧倒的に英語が多く、滞日している欧米人ではアメリカ人が多数を占める。したがって、環境という言葉の外国語への翻訳はenvironmentなのだとほとんどの人が思い込みそうなほど、英語のenvironmentが使われてきた。しかし、アメリカでは、環境に関連した言葉としては、エコシステム(生態系;ecosystem)やエコロジー(生態学;ecoloogy)の方が環境(environment)よりも、好まれる傾向があるのか、頻繁に使われている。一方、ヨーロッパでは環境(environment)という言葉が早くから造語され、使われてきている。』